Yahoo!ニュース

テレビやインターネット、新聞、ラジオ…主要メディアの利用時間をさぐる(2020年公開版)

不破雷蔵「グラフ化してみる」「さぐる」ジャーナブロガー 検証・解説者
↑ 今や高齢者もインターネットを使いこなす時代だが。(写真:アフロ)

年齢階層間で3倍以上も違うテレビの生放送視聴時間

普段からよく見聞きしている「若者のテレビ離れ」「高齢者はインターネットが苦手」の実情はいかなるものか。総務省が2020年9月に情報通信政策研究所の調査結果として発表した「令和元年度 情報通信メディアの利用時間と情報行動に関する調査」(※)を基に、利用時間から確認する。

次に示すのは調査対象母集団および各年齢階層における、主要5メディア(テレビは視聴スタイル別だが)の1日あたりの平均利用時間。例えば10代のテレビ(生)は69.0分と出ているので、テレビを観ていない人も合わせ10代は平日にテレビを平均1時間9分ほど観ている計算になる。またインターネットは回線をつないでいる時間ではなく、実際に利用した時間。他方利用端末はパソコンに限らず、スマートフォンや従来型携帯電話、タブレット型端末、さらにはインターネット接続ができるテレビによる関連サービスの利用も含まれる。

なお「ながら行動」についてだが回答用紙の限りでは「連続して10分以上行った場合は該当」とのみ読み取れ、重複行動はそれぞれ行動したと記録する様式となっている。例えばテレビを観ながら新聞を読む時間帯があった場合、テレビと新聞それぞれに加算されることになる。

↑ 主要メディアの平均利用時間(平日、1日あたり、分)(2019年)
↑ 主要メディアの平均利用時間(平日、1日あたり、分)(2019年)

全体平均ではテレビのリアルタイム視聴が約161分、録画視聴が20分ほど、合わせて約3時間。インターネットが126分ほど、新聞やラジオはそれぞれ10分前後となる。メディア関連の調査の常の通り、年齢階層別で大きな差異が生じているのはグラフの形状を見れば一目瞭然。

「若者のテレビ離れ」のフレーズの通り、テレビ視聴時間は概して若年層ほど短く、高齢層になるほど長くなる。特に60代は長めで、1日平均260.3分。4時間強もテレビを観ている。一方インターネットは20代の利用時間が一番長く3時間近く。以後利用時間は減る傾向で、60代になると1時間強に留まってしまう。

新聞の購読者、ラジオの聴取者の減少はよく知られるところではあるが、10代では双方とも平日の1日平均で5分も消費されていない。20代も同じようなもので、50代でようやくラジオは10分を超える程度。60代で新聞もラジオも1日あたり20分以上の時間が費やされることになる。

興味深いのはテレビの録画放送の視聴時間。年齢階層別による差異があまり見られない。スマートテレビ、HDDプレイヤーの普及によりテレビ番組の録画再生が容易となり、年齢階層を超えて利用されている雰囲気ではある。

1年間の変動の中身

続いて前回調査、つまり2018年時点での状況を確認し、今回発表分となる2019年分との差を算出したのが次のグラフ。

↑ 主要メディアの平均利用時間(平日、1日あたり、前年比、分)(2019年)
↑ 主要メディアの平均利用時間(平日、1日あたり、前年比、分)(2019年)

数分ほどの変化はぶれ、誤差の範囲だと考えると、20~30代のインターネットの増加、50~60代のテレビ(生)の増加が主な動き。全体におけるインターネットとテレビ(生)の増加も、これらの年齢階層の増加が大きく影響していると考えられる。

2019年は前年比で増加を示したテレビ(生)だが、記録を取得可能な過去8年間の動きを確認すると、ところどころでイレギュラーな動きがあるものの、おおよそどの年齢階層でも減少の傾向に見える。直近年において全体で増加したのは、50~60代のイレギュラーな動きによるものだと推測できる。

↑ 主要メディアの平均利用時間(平日、1日あたり、テレビ(生)、分)
↑ 主要メディアの平均利用時間(平日、1日あたり、テレビ(生)、分)

もっとも減少度合いに関しては、若年層は急激、中年層以降は緩やかと読めるのもまた事実ではある。

2019年の時点では10~30代でインターネットの利用時間がテレビ(生)を抜いている。つまり「30代以下においてはテレビ<インターネットの時代」である。多分にスマートフォンの普及によるところが大きく、この傾向は今後も続くものと考えられる(今件は各年齢階層の平均値であり、該当メディアを利用していない=利用時間ゼロの人も含んでいるため、普及率が高いほど平均値も底上げされる)。

スマートフォンの普及がさらに進めば、将来は40代以降においてもテレビの利用時間をインターネットが抜くようになるかもしれない。

■関連記事:

【テレビは一日約2時間…小学生のメディアとの関係をグラフ化してみる】

【いつごろ観ているのか、小中高校生のテレビ視聴事情】

※令和元年度 情報通信メディアの利用時間と情報行動に関する調査

2020年1月14日から1月19日にかけて、全国125地点をランダムロケーションクォータサンプリング(調査地点を無作為に抽出、地点ごとにサンプル数を割り当て、該当地域で調査対象者を抽出する方法)によって抽出し、訪問留置調査方式により、13~69歳の1500サンプルを対象としたもの。アンケート調査と日記式調査を同時並行で実施し、後者は平日2日・休日1日で行われている。よってグラフの表記上は「10代」だが、厳密には13~19歳を意味する。

調査のタイミングにより一部調査結果においてイレギュラー的な動きが確認できるが、これについて報告書では「調査時期の違いによる影響や単年の一時的な傾向である可能性も否定できず、継続的な傾向の把握については今後の調査などの結果も踏まえる必要がある」と但し書きをしている。

(注)本文中のグラフや図表は特記事項の無い限り、記述されている資料からの引用、または資料を基に筆者が作成したものです。

(注)本文中の写真は特記事項の無い限り、本文で記述されている資料を基に筆者が作成の上で撮影したもの、あるいは筆者が取材で撮影したものです。

(注)記事題名、本文、グラフ中などで使われている数字は、その場において最適と思われる表示となるよう、小数点以下任意の桁を四捨五入した上で表記している場合があります。そのため、表示上の数字の合計値が完全には一致しないことがあります。

(注)グラフの体裁を整える、数字の動きを見やすくするためにグラフの軸の端の値をゼロではないプラスの値にした場合、注意をうながすためにその値を丸などで囲む場合があります。

(注)グラフ中では体裁を整えるために項目などの表記(送り仮名など)を一部省略、変更している場合があります。また「~」を「-」と表現する場合があります。

(注)グラフ中の「ppt」とは%ポイントを意味します。

(注)「(大)震災」は特記や詳細表記の無い限り、東日本大震災を意味します。

(注)今記事は【ガベージニュース】に掲載した記事に一部加筆・変更をしたものです。

「グラフ化してみる」「さぐる」ジャーナブロガー 検証・解説者

ニュースサイト「ガベージニュース」管理人。3級ファイナンシャル・プランニング技能士(国家資格)。経済・社会情勢分野を中心に、官公庁発表情報をはじめ多彩な情報を多視点から俯瞰、グラフ化、さらには複数要件を組み合わせ・照らし合わせ、社会の鼓動を聴ける解説を行っています。過去の経歴を元に、軍事や歴史、携帯電話を中心としたデジタル系にも領域を広げることもあります。

不破雷蔵の最近の記事