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スマートスピーカーの所有・利用状況をさぐる(2020年公開版)

不破雷蔵「グラフ化してみる」「さぐる」ジャーナブロガー 検証・解説者
↑ 直接語りかけて機器の操作や調べものができるスマートスピーカー。利用状況は。(写真:アフロ)

音声認識機能と検索機能、他のデジタル系機器との連動性を融合させ、利用者が直接対話するかのように命令をすることで必要な操作を可能とするデジタル機器、スマートスピーカー。スキルと呼ばれるアプリの多様性で、今やスマートフォンと同じような拡張性・可能性を持つ機器として認知されている。今回は総務省が2020年9月に情報通信政策研究所の調査結果として公式サイトで発表した「令和元年度 情報通信メディアの利用時間と情報行動に関する調査」(※)の公開値を基に、スマートスピーカーの利用状況を確認する。

次に示すのはスマートスピーカーの所有および利用状況。自宅にある・無いを回答者に答えてもらい、ある場合には回答者自身が利用しているか、それとも利用していないか(置いてあるだけなのか、家族の別の人が使っているかは問わない)、無い場合には自宅に欲しいか、いらないかを答えてもらっている。単純にある無しの回答だけでなく、ある場合には利用状況を、無い場合には所有希望の有無まで尋ねることで、スマートスピーカーの需要実態を確認できる。なお今件選択肢は回答用紙には「スマートスピーカー(Google Home、Amazon Echoなど)」と記載されている。

↑ スマートスピーカー所有状況(自宅、属性別)(2019年)
↑ スマートスピーカー所有状況(自宅、属性別)(2019年)
↑ スマートスピーカー所有状況(自宅、「無い」、属性別)(2019年)
↑ スマートスピーカー所有状況(自宅、「無い」、属性別)(2019年)

全体の所有率は15.5%。しかし利用率は7.5%に過ぎない。対話式で命令を入力できることから利用そのもののハードルは低いはずなのだが、概念そのものは以前からあったものの実商品の登場はこの数年での出来事なので、具体的にどのように活用してよいのか分からない人が多いものと考えられる(家族の誰かが購入したが、自分は使っていない)。あるいは有効な使い道ができる、連動している機器が無いのかもしれない。

年齢階層別の所有率では20代がもっとも高く19.9%だが、利用率は10.0%に留まっている。10代もほぼ同じ値。そして30代以降は年に連れて所有率・利用率ともに下がっていく(50代がイレギュラー的な動きをしているが)。しかし60代でも13.8%が自宅にスマートスピーカーがあると回答しているのは、驚くべき結果かもしれない。

就業形態別では学生・生徒の値が抜きんでて高いのが特徴的。一方で無職の値が低いが、これは多分に高齢者と被っているからに他ならない。世帯年収別では意外にも所有率・利用率ともに200万円未満が高めで世帯年収が上がるに連れて落ち、600万円以上で再び増えていく。中間層であまり所有されていない・使われていないのには何か理由があるのだろうか。都市規模別では傾向だった動きは見出しにくい。

非所有者の動向だが、所有を希望する人は60代と無職でやや低い値が出ているものの、それ以外では大体1割台後半から2割台の値が出ている。特に学生・生徒と10代では2割台後半を示しており、大学生が大いに興味を示しているものと考えられる。

既存の技術の融合的な発想による道具に過ぎないが、スマートスピーカーは間違いなく多くの人にとって未来的な、憧れのアイテムとなりうる可能性を秘めている。廉価版も次々と登場していることから、メーカー側による使い方の提案や試行錯誤とともに、さらなる普及をしていくに違いない。

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※令和元年度 情報通信メディアの利用時間と情報行動に関する調査

2020年1月14日から1月19日にかけて、全国125地点をランダムロケーションクォータサンプリング(調査地点を無作為に抽出、地点ごとにサンプル数を割り当て、該当地域で調査対象者を抽出する方法)によって抽出し、訪問留置調査方式により、13~69歳の1500サンプルを対象としたもの。アンケート調査と日記式調査を同時並行で実施し、後者は平日2日・休日1日で行われている。よってグラフの表記上は「10代」だが、厳密には13~19歳を意味する。

調査のタイミングにより一部調査結果においてイレギュラー的な動きが確認できるが、これについて報告書では「調査時期の違いによる影響や単年の一時的な傾向である可能性も否定できず、継続的な傾向の把握については今後の調査などの結果も踏まえる必要がある」と但し書きをしている。

(注)本文中のグラフや図表は特記事項の無い限り、記述されている資料からの引用、または資料を基に筆者が作成したものです。

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(注)グラフの体裁を整える、数字の動きを見やすくするためにグラフの軸の端の値をゼロではないプラスの値にした場合、注意をうながすためにその値を丸などで囲む場合があります。

(注)グラフ中では体裁を整えるために項目などの表記(送り仮名など)を一部省略、変更している場合があります。また「~」を「-」と表現する場合があります。

(注)グラフ中の「ppt」とは%ポイントを意味します。

(注)「(大)震災」は特記や詳細表記の無い限り、東日本大震災を意味します。

(注)今記事は【ガベージニュース】に掲載した記事に一部加筆・変更をしたものです。

「グラフ化してみる」「さぐる」ジャーナブロガー 検証・解説者

ニュースサイト「ガベージニュース」管理人。3級ファイナンシャル・プランニング技能士(国家資格)。経済・社会情勢分野を中心に、官公庁発表情報をはじめ多彩な情報を多視点から俯瞰、グラフ化、さらには複数要件を組み合わせ・照らし合わせ、社会の鼓動を聴ける解説を行っています。過去の経歴を元に、軍事や歴史、携帯電話を中心としたデジタル系にも領域を広げることもあります。

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