老後の支えとなる生活費の工面方法、単身世帯と二人以上世帯それぞれの実情をさぐる(2020年公開版)

↑ 老後の生活費の収入源、一番期待されているのは公的年金。(写真:GYRO PHOTOGRAPHY/アフロイメージマート)

老後の支えは公的年金、就業収入、私的年金の順

老後の生活費の収入源として人々はどのような手立てを考えているのだろうか。金融広報中央委員会の「知るぽると」が毎年実施している調査「家計の金融行動に関する世論調査」(※)の公開結果から確認する。

今件では老後の生活費をどのような収入源で補うかについて尋ねているが、単身・二人以上世帯双方ともトップは「公的年金」となっている。

↑ 老後の生活費収入源(3つまでの複数回答、世帯種類別)(2019年)
↑ 老後の生活費収入源(3つまでの複数回答、世帯種類別)(2019年)

二人以上世帯の方が「公的年金」への依存度が高いが、これは多分に受給額が大きい厚生年金を対象としているからだと考えられる。また夫婦二人分ともなれば、単純計算で世帯あたりの受給額が大きくなり、電気代や家賃などの固定費の節約も合わせ、やりくりもしやすくなるのも道理である。

第2位には「就業収入」がついているが、こちらは単身世帯の方が6.1%ポイント高い。配偶者の就業収入に頼ることもできず、「公的年金」の不足分は自らの手で稼ぐとの選択肢として考えれば納得はいく。一方第3位の「企業・個人年金、保険金」(私的年金)は老後を迎える前の備えを利用するものだが、やはり雇用事例や老後に至るまでの金銭的な余裕の比較で、二人以上世帯の方が高い値を示している。

「公的年金」がメインで、「就業収入」「企業・個人年金、保険金」が補完、余裕がある人は「金融資産の取り崩し」も併用。単身世帯では自らの手で稼ぐ傾向が強いなど、世帯構成によるお金関連事情の違いがすけて見えてくる。なお生活保護などが該当する「国・自治体からの公的援助」は単身世帯で11.4%が想定している。二人以上世帯でも5.2%。

経年変化を確認すると

さてこれらの動向を直近10年の推移でみると、いくつかの動きが確認できる。なお「国・自治体からの公的援助」は2014年から加わった項目なので、2013年以前の値は無い。項目の序列はそれぞれの世帯種類別で、直近年において高い順となっている。

↑ 老後の生活費収入源(単身世帯、3つまでの複数回答)
↑ 老後の生活費収入源(単身世帯、3つまでの複数回答)
↑ 老後の生活費収入源(二人以上世帯、3つまでの複数回答)
↑ 老後の生活費収入源(二人以上世帯、3つまでの複数回答)

2011年に発生した「金融資産取崩し」への回答者の急減は原因を特定できない。単身・二人以上双方の世帯で同じ動きが確認できるため、データ上の「ぶれ」とも考えられない。景気悪化、あるいは震災による被害の回復のために、老後に備えていた金融資産の漸次取り崩しを行い、将来まで維持できそうに無いとの考えが急速に広まった可能性もある。

ただし設問票を確認すると、2010年までは「金融資産の取り崩し」、2011年は「貯蓄の取り崩し」と表記が変わっているため、これが影響した可能性はある。もっとも2012年からは再び「金融資産の取り崩し」に戻っているため、2012年以降も減少したままであることの説明はできない。

ともあれ、老後の生活を支える収入源としては、「公的年金」に依存期待をしながらも、単身・二人以上世帯それぞれが各個の事情や思惑に従い、対策を練り実行していることがうかがえる。特に二人以上世帯で「就業収入」への傾注が継続して高まりを示す状況は、現時点でも大きな社会問題化している失業率・雇用市場との関係も深いことから、今後の動きを見据える必要がある。少なくとも現状では、高齢者の労働への参加意欲は、さらに高まりそうである。

また、2016年以降において単身世帯で「公的年金」「就業収入」が増加傾向にあるのは興味深い動きに違いない。これらの収入源へ期待できるとの思惑を持つ、そうせざるを得ないとの判断をした人が増えたということだろうか。

さらに、2014年以降の設問ではあるが、単身世帯で「国・自治体からの公的援助」を選択する人が単身世帯で1割前後、二人以上世帯でも5%前後と高水準を維持している点も問題に違いない。

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※家計の金融行動に関する世論調査

直近分となる2019年分は二人以上世帯においては、層化二段無作為抽出法で選ばれた、世帯主が20歳以上でかつ世帯員が2名以上の世帯に対し訪問と郵送の複合・選択式で、2019年6月14日から7月23日にかけて行われたもので、対象世帯数は8000世帯、有効回答率は40.3%。単身世帯においてはインターネットモニター調査で、世帯主が20歳以上70歳未満・単身で世帯を構成する人に対し、2019年6月21日から7月3日にかけて行われたもので、対象世帯数は2500世帯。過去の調査も同様の方式で行われている。

(注)本文中のグラフや図表は特記事項の無い限り、記述されている資料からの引用、または資料を基に筆者が作成したものです。

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(注)グラフ中の「ppt」とは%ポイントを意味します。

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(注)今記事は【ガベージニュース】に掲載した記事に一部加筆・変更をしたものです。