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大学授業料の国際比較をさぐる(2020年時点最新版)

不破雷蔵「グラフ化してみる」「さぐる」ジャーナブロガー 検証・解説者
↑ 大学での勉学。授業料は国の施政方針によりけりだが。(写真:ペイレスイメージズ/アフロイメージマート)

高等教育機関の大学は、国の文化や教養や科学の水準を維持し高めるため、そして優秀な人材を育成するのに欠かせない存在。日本ではその大学の授業料は国際的に見て高いのだろうか。OECDの公開値(※)で確認する。

まずは国公立大学。公開されている値は平均値だが、グラフ上で値が存在しないのはゼロ、つまり授業料が無料を意味する。データそのものが無い国はグラフには反映していない。

↑ 国公立大学の平均年間授業料の国際比較(フルタイムの4年生学部、OECD諸国、米ドル・PPPs)(2017~2018年)
↑ 国公立大学の平均年間授業料の国際比較(フルタイムの4年生学部、OECD諸国、米ドル・PPPs)(2017~2018年)

イギリス、アメリカ合衆国、チリ、エストニア、カナダ、日本、オーストラリア、韓国などでは国公立大学の授業料は高いと判断できる。日本は値が公開されている国に限れば上から6番目。

国毎の傾向を見ると、デンマークやフィンランド、ノルウェーなど、ヨーロッパ諸国、特に北欧諸国では授業料が無料の国が多いのが分かる。またドイツやフランス、オーストリア、スイスのような授業料が安い国も大体はヨーロッパ諸国。これらの国はおおよそ、いわゆる「大きな政府」に属しており、大学での勉学にかかる費用もまた、一般政府がサポートする姿勢を示していることが分かる。

私立大学ではどうだろうか。

↑ 私立大学の平均年間授業料の国際比較(フルタイムの4年生学部、OECD諸国、米ドル・PPPs)(2017~2018年)
↑ 私立大学の平均年間授業料の国際比較(フルタイムの4年生学部、OECD諸国、米ドル・PPPs)(2017~2018年)

アメリカ合衆国が群を抜いているが、おおよそ国の序列に変わりは無い。ヨーロッパ諸国、特に北欧諸国では低い値に留まり、それ以外の国では高い傾向にある。日本はアメリカ合衆国、オーストラリアに次いで高い値。

高等教育機関の制度は国によって大きな違いがあるため、一概に単純比較はやや難があるものの、日本の大学授業料は国際比較の観点でも高い水準にあることは間違いなさそうだ。

なお今件値に限れば、日本の私立大学の授業料は国公立大学の約1.68倍。文部科学省の学校基本調査の最新値(2019年度分)で確認すると、国立大学生60万6449人、公立は15万8176人、私立は215万4043人(学部学生、大学院学生、専攻科などを合わせた人数)。大学生の約74%を占める私立大学生は国公立大学生より高い授業料を支払っているのが実情ではある。

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※OECDの公開値

「Education at a Glance」で取得可能。各種大学の1年間における授業料がPPPs(購買力平価による米ドル換算方法、あるいは換算値。同じ商品がどの国でも同じ対価で取引されるとの過程で、各国の通貨を米ドルで換算したもの。OECDでは独自基準でこのPPPsの換算値を逐次更新しており、今回の値もそれを用いている)でどれぐらいになるのかを提示している。

公開対象国は限定されており、OECD諸国すべてでは無い。対象年は2017~2018年。フルタイムの4年生学部を対象としている。大学の種類の区分は次の通り。

・国公立大学…Public tertiary institution(公的高等教育機関)

公立教育機関または国の機関によって直接管理されている、あるいは国や公的な機関から任命された人員によって構成される評議会・委員会などで管理されている高等教育機関。

・私立大学…private tertiary institution(私的高等教育機関)。(1)と(2)で構成

  (1)Government-dependent private institutions(政府依存型私立高等教育機関)…運営中核資金の50%以上を政府機関から受け取っているか、教職員の給与が政府機関から支払われている。

  (2)Independent private institutions(独立型私立高等教育機関)…運営中核資金の政府機関からの受取額が50%未満で、教職員の給与が政府機関から支払われていない。

(注)本文中のグラフや図表は特記事項の無い限り、記述されている資料からの引用、または資料を基に筆者が作成したものです。

(注)本文中の写真は特記事項の無い限り、本文で記述されている資料を基に筆者が作成の上で撮影したもの、あるいは筆者が取材で撮影したものです。

(注)記事題名、本文、グラフ中などで使われている数字は、その場において最適と思われる表示となるよう、小数点以下任意の桁を四捨五入した上で表記している場合があります。そのため、表示上の数字の合計値が完全には一致しないことがあります。

(注)グラフの体裁を整える、数字の動きを見やすくするためにグラフの軸の端の値をゼロで無いプラスの値にした場合、注意をうながすためにその値を丸などで囲む場合があります。

(注)グラフ中では体裁を整えるために項目などの表記(送り仮名など)を一部省略、変更している場合があります。

(注)グラフ中の「ppt」とは%ポイントを意味します。

(注)「(大)震災」は特記や詳細表記の無い限り、東日本大震災を意味します。

(注)今記事は【ガベージニュース】に掲載した記事に一部加筆・変更をしたものです。

「グラフ化してみる」「さぐる」ジャーナブロガー 検証・解説者

ニュースサイト「ガベージニュース」管理人。3級ファイナンシャル・プランニング技能士(国家資格)。経済・社会情勢分野を中心に、官公庁発表情報をはじめ多彩な情報を多視点から俯瞰、グラフ化、さらには複数要件を組み合わせ・照らし合わせ、社会の鼓動を聴ける解説を行っています。過去の経歴を元に、軍事や歴史、携帯電話を中心としたデジタル系にも領域を広げることもあります。

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