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家庭教師や学習塾の年間支払額をさぐる(2020年公開版)

不破雷蔵「グラフ化してみる」「さぐる」ジャーナブロガー 検証・解説者
↑ 家庭教師の指導で学んでいる人はどれぐらい?(写真:GYRO PHOTOGRAPHY/アフロイメージマート)

小学生では2割台が家庭教師を利用

独力では学校の授業に追いつくのが難しい場合や、受験をより確実にクリアするための、学力アップを目的とした学校外学習の代表的な手段が学習塾への通塾や、家庭教師の指導による自宅学習。それらはどれほどの割合で利用され、どれほどの費用が発生しているのだろうか。その実情を文部科学省が2019年12月に発表した「子供の学習費調査」の結果から確認する。

今件結果報告書では家庭教師と学習塾に関して、年間の支払額の分散値と「支払い者のみにおける」平均額が記されている。前者については「ゼロ円」項目もあり、特殊事例を除けば(親族などが無償奉仕の形で家庭教師を行う)この項目該当者が「利用していない」と考えて問題は無い。

まずは家庭教師について。

↑ 家庭教師支払いあり(利用者)率(学校種類別、公立・私立別)(2018年度)
↑ 家庭教師支払いあり(利用者)率(学校種類別、公立・私立別)(2018年度)
↑ 家庭教師平均支出額(年間、支払者のみの平均、学校種類別、公立・私立別、万円)(2018年度)
↑ 家庭教師平均支出額(年間、支払者のみの平均、学校種類別、公立・私立別、万円)(2018年度)

家庭教師利用率は私立・公立で大きな違いは無い。中学校で唯一公立(学校通学者)の方が利用率が高くなる。これは公立学校に通う子供は高等学校受験が大きなハードルとなるため、そのクリアを確実なものとするべく、打てる手は極力打っておくべしとする考えによるもの。

一方額面は私立の方が高く、特に小学校では2倍強もの差が出ている。私立小学校における11万5000円といえば、月額は約9600円。もっともこれは年間で押し並べて利用しているとの前提であり、例えば受験直前の半年間のみ家庭教師をお願いするケースも多分に考えられる。また回答動向の詳細を見ると、例えば私立高等学校では全体比で0.8%、支払い者内では5.1%の人が年間40万円以上(月額3万3000円以上)の支払いをしている。少数ではあるが、英才教育を施されている子供もいるようだ。

塾通いは私立小学校で約3/4

続いて学習塾について。

↑ 学習塾支払いあり(利用者)率(学校種類別、公立・私立別)(2018年度)
↑ 学習塾支払いあり(利用者)率(学校種類別、公立・私立別)(2018年度)
↑ 学習塾平均支出額(年間、支払者のみの平均、学校種類別、公立・私立別、万円)(2018年度)
↑ 学習塾平均支出額(年間、支払者のみの平均、学校種類別、公立・私立別、万円)(2018年度)

幼稚園はともかく、小学生以上においては学習塾の利用率は、家庭教師よりも高い。子供サイドもコミュニケーションの場としての利用もできること、気分転換になることなどから、家庭教師よりは塾を好む傾向があるのだろう(保護者が「●×ちゃんが通っているから私も塾に行きたい」とせがまれる事例も少なくあるまい)。また、講師の質がある程度事前に分かる(保護者側の)メリットもある。家庭教師では質による事前選別が難しい。

公立・私立別では利用率・平均支払額ともに、中学生のみ公立学校の方が上となる傾向がある。これもまた、家庭教師の項目で解説した通り、公立学校生においては高等学校受験が天王山的なところがあるため。高等学校では再び私立の方が上となっているが、これは大学受験への備えの際に、より多くの支出ができ得る環境だからと考えられる(元々学校の授業料などから成る「学校教育費」、そして子供の学習全体にかかる「学習費総額」とも、公立より私立の方がはるかに高い。それだけ支出可能な環境にある次第)。

ちなみに学習塾の高額分散に関してだが、たとえば高等学校の場合、公立では学習塾利用者の24.1%、私立では34.3%が、年間40万円以上(月額3万3000円以上)の支払いをしている。保護者にすれば、大きな負担額に違いない。

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「グラフ化してみる」「さぐる」ジャーナブロガー 検証・解説者

ニュースサイト「ガベージニュース」管理人。3級ファイナンシャル・プランニング技能士(国家資格)。経済・社会情勢分野を中心に、官公庁発表情報をはじめ多彩な情報を多視点から俯瞰、グラフ化、さらには複数要件を組み合わせ・照らし合わせ、社会の鼓動を聴ける解説を行っています。過去の経歴を元に、軍事や歴史、携帯電話を中心としたデジタル系にも領域を広げることもあります。

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