4マスはすべてマイナス・インターネットは18.6%のマイナス(博報堂売上動向:2020年5月分)

↑ 緊急事態宣言解除で人が戻る街並み。広告動向の動向に影響は。(写真:つのだよしお/アフロ)

4マスだけでなく全部門がマイナス

日本の広告代理店で売上高大手で知名度も高い博報堂DYHD。同社の月次売上で直近分となる2020年5月分が発表された。その内容を精査する。

まずは主要部門ごとの前年同月比を計算し、グラフ化する。

↑ 部門別売上高前年同月比(博報堂DYHD)(2020年5月)
↑ 部門別売上高前年同月比(博報堂DYHD)(2020年5月)

昔ながらの主力メディア、具体的には新聞・雑誌・ラジオ・テレビ(いわゆる4マス、4大従来型メディア)の動向を確認すると、今回月は紙媒体の新聞と雑誌では、双方ともマイナス。ラテと呼ばれる電波媒体は、双方ともマイナス。結果としてすべての部門がマイナスとなった。

インターネットメディアはマイナス18.6%。前年同月における前年同月比はプラス13.8%を示しており、その反動によるマイナスへの影響が少なからずあるとはいえ、大きな下げ幅となった。それでも全部門の中では一番下げ幅が小さいのは幸いか(2年前同月比を試算するとマイナス7.3%)。

一般広告はアウトドアメディアがマイナス43.4%、クリエイティブがマイナス27.8%、マーケティング・プロモーションがマイナス45.8%、「その他」はマイナス43.4%。押しなべてマイナスを示す形となった。ひとえに新型コロナウイルス流行による影響で企業活動が縮小し、広報宣伝活動への支出が減少した結果だと考えられる。

「その他」は大きな下げ幅だが、金額そのものは少額のため(約5.3億円)、総額に与えた影響は大きなものではない。むしろ項目別では最大の売上高となるテレビがマイナス34.7%と大きな下げ幅を示したのが、総額に大きく影響したようだ。

各年5月における売上総額の推移

次のグラフは博報堂DYHDの2006年以降における、今回月となる5月を基準にした毎年5月分の売上高総額をグラフにしたもの。年を隔てた上で同月における比較となるので、選挙やオリンピック、FIFAワールドカップのような、広告と深い関係を持ち、売上に大きく影響を与える事象が無い限り、季節による変動を気にせず中期的な動向を確認できる。

↑ 月次売上総額(博報堂DYHD、億円)(各年5月)
↑ 月次売上総額(博報堂DYHD、億円)(各年5月)

5月動向に限ると、金融危機からリーマンショックを受け景況感が落ち込み、さらに東日本大震災の影響もあり、2011年までは下落傾向にあったものの、その後はおおよそ順調な回復ぶりを見せていた。しかし2018年から失速感が生じ、そして2020年には急落、2011年の値すら下回る結果となってしまっている。いうまでもなくこの急落は、新型コロナウイルス流行の影響で生じた企業活動の縮小によるものと見て間違いないだろう。

次に各部門の具体的な売上高を確認できるグラフを作成し、その実情を確認する。それぞれの部門の具体的な市場規模や部門間の違いが、成長度合いではなく現状の売上の観点で把握できる。

↑ 部門別売上高(博報堂DYHD、億円)(2020年5月)
↑ 部門別売上高(博報堂DYHD、億円)(2020年5月)

インターネットは毎月目覚ましい成長率を示しているものの、売上金額=市場規模としては他の部門と比較すると、どんぐりの背比べレベルでしかない(4マスと比較するとテレビ以外との間では大いに競り勝っているが)。また、4大従来型メディアとインターネット以外の一般広告市場が大きな規模を示していること、テレビの広告市場がひときわ巨大であることなどが一目で分かる。テレビだけで全売上の4割台もの額面を示している。

今件解説記事の体裁だが、2017年12月分までと比べると随分とすっきりとした形となった。これは電通において2017年12月分を最後に、月次開示を取りやめることになったのが原因。売上規模は電通の方が博報堂DYHDよりも上のため、日本の広告業界の動向を推し量るのには、博報堂DYHDのみでは少々ぶれが大きいのだが、無いものは仕方があるまい。

各値に明確な形で出ているが、今回月は前回月以上に新型コロナウイルス流行に伴う企業活動の縮小の結果が大きく表れている。すべての部門で前年同月比1割以上の下げ幅との状況は、見たことが無い。しかも今後数か月は似たような数字が出ることだろう。

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※グラフなどにおける社名や部門の表現について

部門名は一般の呼ばれ方と異なるものもあるが、「インターネットメディア」とはインターネット広告、「一般広告」とは4マスとインターネット以外の、従来型の広告を意味する。

本文内部やグラフでは一部で「博報堂DYホールディングス」を「博報堂DYHD」と表記している。また同社は「博報堂」「大広」「読売広告社」と「博報堂DYメディアパートナーズ」を完全子会社として傘下に置く広告グループの持株会社で、今記事では公開されている「博報堂」「大広」「読売広告社」の広告代理店子会社3社の売上を合算して各種計算を行い、博報堂DYホールディングスの売上としている。また、記事中の表記も原則として「博報堂」は「博報堂DYホールディングス」を意味する。子会社の博報堂単体の動向ではないことに注意。

(注)本文中のグラフや図表は特記事項の無い限り、記述されている資料からの引用、または資料を基に筆者が作成したものです。

(注)本文中の写真は特記事項の無い限り、本文で記述されている資料を基に筆者が作成の上で撮影したもの、あるいは筆者が取材で撮影したものです。

(注)記事題名、本文、グラフ中などで使われている数字は、その場において最適と思われる表示となるよう、小数点以下任意の桁を四捨五入した上で表記している場合があります。そのため、表示上の数字の合計値が完全には一致しないことがあります。

(注)グラフの体裁を整える、数字の動きを見やすくするためにグラフの軸の端の値をゼロで無いプラスの値にした場合、注意をうながすためにその値を丸などで囲む場合があります。

(注)グラフ中では体裁を整えるために項目などの表記(送り仮名など)を一部省略、変更している場合があります。また「~」を「-」と表現する場合があります。

(注)グラフ中の「ppt」とは%ポイントを意味します。

(注)「(大)震災」は特記や詳細表記の無い限り、東日本大震災を意味します。

(注)今記事は【ガベージニュース】に掲載した記事に一部加筆・変更をしたものです。