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東京や大阪などの熱帯夜の日数をさぐる(2020年公開版)

不破雷蔵「グラフ化してみる」「さぐる」ジャーナブロガー 検証・解説者
↑ エアコンをつけないと暑苦しくて眠れない熱帯夜。その日数は。(写真:ペイレスイメージズ/アフロイメージマート)

「熱帯夜」を定義する

夏場の暑さについて「昔は夏の暑さなど我慢したもの。今も昔も暑さは変わりはない。今の人達は根性がない」との意見がある。気象庁の公開データを基に熱帯夜の数から、「昔も今も夏の暑さは変わらない」が本当か否か、その実態を検証する。

「暑い夜」をイメージする「熱帯夜」だが、気象庁の定義によれば(【天気予報等で用いる用語】)、「夜間の最低気温が25度以上のこと」「気象庁の統計種目にはない」とある。実のところ定義の「夜間」に関しては具体的な取り決めはなく、したがって気象庁でも公式な統計は取っていない。一般的には1日の間(午前ゼロ時から午後11時59分)の最低気温が25度以上の日を熱帯夜としており、その区分ならば気象庁で統計も取られている。よって今回は「午前ゼロ時から午後11時59分の最低気温が25度以上の日」を熱帯夜と定義する。

猛暑日をカウントする

それでは実際に、猛暑日の数を年次ベースで抽出し、その動向から温暖化が進んでいるのか否かを確認する。観測対象地点は東京と大阪、そして消防庁の熱中症による救急搬送者の公開データではよく上位に顔を見せる兵庫を対象とする。なお直近年分は2019年分となっている(2020年は現在進行形で年ベースでは中途半端な値しか算出できない)。

↑ 東京・大阪・神戸の熱帯夜の日数(年ベース)
↑ 東京・大阪・神戸の熱帯夜の日数(年ベース)

真夏日や猛暑日同様、確実にその数を増やしているのが分かる。数年で数倍といった急激な増加ではないものの、確実に増えているのが分かる。一方で真夏日や猛暑日のように、選んだ地域の中では大阪が特に増え方が著しいということはなく(【増える真夏日・猛暑日、「昔も今も暑さ変わらず。騒ぐのは根性不足」は精神論(2020年版)】)、どの地域も似たような増加の仕方をしているように見える。あえていえば東京がやや穏やかな伸び方のように見えるかもしれない。

ちなみに直近となる2019年では、現時点で東京で28日、大阪で38日、神戸では46日が熱帯夜の日数となっている。

近似曲線で確認

先のグラフを見て「増えていない」と解釈する人はいないだろうが、念のために元のグラフに線形近似曲線(点線)を引き、熱帯夜の動向を示す折れ線を透過する形にして、線形近似曲線を目立たせる形にしたのが次の図。要は点線部分が横ばいなら、熱帯夜は増えていない、右肩上がりならば増えている、右肩下がりなら減っていることになる。

↑ 東京・大阪・神戸の熱帯夜の日数(線形近似曲線込み)(年ベース)
↑ 東京・大阪・神戸の熱帯夜の日数(線形近似曲線込み)(年ベース)

今回観測対象となった東京・大阪・神戸ではいずれも増加傾向にある。印象通り東京はやや穏やかな伸び方、大阪と神戸はほぼ同じだが、神戸の方が増え方が急なようだ。

もう少し検証対象地域を増やし、さらに人口の増加率と掛け合わせれば、温暖化現象の一因とされるヒートアイランド現象との相関関係性も一層確かなものとなりそうだが、よほどの観測地点でなければ熱帯夜の有意な値は期待できないので、今回は省略する。

ともあれ熱帯夜の観点で見ても、日本の夏は確実に暑くなっている。これは間違いない。

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「グラフ化してみる」「さぐる」ジャーナブロガー 検証・解説者

ニュースサイト「ガベージニュース」管理人。3級ファイナンシャル・プランニング技能士(国家資格)。経済・社会情勢分野を中心に、官公庁発表情報をはじめ多彩な情報を多視点から俯瞰、グラフ化、さらには複数要件を組み合わせ・照らし合わせ、社会の鼓動を聴ける解説を行っています。過去の経歴を元に、軍事や歴史、携帯電話を中心としたデジタル系にも領域を広げることもあります。

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