「お年寄りがいる家」のうち28.3%は「一人きり」の世帯(2020年公開版)
社会構造の高齢化とともに問題視されているのが、高齢者(今件では65歳以上と定義)がいる世帯、特に高齢者のみの単身世帯の動向。複数人数の世帯であれば高齢者自身に何かトラブルが生じてもすぐに対応できるが、単身世帯の場合はそれもかなわない。昨今ならば例えば熱中症の室内発生におけるリスクの大幅な増大をも意味する。今回は総務省統計局が2019年4月に発表した、2018年時点における住宅・土地統計調査の速報集計結果を基に、その高齢者世帯問題に焦点を当て、現状や近年の動向を確認する。
1戸の住宅に1世帯が住んでいる場合はその世帯を、複数の世帯が住んでいる場合はその複数世帯のうち居住住宅の持ち主や借り主の世帯である主な世帯を「主世帯」と呼んでいる(例えば祖父母の家に同居している子供世帯がいる二世帯世帯では、その祖父母世帯が主世帯となる)。その主世帯について、2018年においては65歳以上の高齢者がいる世帯は2253万4000世帯となり、過去最高を更新した。また、高齢者一人だけの「高齢単身世帯」は638万世帯となり、こちらも過去最高の値を示している。
高齢者のいない世帯の増加の度合いと比べ、高齢者がいる世帯の増加度合いの勢いが一目で分かる。この値について切り口を変え、「全世帯に占める高齢者のいる世帯の割合」と「高齢者のいる世帯に占める高齢単身世帯の割合」をそれぞれ算出の上、グラフにしたのが次の図。
直近となる2018年においては「全世帯では5世帯におよそ2世帯は高齢者がいる」「高齢者のいる世帯のうち10世帯に3世帯近くは高齢者の単身世帯」との計算になる。1983年当時はそれぞれ「4世帯に1世帯」「10世帯に1世帯ほど」だったのと比べると、いかに高齢化が進んでいることが再確認できる。
一方で高齢者がいる世帯は多いが、その世帯が多分に「子供夫婦が同居世帯として生活して、高齢者が一人きりではない」との想定もありうる。いわゆる二世代同居世帯なるものである。しかし「1世帯あたりの人数」と「(単独の世帯のみではなく)同居世帯がある世帯の割合」を見ると、そのような事例は例外的存在であり、検証の際には誤差のレベルでしかないことが分かる。
同居世帯がある世帯の割合が0.5%、つまり逆に考えれば99.5%が核家族化していることになる。また、核家族化は1960年後半から1970年代にかけて急速に進んだことも把握できる。今後増加することが確実な「高齢者の一人暮らし」について、さまざまな面からの対策が求められよう。
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