Yahoo!ニュース

男性の15~24歳では3.9%…年齢階層別の完全失業率の現状と推移(2020年公開版)

不破雷蔵「グラフ化してみる」「さぐる」ジャーナブロガー 検証・解説者
↑ 完全失業率の内情は。労働力調査の結果から詳細を確認。(写真:ペイレスイメージズ/アフロイメージマート)

経済情勢や雇用市場動向を推し量る指標の一つである完全失業率は、年齢階層別ではどのような動向を示しているのか。その現状と推移を、労働力調査の結果を基に確認していく。

完全失業率とは労働力人口に占める完全失業者の割合。算出式は次の通りとなる。

「完全失業率」=「完全失業者」÷「労働力人口」

完全失業者には含まれない「仕事はしたいが求職活動はしなかった」人は算出考慮外となるため、失業の実情を反映していないとの意見もあるが、一方で「求職活動をしない人を失業状態と見なしてよいのか」との話もある。ともあれ、完全失業率はILOの国際基準にも従った、正当な値には違いない。

それではまず男性から、全体、そして年齢階層別の完全失業率を算出する。

↑ 完全失業率(男性)
↑ 完全失業率(男性)
↑ 完全失業率(男性、年齢階層別)
↑ 完全失業率(男性、年齢階層別)
↑ 完全失業率(男性、年齢階層別)(2019年)
↑ 完全失業率(男性、年齢階層別)(2019年)

完全失業率は漸増していくが、バブル景気時代には一時的に減少、その後バブルの崩壊とともに再び上昇に転じ、さらに上昇幅を拡大する。意外にもITバブル(日本では1999年から2000年)においても減少はせず、ITバブル崩壊時に最大値を示す。その後はジワリと下がり、直近の金融危機直前までは下落傾向を続けるも、2007年の金融危機ぼっ発とともに上昇に転じ、震災の前年2010年に直近ピーク(5.4%)をつけ、その後は漸減していく。

年齢階層別ではバブル期までは最若年層と定年退職直前期層(55~64歳)がほぼ同率で推移していた。前者は新規採用にあぶれるなどのパターン、後者は早期退職組(自主、会社都合)によるもの。ところがバブル期を経て両者の差は開き、最若年層の完全失業率は他年齢階層との差を大きなものとしていく。若年層の高失業率は先進国、特に労働市場が成熟した国でよく起きる現状だが、日本もまたそれに習う結果が出ている。直近では55~64歳の値がやや高めだが、これは再就職希望組が条件に見合う就職先を見つけられない事例が少なからずあるのが原因だろう。あるいは高望みとの解釈もできよう。

バブル期の減退、バブル崩壊後の上昇、ITバブルとその崩壊や、金融危機に伴う上昇などは全体値の動向とさほど変わらないものの、年齢階層によって振幅に違いが生じている。特に若年層は景気動向の影響を大きく受けやすいことが分かる。

続いて女性。

↑ 完全失業率(女性)
↑ 完全失業率(女性)
↑ 完全失業率(女性、年齢階層別)
↑ 完全失業率(女性、年齢階層別)
↑ 完全失業率(女性、年齢階層別)(2019年)
↑ 完全失業率(女性、年齢階層別)(2019年)

景気動向による上下感、ITバブル崩壊時に最大値をつけたことは男性とあまり変わりが無い。ただし女性は男性と比べて労働力人口そのものが少なく、特に高齢層でそれが顕著なこと、完全失業者も含め労働力調査の結果は万人単位での公開となるためぶれが出ることから、65歳以上のグラフがやや不自然な形となってしまっている(直近の2019年における15~24歳の大きな上昇も同様の理由)。また男性と比べると最若年層とそれより年上の層との差異が小さい。これは最若年層の完全失業率がややひかえめなのが原因。

男女とも景気動向に左右される部分があり、そして男女の雇用状況の違いも出ているが、前世紀ではおおよそ完全失業率は漸増し、今世紀に入ってからは高止まり、そして最近では下落傾向を見せ始めている。今後はいかなる動きを示していくのか。景気を推し量る値でもあるだけに、特に若年層の値の動向は、最近とみに語られるようになった年齢階層間の格差を示すことからも、大いに注目したいところではある。

■関連記事:

大学卒業後の就職先、「正社員で無くても就職できれば」を肯定する親は1割足らず

20代前半の失業率は3.6%…若年層の労働・就職状況をグラフ化してみる(最新)

(注)本文中のグラフや図表は特記事項の無い限り、記述されている資料からの引用、または資料を基に筆者が作成したものです。

(注)本文中の写真は特記事項の無い限り、本文で記述されている資料を基に筆者が作成の上で撮影したもの、あるいは筆者が取材で撮影したものです。

(注)記事題名、本文、グラフ中などで使われている数字は、その場において最適と思われる表示となるよう、小数点以下任意の桁を四捨五入した上で表記している場合があります。そのため、表示上の数字の合計値が完全には一致しないことがあります。

(注)グラフの体裁を整える、数字の動きを見やすくするためにグラフの軸の端の値をゼロで無いプラスの値にした場合、注意をうながすためにその値を丸などで囲む場合があります。

(注)グラフ中では体裁を整えるために項目などの表記(送り仮名など)を一部省略、変更している場合があります。

(注)グラフ中の「ppt」とは%ポイントを意味します。

(注)「(大)震災」は特記や詳細表記の無い限り、東日本大震災を意味します。

(注)今記事は【ガベージニュース】に掲載した記事に一部加筆・変更をしたものです。

「グラフ化してみる」「さぐる」ジャーナブロガー 検証・解説者

ニュースサイト「ガベージニュース」管理人。3級ファイナンシャル・プランニング技能士(国家資格)。経済・社会情勢分野を中心に、官公庁発表情報をはじめ多彩な情報を多視点から俯瞰、グラフ化、さらには複数要件を組み合わせ・照らし合わせ、社会の鼓動を聴ける解説を行っています。過去の経歴を元に、軍事や歴史、携帯電話を中心としたデジタル系にも領域を広げることもあります。

不破雷蔵の最近の記事