直接税と社会保険料の世帯への負担の実情をさぐる(2020年公開版)

↑ 税金や社会保険料の負担はいつも頭を悩ませる存在。(写真:GYRO PHOTOGRAPHY/アフロイメージマート)

世帯に入ってくるお金に対し、税金や社会保険料などの公租公課が大きな負担となり、可処分所得は減少していく。その実情を総務省統計局の家計調査の結果から確認する。

次に示すのは総世帯(単身世帯と二人以上世帯の合算。要は全部の世帯)のうち勤労者世帯(※)の実収入と、非消費支出、可処分所得を算出したもの。平均世帯人員は2.60人・世帯主平均年齢は47.8歳(2019年時点)。実収入は1年に得た各種収入(世帯主と配偶者収入)の合計を12で割った、つまり世帯単位での一か月の平均値。ボーナスなどは月単位で分散加算されている。宝くじや保険金、退職金などの特殊事情による収入は除外している。さらに実収入は非消費支出(税金や社会保険料)と可処分所得(自由に使えるお金)に分けられる。具体的な収入・支出の関係は次の通り。

・(実)収入……世帯主の収入(月収+ボーナス臨時収入)+配偶者収入など

・支出……消費支出(世帯を維持していくために必要な支出)

     +非消費支出(税金・社会保険料など)

     +黒字分(投資や貯金など)

       (※可処分所得=消費支出+黒字分)

↑ 実収入と非消費支出・可処分所得(総世帯のうち勤労者世帯、円)
↑ 実収入と非消費支出・可処分所得(総世帯のうち勤労者世帯、円)

データが取得できる最古の値となる2000年をピークに減り続けた実収入だが、2004~2005年を底値に上昇の兆しが見えていた。しかしリーマンショックの翌年に当たる2009年で大きく下落。以降は小刻みな上下を繰り返しながら、低迷を続けている。もっとも2011年を底値とし、おおよそ少しずつながらも回復の動きを示している(2016年には大きな下落があったが)。

これらの動向、実状がより分かりやすくなるのが次のグラフ。実収入に占める非消費支出、つまり税金(直接税)や社会保険料の割合の変化を示したものだが、実収入が減少を続けた2004~2005年までが横ばいだったのに対し、2006年から急激に割合を増やしているのが確認できる。2013年以降はほぼ横ばいの推移に移行したようだ。

↑ 実収入に占める非消費支出比率(総世帯のうち勤労者世帯)
↑ 実収入に占める非消費支出比率(総世帯のうち勤労者世帯)
↑ 実収入に占める税金・社会保険料比率(総世帯のうち勤労者世帯)
↑ 実収入に占める税金・社会保険料比率(総世帯のうち勤労者世帯)

累進課税や上限値などがあるため完全な比例関係にはないが、一般的に収入が増えればその分税金や社会保険料も増加する。額が増えても収入に占める割合そのものはそれなりに定率になるはずなのだが(極端な値を示す世帯は少数に過ぎない)、この数年においては「平均的なモデルの世帯では」公租公課の負担比率が増えている。2000~2005年までの安定期と比べると数%ポイントの増加。この上昇分が、「実収入が増えても使えるお金が増えない、生活が楽にならない」、さらには「実収入が減った以上に生活が厳しいように思える」のような事態を招く主要因となっている。特に2008年以降は実収入の減少もあり、直接税が占める比率は横ばいな一方で、それ以上に社会保険(額・)比率が増加の一途をたどり、結果として非消費支出が増えている。

金額面からも明らかだが、非消費支出の増加は実質的に社会保険料の増加によるところが分かる。世帯あたりの社会保険料の額、比率が中長期的に増加しているのは、他の多数の記事で言及している通り、ひとえに社会構造の高齢化に伴う医療をはじめとした社会保障負担の増加が主要因。医療技術の発達に伴うコストの増加もあるが、高齢化の影響に比べれば微々たるものである。

また2005年以降の公租公課の増加原因には定率減税の撤廃(2006年分以降から縮小、2007年分以降は廃止)も大きな要因ではある。定率減税の撤廃やリーマンショックのような大きな経済的イベントは、確実に各世帯のお金事情に影響を与えていることが改めて認識できる。また、2005年以降社会保険料が(実収入が減っても)増加する場合がほとんどで、結果として可処分所得が目に見える形で減少している点にも注目したい。ここ数年でようやく増加に転じたのが幸いではある。

今件は総世帯、つまり単身世帯と二人以上世帯のうち、勤労者世帯に限定した値の算出であることに留意が必要。単身世帯の増加は継続しており、当然「世帯単位による」平均の実収入は減少する。さらに勤労者世帯でも再就職などを果たした高齢層の再就職世帯(当然中年層までの勤労者よりは実入りが少ない。年金生活をはじめても勤労者世帯となる場合もあり、その時には切り崩す額が少なくなるだけで貯蓄を取り崩しての生活は変わらないため、実収入は小さなものとなる)も増加しているため、それらも総世帯としての平均値を下げる要素となる。その点には注意をされたい。

■関連記事:

自分の収入だけで生活している若者は44.0%…若年労働者における「生計状況」をグラフ化してみる

50年前の商品の価格は今と比べてどれぐらいの違いがあるのだろうか

※勤労者世帯

厳密には世帯主が会社、官公庁、学校、工場、商店などに勤めている世帯を指す。役員や個人経営者、農林漁業従事者、自由業者、そして無職(年金生活者など)などは該当しない。

(注)本文中のグラフや図表は特記事項の無い限り、記述されている資料からの引用、または資料を基に筆者が作成したものです。

(注)本文中の写真は特記事項の無い限り、本文で記述されている資料を基に筆者が作成の上で撮影したもの、あるいは筆者が取材で撮影したものです。

(注)記事題名、本文、グラフ中などで使われている数字は、その場において最適と思われる表示となるよう、小数点以下任意の桁を四捨五入した上で表記している場合があります。そのため、表示上の数字の合計値が完全には一致しないことがあります。

(注)グラフの体裁を整える、数字の動きを見やすくするためにグラフの軸の端の値をゼロで無いプラスの値にした場合、注意をうながすためにその値を丸などで囲む場合があります。

(注)グラフ中では体裁を整えるために項目などの表記(送り仮名など)を一部省略、変更している場合があります。

(注)グラフ中の「ppt」とは%ポイントを意味します。

(注)「(大)震災」は特記や詳細表記の無い限り、東日本大震災を意味します。

(注)今記事は【ガベージニュース】に掲載した記事に一部加筆・変更をしたものです。