新型コロナウイルスの影響大きく…2020年1月景気ウォッチャー調査の実情をさぐる

↑ 日本の景気はどうなのか、どうなるのか。街中の人の行き来から分かるかも。(写真:アフロ)

現状は上昇、先行きは下落

内閣府は2020年2月10日付で2020年1月時点における景気動向の調査「景気ウォッチャー調査」(※)の結果を発表した。その内容によれば現状判断DI(※)は前回月比で上昇、先行き判断DIは下落した。結果報告書によると基調判断は「このところ回復に弱い動きがみられる。先行きについては、新型コロナウイルス感染症の拡大等に対する懸念がみられる」と示された。2019年2月分までは「緩やかな回復基調が続いている」で始まる文言だったことから、景況感がネガティブさを見せる形が2019年3月分以降、11か月連続する形となっている。

2020年1月分の調査結果をまとめると次の通り。

・現状判断DIは前回月比プラス2.2ポイントの41.9。

 →原数値では「変わらない」が増加、「ややよくなっている」「やや悪くなっている」が減少。「よくなっている」「悪くなっている」が変わらず。原数値DIは40.6。

 →詳細項目は「雇用関連」のみが下落。「雇用関連」のマイナス1.0ポイントが最大の下げ幅。基準値の50.0を超えている詳細項目は皆無。

・先行き判断DIは前回月比でマイナス3.7ポイントの41.8。

 →原数値では「ややよくなる」「やや悪くなる」「悪くなる」が増加、「よくなる」「変わらない」が減少。原数値DIは42.9。

 →詳細項目はすべての項目が下落。「サービス関連」のマイナス5.6ポイントが最大の下げ幅。基準値の50.0を超えている項目は皆無。

昨今では現状判断DI・先行き判断DIともに低迷傾向と表現できよう。

↑ 景気の現状判断DI(全体)
↑ 景気の現状判断DI(全体)
↑ 景気の先行き判断DI(全体)
↑ 景気の先行き判断DI(全体)

現状判断DIは昨今では海外情勢や消費税率引き上げによる景況感の悪化を受け、基準値の50.0以下を示して低迷中。今回月は前回月に続き、2019年10月の消費税率引き上げに伴う景況感の悪化を受けて生じた大幅下落の反動のような動きを示している。

先行き判断DIも海外情勢や消費税率引き上げによる景況感の悪化を受け、昨今では急速に下落していたが、2019年10月以降は消費税率引き上げ後の景況感の悪化からの立ち直りが早期に生じるとの思惑を持つ人の多さから、前回月比でプラスを示していた。もっとも12月は前回月比でわずかながらもマイナスとなり、早くも失速。さらに今回月は新型コロナウイルス感染症の拡大による影響を懸念する形で、大きくマイナスを示す形になった。

DIの動きの中身

次に、現状・先行きそれぞれのDIについて、その状況を確認していく。まずは現状判断DI。

↑ 景気の現状判断DI(~2020年1月)(景気ウォッチャー調査報告書より抜粋)
↑ 景気の現状判断DI(~2020年1月)(景気ウォッチャー調査報告書より抜粋)

2019年11月以降は実際に消費税率が引き上げられた10月の大幅下落からの反動で上昇を示しているが勢いは弱く、いまだに消費税率引き上げ直前の値46.6までには戻っていない。なお今回月で基準値を超えている現状判断DIの詳細項目は皆無。

続いて先行き判断DI。

↑ 景気の先行き判断DI(~2020年1月)(景気ウォッチャー調査報告書より抜粋)
↑ 景気の先行き判断DI(~2020年1月)(景気ウォッチャー調査報告書より抜粋)

今回月で基準値を超えている先行き判断DIの詳細項目は皆無。「サービス関連」の5.6ポイントの下落、「製造業」の5.5ポイントの下落が目立つが、これは新型コロナウイルス感染症の拡大による影響への懸念が原因であると考えられる。

新型コロナウイルスで大打撃

報告書では現状・先行きそれぞれの景気判断を行うにあたって用いられた、その判断理由の詳細内容「景気判断理由の概況」も全国での統括的な内容、そして地域ごとに細分化した内容を公開している。その中から、世間一般で一番身近な項目となる「全国」に関して、現状と先行きの家計動向に関する事例を抽出し、その内容についてチェックを入れる。

■現状

・12月に続き、10月の消費税増税後の落ち込みからの回復傾向がみられる。国内の高額需要が順調で、来客数、単価ともに前年に対し微増の見通しである(百貨店)。

・消費税増税後3~4か月たったため、少し客が10%での買物に慣れ、なおかつキャッシュレス化が進み5%還元も功を奏し、カード支払の消費が伸びている。特に個人の売上が増加し、よい方に進んでいる(一般小売店[贈答品])。

