若年層の「初めての転職の理由」をさぐる(2020年公開版)

↑ 出先で転職先の情報探し。今の仕事に限界を感じ、つい手が。(写真:GYRO PHOTOGRAPHY/アフロイメージマート)

厚生労働省が2019年12月に発表した、2018年時点における若年層(15~34歳)の雇用実態を調査した「若年者雇用実態調査」(※)によれば、若年層の就業者のうち47.4%は転職経験があるとのこと。つまり最低でも1回は離職をしたことになる。

↑ 卒業後に初めて就職した会社に現在は勤務していない若年就業者割合(調査時点で在学していない人限定、属性別)(2018年)
↑ 卒業後に初めて就職した会社に現在は勤務していない若年就業者割合(調査時点で在学していない人限定、属性別)(2018年)

それでは職を辞したのはどのような理由によるものだろうか。卒業後初めて勤務した会社を辞めた理由について見ていくことにする。

転職経験者に対し、最終学校卒業後にはじめて勤務した会社と限定した上で、その会社を辞した主な理由について尋ねたところ、もっとも多かった意見は「労働時間・休日・休暇の条件がよくなかった」というものだった。30.3%もの人が、この理由で最初に勤めた会社を辞めたとしている。

↑ 転職者がはじめて就職した会社を離職した理由(調査時点で在学していない人限定・はじめて就職した会社を離職した経験のある人限定、複数回答3つまで)(2018年)
↑ 転職者がはじめて就職した会社を離職した理由(調査時点で在学していない人限定・はじめて就職した会社を離職した経験のある人限定、複数回答3つまで)(2018年)

例えば「雇用期間の満了・雇止め」のような就業条件上の、あるいは「結婚、子育てのため」のような男女別上の特殊事情(最近は男性でも少なからぬ事例が見受けられるが、大勢の動きとの観点で)、離職した例も見られる。しかし最上位の意見は労働時間や休日、休暇など、就業環境の問題がネックとなって職場を離れたとしている。

2位は「人間関係がよくなかった」、以後「賃金の条件がよくなかった」「仕事が自分に合わない」など、方向性に多少の違いはあるが、やはり就労環境が問題視されている。要は「環境が悪くて耐えるのにも限界」というものだ。全部悪いと最悪だが、例えば「人間関係がよく、賃金もそれなりだが、一日残業4時間で休みはお盆と正月休みのみ」、あるいは「労働時間は適切、仕事もそれなりに自分に合っている、賃金も悪くない、しかし上司も部下も同僚も自分との相性が最悪で、改善のめどが立たず、仕事場にいるだけで息ができなくなるような苦しさを覚える」職場だとしたら、やはり離職を考える人は少なくあるまい。

もっとも「仕事が自分に合わない」「人間関係がよくない」は、インターン制でお試しをしてみるなり、OB訪問など事前調査をしても、実情がつかみきれない場合は多い。自分が好きな業界の仕事で、インターンで試した限りでも自分の好みな仕事だったのだが、いざ入社してみると随分と内情は異なるものだった場合も(特に大企業では)少なくない。このような事案に遭遇した場合、多くは「会社に自分を合わせろ」「仕事を好きになる自分になるように、自分を変えていこう」とアドバイスされるものだが、それができるのならば苦労はしない。

これをこれまでの「若年者雇用実態調査」にかかわる各記事でスポットライトを当てた属性、具体的には「最終卒業学校が中学卒、高校卒、大学卒、大学院修了」と「最初に勤めた会社での就業形態が正社員か非正社員か」で区分し、それぞれの回答率順位を5位まで記載したのが次の表。全体の上位3位「労働時間・休日・休暇の条件がよくなかった」「人間関係がよくなかった」「賃金の条件がよくなかった」はどの属性でも濃い赤系統色(=上位陣)が集中しており、基本的にはどの属性でも離職理由に大きな変わりはないことが分かる。

↑ 「転職者がはじめて就職した会社を離職した理由(調査時点で在学していない人限定・はじめて就職した会社を離職した経験のある人限定、複数回答3つまで)」で特定属性における回答率上位5位(2018年)
↑ 「転職者がはじめて就職した会社を離職した理由(調査時点で在学していない人限定・はじめて就職した会社を離職した経験のある人限定、複数回答3つまで)」で特定属性における回答率上位5位(2018年)

それと同時に、各属性の事情も透けて見えてくる。例えば非正社員では「仕事が自分に合わない」が3位についており、ミスマッチが生じやすい立ち位置であることがうかがわれる。また大学院修了では、院まで修学したにもかかわらず会社の将来性が見いだせないことに失望したためか「会社に将来性が無い」が4位に入ってしまっている。さらに自分のスキルを活かせないことに失望し「自分の技能・能力が活かせられなかった」が5位となっている。中学卒では「不安定な雇用状態が嫌だった」が5位に入っているのも目に留まる。

これらの事情に目を通すと、個別の問題(例えば結婚、子育てなど。仕事の相性も多分に本人の選択ミスによる)以外はほとんど企業側に否があるようにも見える。昨今の「ブラック企業云々」との風潮もそれを象徴する言葉の一つといえる。しかし違法・不法行為をしている企業なら別だが、一概に企業側が悪く、辞める就業者側に否がまったく無いとは断言できない。

最終的には個々の判断にゆだねるしかないが、転職を頭に思い浮かべたら、今件のデータを「第三者的な視点で」見て、自分の考えが本当に独りよがりでないものなのかを考え直してみるべきだろう。さらに信頼のおける知人に相談するのも悪くはない。辞めることはいつでもできるが、一度辞めたら「やっぱり今の退職届、無しで」はできないのだから。

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※若年者雇用実態調査

厚生労働省が5年おきに実施している調査で、直近分は2018年9月22日から10月15日(個人調査は10月11日から11月30日まで)の間に調査票郵送配布・郵送返信方式にて行われたもので、有効回答数は事務所調査が9455事務所、個人調査が1万9889人。現時点では2018年実施・2019年発表のものが最新となる。

用語定義は次の通り。

「若年就業者」…15~34歳の就業者

「常用就業者」…期間を定めずに雇われているか1か月を超える期間を定めて雇われている就業者

「正社員」…直接雇用関係のある雇用期間の定めのない就業者のうち、正社員・正職員など

「非正社員(元資料上の表記では正社員以外の労働者)」…直接雇用関係のある就業者のうち、正社員・正職員などとされている”以外”の人(例 パート・アルバイト、契約社員など)

(注)本文中のグラフや図表は特記事項の無い限り、記述されている資料からの引用、または資料を基に筆者が作成したものです。

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(注)グラフ中の「ppt」とは%ポイントを意味します。

(注)「(大)震災」は特記や詳細表記の無い限り、東日本大震災を意味します。

(注)今記事は【ガベージニュース】に掲載した記事に一部加筆・変更をしたものです。