教育機会を確保する支援策の一環として展開されている、奨学金事業。その推移を各種公開資料から確認する。

今回スポットライトを当てるのは、独立行政法人日本学生支援機構(2004年4月から各種財団法人・公的機関の業務を引き継いで誕生した、奨学金事業を行う機構)が実施する奨学金事業。教育の機会均等を確保する観点から、意欲と能力のある学生などが家庭の経済状況によって修学の機会が奪われることの無いように、学費の支えとなる資金を貸与している。同機構の奨学金には有利子(第二種)のものと無利子(第一種)のものがあり、さらに後者では奨学生本人が卒業後に一定の収入(年間300万円)を得るまでの間は返還を行わなくても済む「所得連動返済型の無利子奨学金制度」を2012年度から導入している(2017年度以降は「猶予年限特例」と呼称)。さらに2017年度からは奨学生(返還者)の課税総所得金額に応じて返還月額が決まる仕組み「所得連動返還方式」も導入している。

次に挙げるのは、その日本学生支援機構が展開している奨学金制度の貸与対象となる学生の人数と、同事業の費用推移(各年度当初予算ベース)。

↑ 奨学金の貸与人員(万人)
↑ 奨学金の貸与人員(万人)
↑ 奨学金事業費(億円)
↑ 奨学金事業費(億円)

この数十年間、物価上昇があまり無かったことを考えれば、事業費の増加は単純に奨学金の需要が増加していた、奨学金事業が拡大していたと見て問題はない。実際、貸与人員も同様に増加していた。

一方、審査基準のハードルが高いものの返済時の負担が小さい無利子奨学金制度を利用する(できる)人数には大きな変化は無く、基準がやや低いが返済時の負担が大きい有利子奨学金制度を利用する人は増加の一途をたどっていた。借りる方には条件がよい、見方を変えれば貸す側にはリスクが大きい無利子奨学金制度の枠が一定数に限られ、大きく拡大することは難しいものの、奨学金制度そのものの需要は増加する一方であったことがうかがえる。

また有利子奨学金でも利子は低率に違いないこと、選択肢次第だが最高の貸付金額は無利子奨学金の2倍近い(大学の学部次第ではさらに上乗せが可能)ことも、有利子奨学金制度を活用する事例が増えていた一因。あるいは無利子奨学金の金額では、就学補助には足りず、より高額を借り受けられる有利子奨学金を用いる事例もあっただろう。

一方この数年に限れば、具体的には2013年度を転換点とし、有利子奨学金は人員、金額ともに減少の動きを示し、無利子奨学金は増加を示している。この動きについては事業全体として「無利子奨学金の新規貸与者の増員」「経済困難を理由とする返還期限猶予制度の制限年数の延長」「延滞金賦課率の引下げ」「真に困窮している奨学金返還者に対する救済措置を充実」など、奨学金制度の改善充実を図る姿勢を示しており、その結果が数字となっているものと考えられる。直近の2019年度予算に限っても、白書によれば

2018年度から本格的に開始した給付型奨学金制度を着実かつ安定的に実施するとともに、2017年度予算において低所得世帯の成績基準の実質的な撤廃、貸与基準を満たす希望者全員への貸与を実現した無利子奨学金制度を、引き続き、着実に実施してきた。

と説明している。今後、有利子奨学金の規模縮小と無利子奨学金の規模拡大、給付型奨学金の対象者増員は継続していくであろうが、事業そのもの継続性を考慮すると、バランスの問題も無視できまい。

さらに2018年度からは特に経済的に厳しい(私立自宅外生、児童養護施設退所者など)大学・短期大学・高専・専門学校の学生・生徒を対象にした給付型奨学金の制度も開始されている。

また、国公立大学では全大学で授業料免除制度を整備しており、経済的理由などにより、授業料の納付が困難である人などを対象に、修学継続を可能にし、教育を受ける機会を確保しているとの説明もある。

ちなみに奨学金制度は日本学生支援機構によるものだけではない。官民ともに多様な奨学金制度がある。また貸与ではなく給与(返済義務無し)の奨学金も少なからず存在する。よって今グラフが奨学金制度のすべてを指し示すわけではないが、学生と奨学金に絡む現状を推し量ることはできよう。

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(注)グラフ中の「ppt」とは%ポイントを意味します。

(注)「(大)震災」は特記や詳細表記の無い限り、東日本大震災を意味します。

(注)今記事は【ガベージニュース】に掲載した記事に一部加筆・変更をしたものです。