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死亡率や出生率の移り変わりの実情をさぐる(2020年公開版)

不破雷蔵「グラフ化してみる」「さぐる」ジャーナブロガー 検証・解説者
↑ 子供の出生率は日本ではどのような変化を示しているのか。(写真:GYRO PHOTOGRAPHY/アフロイメージマート)

スペイン風邪の恐ろしさが改めて分かる死亡数・死亡率

経済のよさや公衆衛生、医療技術の進歩を推し量る物差しの一つとなるのが、子供の出生率や社会全体の死亡率。日本での100年以上にわたる実情を、厚生労働省が定期的に調査・結果の発表を行っている人口動態統計の公開値を基に確認する。

「出生数」「死亡数」はそれぞれその年に生まれた・亡くなった人の数を表す。死因・年齢は特定しない。また比率は「%」表記がなければ、基本的に人口1000人比となる。

最初のグラフは死亡数・死亡率の推移。これを1899年以降継続して直近分となる2019年分(2020年9月発表)まで、そして戦後に限って再構築したもの、計2つを作成した。

↑ 死亡数・死亡率
↑ 死亡数・死亡率
↑ 死亡数・死亡率(戦後限定)
↑ 死亡数・死亡率(戦後限定)

1918年からしばらくの間流行したスペイン風邪が、体力の点で劣る新生児・乳児の命を多数奪った。さらにそれだけでなく、乳児より年上の幼児・子供、そして大人にも大きな刃(やいば)を振るっている。グラフ上でもこの時期に大きく値が増えたことが確認できる。

また新生児・乳児ほどではないものの、全体としても死亡率・死亡数は20世紀初頭まで高止まり。そしてその後は確実にリスク軽減を果たし、1960~1970年代の高度成長期を経て、一定水準の低さにまで到達。乳児・新生児と異なるのはここからで、1980年代以降はむしろ率・数ともにゆるやかな上昇傾向にある。

これは技術が退化した、あるいは環境が悪化したのではなく、全人口に占める高齢者比率が増加しているのが原因。高齢者の方が亡くなるリスクは大きいため、高齢層の比率が高まれば、当然全体の死亡率も上昇していく。

なお直近年となる2019年においては、死亡者数は138万1093人、対人口1000人比の死亡率は11.2となる。

減っていく出生率

一方、出生数・出生率はある程度の上下変動を経ながら、全般的には減少傾向にある。

↑ 出生数・出生率
↑ 出生数・出生率
↑ 出生数・出生率(戦後限定)
↑ 出生数・出生率(戦後限定)

戦前は概して高い出生率を見せていたが、新生児・乳児の死亡率も高く、また上記にあるように大人の死亡率も高かった。戦後に入ると出生数・率は急激な減少カーブを示すが、いわゆる「ベビーブーム期」にはやや上昇、そしてその過程で「ひのえうま」(丙午に生まれた女性は男性以上に強い性質を持つとの迷信から、子供が忌み嫌われるのを恐れ、親が出産をためらう動きがあった)によるイレギュラー的な減少も確認できる。

出生率の低下については諸般事情、説があるが、一般的にはいわゆる「先進国病」が大きな要因とされている。倫理観の成熟と社会制度の整備により、子供一人あたりの養育コストが積み増しされることで、世帯が養え得る子供の数が減り、それに伴い出産数も抑えられるとするものである。さらに結婚や世帯構成に対する価値観の変化も、小さからぬ原因とされている。そして死亡率、特に新生児・乳児の死亡率の低下もまた、出生率の低下の一因には違いない。

なお直近年となる2019年においては、出生数は86万5239人、対人口1000人比の出生率は7.0となる。

死亡率の緩慢な増加は、年齢階層別構成比の変化を考慮すれば、社会現象として認めざるをえない。一方、平均寿命が延びていることからも分かる通り、死亡リスクそのものは確実に減少を続けている。

今件データは先の新生児・乳児の死亡率や、年齢階層別構成比の変移、さらには婚姻率などと見合わせると、新たな発見を見出せ、日本の人口推移の大まかな把握に役立つに違いない。日本の近世の動向を知る上でも、確認しておくことをお勧めする。

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(注)グラフ中の「ppt」とは%ポイントを意味します。

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「グラフ化してみる」「さぐる」ジャーナブロガー 検証・解説者

ニュースサイト「ガベージニュース」管理人。3級ファイナンシャル・プランニング技能士(国家資格)。経済・社会情勢分野を中心に、官公庁発表情報をはじめ多彩な情報を多視点から俯瞰、グラフ化、さらには複数要件を組み合わせ・照らし合わせ、社会の鼓動を聴ける解説を行っています。過去の経歴を元に、軍事や歴史、携帯電話を中心としたデジタル系にも領域を広げることもあります。

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