賃貸か持家か…住居の実情をさぐる(2020年公開版)
年齢階層別の住居の実情
住む場所が無ければ生活の維持は困難だが、その場所は賃貸住宅、持家など多様に及ぶ。その実情を金融広報中央委員会の「知るぽると」が毎年実施している調査「家計の金融行動に関する世論調査」(※)の公開結果から確認する。
まずは単身世帯・二人以上世帯それぞれの、世帯主(単身世帯の場合は当然当人)における、最新分となる2019年調査分の住居の状況。「自己購入持家」「相続・贈与持家」が持家、「親・親族に居候」が非持家で賃貸以外、「民間賃貸」「公団公営賃貸」「官舎社宅」が賃貸、「間借その他」「無回答」がその他。グラフ上ではいくつかの選択肢の回答をまとめて一つの項目にしている。
青系統色が持家、赤系統色が賃貸その他。おおよそ単身・二人以上世帯ともに、年を取るほど持家率が高くなる。年上になるに連れてその親も高齢化し、遺産相続などによって住宅を譲り受ける機会が増えるのが一つ、蓄財や年収の増加などに連れて住宅を所有できる余裕ができるのがもう一つの理由。他方、二人以上世帯の方が持家率が高いのは、家族を持つことによる持家の必要性の高まり、共働きで金銭的な余裕ができやすいこと、さらに単身世帯よりも住宅を相続しやすいことが理由として挙げられる。
また単身世帯では20代において11.1%の人が官舎社宅、つまり勤め先が用意した住宅に借り住まいをしている。家賃の優遇などの措置が取られているのが主な理由だが、同年齢階層の二人以上世帯では10.4%に留まっている。結婚した世帯では社宅住まいは、比較的難しいところがあるのかもしれない。
単身世帯は60代の回答が上限だが、その年齢階層で比較すると、単身世帯では持家率は5割強に留まっているが、二人以上世帯では8割台の値を示している。高齢単身世帯に賃貸住宅住まいの人が多い実態は、他の調査でも指摘されているが、今件でもそれが裏付けられた形となる。健康面でのリスク問題をはじめ、多方面で気になる話に違いない。
経年による変化
今調査では連続した形で値を追えるのが2007年分以降であることから、2007年分以降の動向に関して確認をしたのが次のグラフ。
実のところ、傾向だった動きは見受けられない。特に二人以上世帯ではほぼ安定した動きを示している。ここ数年に限れば二人以上世帯では20~40代で漸増、単身世帯では40~60代で漸減のように見える流れがあるようにも見えなくもない。少なくとも2007年以降において、各年齢階層で持家率の動向に目立った動きが無いことは確かである。
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※家計の金融行動に関する世論調査
直近分となる2019年分は二人以上世帯においては、層化二段無作為抽出法で選ばれた、世帯主が20歳以上でかつ世帯員が2名以上の世帯に対し訪問と郵送の複合・選択式で、2019年6月14日から7月23日にかけて行われたもので、対象世帯数は8000世帯、有効回答率は40.3%。単身世帯においてはインターネットモニター調査で、世帯主が20歳以上70歳未満・単身で世帯を構成する人に対し、2019年6月21日から7月3日にかけて行われたもので、対象世帯数は2500世帯。過去の調査も同様の方式で行われている。
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(注)グラフ中の「ppt」とは%ポイントを意味します。
(注)「(大)震災」は特記や詳細表記の無い限り、東日本大震災を意味します。
(注)今記事は【ガベージニュース】に掲載した記事に一部加筆・変更をしたものです。