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公立図書館の閉館時間は延びているのか否か(2020年公開版)

不破雷蔵「グラフ化してみる」「さぐる」ジャーナブロガー 検証・解説者
↑ 平日でも図書館を利用できるように夜まで開いていてほしいものだが。(写真:アフロ)

図書館への需要の高まりに連れ、利用希望者のライフスタイルに合わせる形で閉館時間を延長してほしいとの意見がある。特に就業者にとっては昼間のみの開館では来館が難しいため、夕方以降も開館しているとありがたい。その要望にどこまで図書館側は応えているのか。文部科学省の社会教育調査(※)の公開値を用い、閉館時間の推移から確認する。

次に示すのは前世紀末以降の調査結果における、公立図書館の閉館時間別の図書館数推移。もちろん開館時間もまた図書館別に異なるが、人口の多分を占める就業者には何時まで開館しているかが大きな問題となることから、いかに図書館が利用されやすい状況かを判断する指針の一つとして、閉館時間を抽出精査する。

↑ 公立図書館の閉館時間(館数)
↑ 公立図書館の閉館時間(館数)

公立図書館数の全体数も年度毎に変化を示しているが、それを差し引いても、17時台かそれより前に閉館してしまう図書館は漸減し、それより後に閉館する図書館が増えているのが分かる。「特に定めず」はイレギュラーな回答だろうが、21時以降の閉館する図書館も相当数に上っている。例えばグラフでは一つにまとめてしまった21時以降閉館部分の詳細データを見ると、直近の2017年度では、閉館が22時台の図書館数は23館となっている(23時以降はゼロ)。さらに直近年度では18時台ですら減少しており、ますます閉館時間が遅くなっているようすがうかがえる。

これを各年度における図書館数全体に占めるシェアを算出した結果が次のグラフ。こちらは閉館時間別館数が取得可能な1974年度以降につき、すべて算出している。明らかに閉館時間が夜遅くにシフトしている実態が確認できる。

↑ 公立図書館の閉館時間(対全館数比率)
↑ 公立図書館の閉館時間(対全館数比率)

18時より前に閉館してしまう図書館は、1974年度時点ではほぼ2/3だったが、2017年度では1/4足らずでしか無い。また19時以降に閉館する図書館は1974年度は2割足らずだったのが、2017年度では4割強を示している。それだけ図書館が夜遅くまで開館している、夜半の来館者にも対応する姿勢を示していることになる。就業を終えて帰りがけに図書館に立ち寄りたい人にはありがたい話に違いない。

図書館における環境改善の動向は、例えばコンピュータの導入度合いや蔵書数、受動喫煙防止のための対策実施状況、開館日数などの変化でも推し量ることができる。文化的な憩いの場としての図書館の立ち位置がより重要性を増しているとすれば、これほど喜ばしい話は無い。

それと共に、状況の維持、さらなる改善のため、より多くの関係者の地位確保と、リソース投入が望まれるところではある。

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※社会教育調査

文部科学省がほぼ3年おきに実施している、「社会教育行政に必要な社会教育に関する基本的事項を明らかにすることを目的とする」調査。原則的に全数調査によるもの。調査開始は1955年。

(注)本文中のグラフや図表は特記事項の無い限り、記述されている資料からの引用、または資料を基に筆者が作成したものです。

(注)本文中の写真は特記事項の無い限り、本文で記述されている資料を基に筆者が作成の上で撮影したもの、あるいは筆者が取材で撮影したものです。

(注)記事題名、本文、グラフ中などで使われている数字は、その場において最適と思われる表示となるよう、小数点以下任意の桁を四捨五入した上で表記している場合があります。そのため、表示上の数字の合計値が完全には一致しないことがあります。

(注)グラフの体裁を整える、数字の動きを見やすくするためにグラフの軸の端の値をゼロではないプラスの値にした場合、注意をうながすためにその値を丸などで囲む場合があります。

(注)グラフ中では体裁を整えるために項目などの表記(送り仮名など)を一部省略、変更している場合があります。また「~」を「-」と表現する場合があります。

(注)グラフ中の「ppt」とは%ポイントを意味します。

(注)「(大)震災」は特記や詳細表記の無い限り、東日本大震災を意味します。

(注)今記事は【ガベージニュース】に掲載した記事に一部加筆・変更をしたものです。

「グラフ化してみる」「さぐる」ジャーナブロガー 検証・解説者

ニュースサイト「ガベージニュース」管理人。3級ファイナンシャル・プランニング技能士(国家資格)。経済・社会情勢分野を中心に、官公庁発表情報をはじめ多彩な情報を多視点から俯瞰、グラフ化、さらには複数要件を組み合わせ・照らし合わせ、社会の鼓動を聴ける解説を行っています。過去の経歴を元に、軍事や歴史、携帯電話を中心としたデジタル系にも領域を広げることもあります。

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