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個人ベースでは89.8%…インターネットの普及率の推移をさぐる(2020年公開版)

不破雷蔵「グラフ化してみる」「さぐる」ジャーナブロガー 検証・解説者
↑ 誰もが気軽にインターネットの時代。個人での普及率は。(写真:アフロ)

パソコンやスマートフォンをはじめとした携帯電話はもちろん、家庭用ゲーム機、さらには各種家電製品にまで実装されるようになったインターネットへのアクセス機能。多様な場面・部門でインターネットは活用されており、生活に欠かせないインフラ的な立ち位置を示している。それでは日本におけるインターネットの普及率はどれほどなのだろうか。複数の視点でこの「インターネット普及率」は確認できるが、今回は総務省が2020年5月に発表した「通信利用動向調査」(※)の報告書や公開値の内容を中心に、その実情を確認する。

最新版(2019年版)の「通信利用動向調査」によると、2019年9月末時点のインターネットの普及率(過去1年間にインターネットを一度でも利用したことがある人の率)は89.8%となっている。

この調査結果での「インターネット利用」の定義は「6歳以上」「過去1年間にパソコン・携帯電話(従来型携帯電話だけでなくスマートフォンやPHS含む)・家庭用ゲーム機・タブレット型端末などあらゆる端末でインターネットにアクセスした経験がある」となっている。つまりプライベート、仕事、学業上などの目的や、該当機種の所持の是非は範ちゅうに無い。例えばインターネットカフェからのアクセス、スマートフォンでの閲覧も「利用者」にあたる。

↑ インターネット利用者数および人口普及率(6歳以上の個人)
↑ インターネット利用者数および人口普及率(6歳以上の個人)

1997年末には人口普及率は9.2%でしかなかった。しかし20世紀末から21世紀にかけて急速に上昇し、2005年末には70%を突破する。以後、成長率は鈍化しているが、上昇は継続している。一方でここ数年は減少に転じていたが、これは多分に高齢者の総人口比が増えていることに起因するものと考えられる。

一方、2000年前後から現在に至るまで、学校など一部を除き、「パソコン」≒「インターネット」との図式が成り立っている。パソコン所有者はほぼ同数が、それを使ってインターネットを利用する次第。そのような状況から考えれば当然なのだが、今グラフはパソコン普及率と似たような動きを示している。

↑ パソコン普及率(内閣府消費動向調査・2人以上の世帯)(筆者作成)
↑ パソコン普及率(内閣府消費動向調査・2人以上の世帯)(筆者作成)

2005年以降普及率が鈍化しているのは、その時点までで導入・使用意向の高い世帯・個人の多くが環境を導入したことによるものと考えられる。残りの未導入の個人はインターネットを利用する意志が弱い人、あるいは利用しにくい環境にある人など。それら利用者対象外が利用をはじめるのは、容易なことでは無い。ハードルそのものは少しずつ低下しているものの、全員がスムーズにその障壁を越えることは難しい。あるいはハードルを越えることに意義を感じない人もいる。

ただし昨今では他の複数の記事、そして「通信利用動向調査」でもいくつかの項目から判明している通り、スマートフォンが気軽なインターネットへのアクセスツールとして普及浸透している関係で、若年層を中心に「パソコン離れ」的な現象が起きているのも事実。ここ数年ではパソコン普及率とインターネット人口普及率との間の連動性が薄れている気配がある。実際、直近年で前年比において人口普及率が大きな増加を示したのは、多分に6~12歳層と60代以上の増加によるところが大きい(グラフ化は略)。これらは主にスマートフォンの普及が貢献しているものと考えられる。

インターネット普及率を上げる方法の一つに挙げられるのが、スマートフォンも含めたモバイル端末の積極的な普及の促進。パソコン経由のインターネット接続に比べ、モバイル端末は手続きや事前準備、環境整備がきわめて単純化している。アクセス制限や表現能力など、パソコンと比べて限られている面もあるが、いつでも手持ちにできるなどの「携帯電話をはじめとしたモバイル端末ならではのメリット」も多い。今や若年層にとってはパソコンではなく携帯電話(実質的にはほとんどがスマートフォン)がインターネットへの主流窓口として存在している。

整備すべきインフラとしてインターネットの普及を目指すのであるとすれば、ブロードバンド環境の一層の整備充実とともに、(インターネットへの接続が可能な)モバイル端末、あるいはタブレット型端末の普及促進にも力を入れた方が好ましい。実際、海外、特に新興国では、モバイル端末の普及を中心にインターネット利用者・利用率が急増しているのだから。

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※通信利用動向調査

2019年分は2019年12月に、「世帯向けは都道府県および都市規模を層化基準とした層化二段無作為抽出法で選ばれた、20歳以上の世帯主がいる世帯・構成員に」「企業向けは公務を除く産業に属する常用雇用者規模100人以上の企業に」対して、郵送による調査票の配布および回収の形式によって行われている(一部オンラインでも実施されている)。有効回答数はそれぞれ1万5410世帯(3万9658人)、2122企業。各種値には国勢調査や全国企業の産業や規模の分布に従った、ウェイトバックが行われている。

(注)本文中のグラフや図表は特記事項の無い限り、記述されている資料からの引用、または資料を基に筆者が作成したものです。

(注)本文中の写真は特記事項の無い限り、本文で記述されている資料を基に筆者が作成の上で撮影したもの、あるいは筆者が取材で撮影したものです。

(注)記事題名、本文、グラフ中などで使われている数字は、その場において最適と思われる表示となるよう、小数点以下任意の桁を四捨五入した上で表記している場合があります。そのため、表示上の数字の合計値が完全には一致しないことがあります。

(注)グラフの体裁を整える、数字の動きを見やすくするためにグラフの軸の端の値をゼロではないプラスの値にした場合、注意をうながすためにその値を丸などで囲む場合があります。

(注)グラフ中では体裁を整えるために項目などの表記(送り仮名など)を一部省略、変更している場合があります。また「~」を「-」と表現する場合があります。

(注)グラフ中の「ppt」とは%ポイントを意味します。

(注)「(大)震災」は特記や詳細表記の無い限り、東日本大震災を意味します。

(注)今記事は【ガベージニュース】に掲載した記事に一部加筆・変更をしたものです。

「グラフ化してみる」「さぐる」ジャーナブロガー 検証・解説者

ニュースサイト「ガベージニュース」管理人。3級ファイナンシャル・プランニング技能士(国家資格)。経済・社会情勢分野を中心に、官公庁発表情報をはじめ多彩な情報を多視点から俯瞰、グラフ化、さらには複数要件を組み合わせ・照らし合わせ、社会の鼓動を聴ける解説を行っています。過去の経歴を元に、軍事や歴史、携帯電話を中心としたデジタル系にも領域を広げることもあります。

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