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そろばんやスポーツ、外国語会話など…高校生までの学校外活動費動向をさぐる(2020年公開版)

不破雷蔵「グラフ化してみる」「さぐる」ジャーナブロガー 検証・解説者
↑ 習い事として小学生の間では特にメジャーなスイミングスクール。(写真:GYRO PHOTOGRAPHY/アフロイメージマート)

小学校ではスイミングスクールやサッカー、習字やそろばんのような、勉強とは直接結びつきが無い「習い事」にいそしむ場合が多い。これらの費用は平均でどれほどの額なのだろうか。その実情を文部科学省が2019年12月に発表した「子供の学習費調査」の結果から確認する。

子供の学習にかかる費用は「学習費(総額)」と呼ばれている。これは「学校教育費(授業料やPTA会費、制服、遠足代など)」「学校給食費」「学校外活動費(家庭内学習費や各種塾月謝、図書費など)」から構成されるものである。今回は「学校外活動費」のうち、家庭内での自主勉強用費用、家庭教師費、学習塾費(これらを合算して「補助学習費」と呼ぶ)「以外」の費用、具体的にはボーイスカウト・ガールスカウトの経費、絵画教室やピアノ教室の月謝、そろばんや習字、各種スポーツ系の習い事の月謝などを対象とした「学校外活動費内その他の学校活動費」について確認をしていく。

まずは年齢・学年別の全体額だが、文化芸術系への習い事の参加は小学生の時期に多く、結果として活動費も小学生の期間で高い値を示している。

↑ 年齢・学年別その他の学校外活動費(公立・私立別、万円)(2018年度)
↑ 年齢・学年別その他の学校外活動費(公立・私立別、万円)(2018年度)

全般的には公立(学校在学者)よりも私立(学校在学者)の方が高め。しかも小学生の時期には差異がかなり大きなものとなる。公立よりも私立の方が高い理由としては多様なものが想定できるが、「私立に通わせるほど保護者が教育熱心」「私立に通わせるほど教育費に充てられる家計の余裕がある」などが主なものと考えられる。実際、公開されている詳細値を見る限り、公立・私立それぞれにおいて世帯年収が高い世帯ほど、さらに同一世帯年収層では公立よりも私立の方が「学校外活動費」は高めの値が出ている。

これらの額について、やや詳細区分化した上で積上げた形のグラフを、私立・公立別途に作ったのが次の図。比較がしやすいよう、額面を表す縦軸は同じ区分で作成してある。

↑ 年齢・学年別その他の学校外活動費(公立、円)(2018年度)
↑ 年齢・学年別その他の学校外活動費(公立、円)(2018年度)
↑ 年齢・学年別その他の学校外活動費(私立、円)(2018年度)
↑ 年齢・学年別その他の学校外活動費(私立、円)(2018年度)

公立より私立の方が、そして小学校の期間で特に額が積み増しされているのが改めて確認できる。私立でもっとも大きな額を示しているのは小学1年生。総額35.3万円のうち、「芸術文化活動」だけで10.6万円、「スポーツ・レクリエーション活動」で10万円近くを年ベースで出費している。それ以外の項目の費用もそれぞれ公立と比べて大きな額となり、私立の学校外活動費を大きなものにしているのがしっかりとつかみとれる。

一方で公立・私立ともに「その他の学校外活動費」は学校種類区分では小学校がピーク。中学校、高等学校と進学するにつれ、額は減少していく。同時に塾や家庭教師費用などから成る「補助学習費」が上昇していくことと併せて考えれば、子供の学校以外での学習が、各種文化活動やスポーツから勉学へとシフトしていく状況が理解できよう。

私立・公立ともに中学生、そして高校生と進学するにつれて、「その他の学校外活動費」は小さなものとなる。学校で本格的に部活動が始まり、勉学の面でも学校の授業そのものやそれに関連する学習塾・家庭教師との勉強に注力する必要があり、「その他の学校外活動」に充てる時間が無くなるのが実情。

見方を変えれば、時間にある程度余裕がとれる小学生のうちに、子供自身は(費用をかけるか否かは別として)「その他の学校外活動」にも勤しんで欲しいものである。保護者も配慮をしてほしいものだ。

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「グラフ化してみる」「さぐる」ジャーナブロガー 検証・解説者

ニュースサイト「ガベージニュース」管理人。3級ファイナンシャル・プランニング技能士(国家資格)。経済・社会情勢分野を中心に、官公庁発表情報をはじめ多彩な情報を多視点から俯瞰、グラフ化、さらには複数要件を組み合わせ・照らし合わせ、社会の鼓動を聴ける解説を行っています。過去の経歴を元に、軍事や歴史、携帯電話を中心としたデジタル系にも領域を広げることもあります。

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