・初売りイベントがあり、数か月前に比べよくなっている(乗用車販売業)。

・暖冬による影響で、季節商材の売行きが伸び悩んでいる。また、春節の時期に発生した新型コロナウイルスの影響で、インバウンド需要が減少している(家電量販店)。

■先行き

・東京オリンピックの影響で、テレビや録画機の販売実績が増えてくると見込んでいる(家電量販店)。

・消費税の引き上げで客が節約傾向にあるため、客単価や既存店売上の前年割れが続く(スーパー)。

・新型コロナウイルスの影響によるインバウンドの減少に加え、感染を警戒して国内旅行も減る傾向が出始めている。今後の風評被害が心配である(観光型旅館)。

・新型コロナウイルスの影響で、マスクや手指消毒薬などが品切れしており、棚から姿を消している。事態が収束するには2~3か月必要であり、その間の消費動向が鈍るとみている(一般小売店[医薬品])。

消費税率の引き上げの影響は薄れているところもあれば継続しているところもある。他方、暖冬による影響が現状で、新型コロナウイルスによる影響が現状・先行きともに生じているのが目に留まる。特に先行きの懸念材料の多くが新型コロナウイルスを起因とするもので、今回月の先行き判断DIにおける大幅な下げ方も納得できる。インバウンドの減少だけでなく、国内旅行も減る傾向が見えているとの話は注目に値する。

企業関連では景況感の悪化を裏付ける動きと、新型コロナウイルスの影響への不安の声が見受けられる。

■現状

・大型公共工事などの受注により上向きとなっている(建設業)。

・消費税引き上げ、米中貿易摩擦などの影響で特に自動車関連の受注量が減少しており、景気はやや悪い(パルプ・紙・紙加工品製造業)。

■先行き

・国内の受注に大きな変化はないが、海外向け、特に中国向けが不透明な状況である(一般機械器具製造業)。

・新型コロナウイルスの影響が不透明である。特に物流やメンテナンスなど工事関係への影響が懸念される(化学工業)。

消費税率の引き上げや米中貿易摩擦の影響、さらには新型コロナウイルスへの懸念が、景況感におけるネガティブな判断の材料となっているように見える。

雇用関連では人材需給に悪い変化が生じている気配が確認できる。

■現状

・エンジニア派遣事業では、製造業からのエンジニアの引き合いが減少傾向にあり、景気の悪化がうかがえる(人材派遣会社)。

■先行き

・最近の新型コロナウイルスの件で観光関連の仕事が減少し、求人数も減少傾向になると予測される(求人情報誌製作会社)。

雇用面でも新型コロナウイルスが足を引っ張っているようだ。

今件のコメントで消費税率引き上げに関するコメントを「消費税」のキーワードで確認すると、現状のコメントで198件(前回月303件)、先行きのコメントで124件(前回月251件)もの言及がある。不安や懸念といったネガティブな内容が多々見られるが、その一方で「影響が薄れ、徐々に回復してくる」「引き上げ後も売上はあまり変わっていない」などの意見も少なからず見受けられるようになった。もっとも一方で「今後徐々に影響が出てくる」との意見も複数確認できるのも事実ではある。いずれにせよ、どこぞで主張されている「消費税の増税で財政再建が進むので社会保障への安心感が強まり、消費が活性化される」などとの意見は見当たらない。なお「財政再建」は一件も言及されていない。

米中貿易摩擦に関しては先行きのコメントにおいて「米中」で22件が確認できる。ネガティブな内容がほとんどで、景況感の足を引っ張っていることは間違いない。特に製造業でマイナスの影響が顕著化しているのが目に留まる。今後、米中間の対立が受注量にさらなる影響をおよぼすことは十分に考えられる。

他方新型コロナウイルスに関しては現状で97件、先行きで345件。内容の性質上、ネガティブな話になるのは当然ではあるが、先行きでは特に悲観的な意見が多い。景況感のけん引役とされたオリンピックへの影響すら心配する声もある。

今回月で景況感の足を引っ張る形となった新型コロナウイルスだが、しばらくは状況の改善は期待できない。次回月以降も心理的に、そして具体的な形で景況感に悪い影響を与えることになるだろう。

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※景気ウォッチャー調査

※DI

内閣府が毎月発表している、毎月月末に調査が行われ、翌月に統計値や各種分析が発表される、日本全体および地域毎の景気動向を的確・迅速に把握するための調査。北海道、東北、北関東、南関東、甲信越、東海、北陸、近畿、中国、四国、九州、沖縄の12地域を対象とし、経済活動の動向を敏感に反映する傾向が強い業種などから2050人を選定し、調査の対象としている。分析と解説には主にDI(diffusion index・景気動向指数。3か月前との比較を用いて指数的に計算される。50%が「悪化」「回復」の境目・基準値で、例えば全員が「(3か月前と比べて)回復している」と答えれば100%、全員が「悪化」と答えれば0%となる。本文中に用いられている値は原則として、季節動向の修正が加えられた季節調整済みの値である)が用いられている。現場の声を反映しているため、市場心理・マインドが確認しやすい統計である。

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