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末子の年齢別に「仕事あり」の母親の割合をさぐる(2020年公開版)

不破雷蔵「グラフ化してみる」「さぐる」ジャーナブロガー 検証・解説者
↑ 子供がいる世帯での母親の就業。パートが多く、スーパーなどでよく見かける。(写真:GYRO PHOTOGRAPHY/アフロイメージマート)

子供が成長するに連れて就業している女性の比率も増加

昨今では夫だけでなく妻も就業する兼業世帯が多数を占めている。子供の年齢で妻の就業状況はいかなる違いを見せるのだろうか。厚生労働省の国民生活基礎調査(※)の結果を基に確認する。

夫婦世帯ではおおよそ世帯主(調査の際に世帯側から、年齢や所得にかかわらず「世帯の中心となって物事をとりはかる人」として申告された人)は男性=夫、そして女性=妻は配偶者となる。昨今では逆のパターンもあるが、比率的には「あまり」深く考慮しなくてよい。

世帯主のみの収入では経済的に不安を覚える世帯では、子供がいる場合でも妻がパートなどで家計を補助する必要が生じてくる。いわゆる「共働き」「兼業」状態になるわけだが、その実情を類推できるのが今回の「末子の年齢階層別に見た、仕事を持つ母親の割合」。

これは児童(18歳未満の未婚の人)である子供がいる世帯において、母親が仕事をしているか否かの比率を示したもの。例えば2019年の総数は7割強なので、「末子が児童の世帯のうち、7割強では母親が(も)働いている」ことになる。

↑ 仕事ありの母の割合(児童あり世帯比、「母の仕事の有り無し不詳」は含まず、末子の年齢階層別)
↑ 仕事ありの母の割合(児童あり世帯比、「母の仕事の有り無し不詳」は含まず、末子の年齢階層別)

グラフ上では反映されていないが今世紀初頭の2001年の値と比較すると、末子の年齢で多少の違いはあるものの、大体20%ポイント前後の増加が見られる。増加原因についてはさまざまな事柄が推測できるが、あえて主要なものを列挙するとすれば、まずは支出の増加と収入の減少、そして生活意識の向上によるものと考えられる。また核家族率が増加する(三世帯家族が減る)ことで、子供を持つ夫婦の生活が厳しさ(金銭面・育児面)を増しているのも一因。加えて、女性の社会進出に対する意識の変化が進み、女性が仕事をすることへの抵抗感が薄れたのも理由の一つだろう。さらには景況感の変化に伴い、共働きができる労働市場の上での供給増加も要因として挙げられる(共働きのパートをしたくとも、行動範囲内での求人が無ければ就業はできない)。

子供の年齢が上がるとともに母親の有職率も増加していく。末子が高校生にもなると(該当年齢の児童を持つ世帯のうち)8割強の母親が仕事を得て働いている計算になる。一方で0歳児でも5割近くの母親が働きに出ているが、これは父親、保育所や保育施設、そして祖父母が育児をサポート・手伝っていることになる。

「今世紀初頭からの『仕事ありの母親の割合』」の増加傾向を見ると、おおよそ末子の年齢が小さいほど伸び率・増加ポイント数が大きい。例えばゼロ歳児では108%の増加(108%ポイントではない)、15-17歳児では19%の増加となっている。元々の値が小さかったのも一因だが、同時に「子供が小さくても働きに出なければならない(経済上)」「出たい(女性の意識上)」「出ることが可能な環境が整った(保育所などの整備)」が、増加を後押ししたものと考えられる。

子供がいる「働く女性」における正規・非正規率

次に示すのは子供がいる世帯において、就労している主婦の正規社員・非正規社員率。これらのどれにも該当しない女性が、専業主婦となる。非正社員は概してパート・アルバイト。また出産前に正社員として勤めていた会社に、嘱託として勤務する場合もありうる。「その他」は会社・団体などの役員、自営業主、家族従業者、内職、その他、勤めか自営か不詳および勤め先での呼称不詳などが該当する。

↑ 仕事ありの母の割合(児童あり世帯比、「母の仕事の有り無し不詳」は含まず、末子の年齢階層別・就業形態別)(2019年)
↑ 仕事ありの母の割合(児童あり世帯比、「母の仕事の有り無し不詳」は含まず、末子の年齢階層別・就業形態別)(2019年)

子供が大きくなるに連れてかかる手間も少なくなり、正社員としてフルタイムで働ける条件も整ってくる…との想像をする人も少なくないが、現実には子供の年齢と正規社員率には関連性は見られない。子供が成長しても、正規社員率は(児童あり世帯比で)2割台でしかなく、非正社員率の上昇が主婦の就労率を押し上げていることになる。

子供がいる女性の正社員率が上がらないのは、手間がかかりにくくなっているとはいえ、子供に何かトラブルが生じた時の対応のしやすさ、時間拘束や距離感の問題がネックになっているのだろう。さらには就労が難しい正規社員としてよりは、就労しやすいパートなどの非正規社員として雇われることで、ともかく金銭的な家計の補完が最優先されると考えれば道理は通る。いわゆる「主婦の就労事情」が透けて見えてくる次第ではある。

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※国民生活基礎調査

全国の世帯および世帯主を対象とし、各調査票の内容に適した対象を層化無作為抽出方式で選び、2019年6月6日に世帯票・健康票・介護票、同年7月11日に所得票・貯蓄票を配ることで行われたもので、本人記述により後日調査員によって回収され、集計されている(一部は密封回収)。回収の上集計が可能なデータは世帯票・健康票が21万7179世帯分、所得票・貯蓄票が2万2288世帯分、介護票が6295人分。今調査は3年おきに大規模調査、それ以外は簡易調査が行われている。今回年(2019年分)は大規模調査に該当する年であり、世帯票・所得票以外に健康票・介護票・貯蓄票の調査も実施されている。

また1995年分は阪神・淡路大震災の影響で兵庫県の分、2011年分は東日本大震災の影響で岩手県・宮城県・福島県(被災三県)の分、2012年は福島県の分、2016年は熊本地震の影響で熊本県の分はデータが取得されておらず、当然各種結果にも反映されていない。

(注)本文中のグラフや図表は特記事項の無い限り、記述されている資料からの引用、または資料を基に筆者が作成したものです。

(注)本文中の写真は特記事項の無い限り、本文で記述されている資料を基に筆者が作成の上で撮影したもの、あるいは筆者が取材で撮影したものです。

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(注)グラフ中の「ppt」とは%ポイントを意味します。

(注)「(大)震災」は特記や詳細表記の無い限り、東日本大震災を意味します。

(注)今記事は【ガベージニュース】に掲載した記事に一部加筆・変更をしたものです。

「グラフ化してみる」「さぐる」ジャーナブロガー 検証・解説者

ニュースサイト「ガベージニュース」管理人。3級ファイナンシャル・プランニング技能士(国家資格)。経済・社会情勢分野を中心に、官公庁発表情報をはじめ多彩な情報を多視点から俯瞰、グラフ化、さらには複数要件を組み合わせ・照らし合わせ、社会の鼓動を聴ける解説を行っています。過去の経歴を元に、軍事や歴史、携帯電話を中心としたデジタル系にも領域を広げることもあります。

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