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30代前半の就業者の6割台は転職経験あり(2020年公開版)

不破雷蔵「グラフ化してみる」「さぐる」ジャーナブロガー 検証・解説者
↑ 色々な事情で退職し、他の会社に転職する。その理由は。(写真:GYRO PHOTOGRAPHY/アフロイメージマート)

一般的には高学歴で就職をした人の方が離職率は低いと言われている。その実態を厚生労働省が2019年12月に発表した、2018年時点における若年層(15~34歳)の雇用実態を調査した「若年者雇用実態調査」(※)から確認する。調査時点で就業している人に限られるが、学歴や年齢階層などで、最初に勤めた会社から離職した人の割合(現在就職している人が回答しているので転職率でもある)はどのように異なるのだろうか

個人の諸事情がある場合(資格取得のための腰かけ的就業や、家業を継ぐ予定があるためにそれまでの就業など)は別にして、多くの人は初めて勤めた会社に一生勤務し続けたいと考えている。また、非正社員はともかく正社員を雇用する企業側も、企業自身が継続する限り、定年退職まで雇用し続けるつもりで新人を雇い入れる。だからこそ定年規定や退職金規定が存在する。しかし現実には働く側、あるいは企業側の事情により、最初に就職した企業から離職せざるを得ない人は少なくない。

今調査では調査対象母集団の5割近くが「最初勤めた会社には今現在は勤務していない」と回答している。若年労働者(15~34歳の就業中の人)で限っても、これほどまでの離職経験率の高さが出るとは、驚く人も多いだろう。

↑ 卒業後に初めて就職した会社に現在は勤務していない若年就業者割合(調査時点で在学していない人限定、属性別)(2018年)
↑ 卒業後に初めて就職した会社に現在は勤務していない若年就業者割合(調査時点で在学していない人限定、属性別)(2018年)

男女別では女性の方が値が高い。これは最近ではあまり聞かれなくなったものの、各種出産関連の統計でも少なからず確認できる、寿退社、出産のための退社が影響しているものと考えられる。

年齢階層別に見ると、当然ながら年が上になるに連れて「最初に勤めた会社からは退社した」人の割合は高くなる。しかし10代でもすでに1割強が離職を経験している。そして30~34歳になると64.1%にも達する。つまり「現在働いている30~34歳の人の3/5以上は転職を経験している」ことになる。これが自らの意志によるものか、あるいは会社都合によるものかまでは今数字からは読みとれないが、「終身雇用」との言葉は少なくとも若年層では、事実上終結を迎えつつあると考えてもよい。

学歴別では高学歴者ほど会社内での立ち位置が安定的なことがうかがえる。最終学歴が中学卒の就業者は実に8割台が転職を経験している。それに対し大学卒では3割台、大学院卒では2割台に留まっている。もっとも高校卒・専修学校修了・高専や短大卒では大きな違いが出ずに5割台に留まっているのは興味深い。

正社員か非正社員(最初に就職した会社での就業形態)かでは正社員だった人よりも非正社員の方が離職率が高い。就業年数まではこのグラフでは考察できないが、単純計算で「初めて勤めた会社に対する離職率は、非正社員では正社員の2倍以上」であることが見て取れる。

別途改めて精査するが、最初に勤めた会社を離職する理由は多様で、しかも複数にまたがっていることが多い。総計では「労働条件がよくない」「仕事が合わない」など、ハードな仕事に耐えきれなくて職を離れる場合が多い。ただし「はじめから想定していたが実践してみると想定以上だった」のか、「これほどまでに辛いのは聞いてなかった・思ってもいなかった」なのか「勤めていくうちに段々と辛くなって、限界を超えた」なのかは不明である。また「人間関係がよくなかった」ことを理由に挙げる人も多い。

ともあれ、本人の事情・意志以外による離職は、生活基盤をはじめとする多種の立ち位置(社会的、経済的、精神的…etc.)を危うくするもの。もう少し定着率を高めることができれば、世の中はその分だけよくなるはずなのだが。

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※若年者雇用実態調査

厚生労働省が5年おきに実施している調査で、直近分は2018年9月22日から10月15日(個人調査は10月11日から11月30日まで)の間に調査票郵送配布・郵送返信方式にて行われたもので、有効回答数は事務所調査が9455事務所、個人調査が1万9889人。現時点では2018年実施・2019年発表のものが最新となる。

用語定義は次の通り。

「若年就業者」…15~34歳の就業者

「常用就業者」…期間を定めずに雇われているか1か月を超える期間を定めて雇われている就業者

「正社員」…直接雇用関係のある雇用期間の定めのない就業者のうち、正社員・正職員など

「非正社員(元資料上の表記では正社員以外の労働者)」…直接雇用関係のある就業者のうち、正社員・正職員などとされている”以外”の人(例 パート・アルバイト、契約社員など)

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(注)グラフ中の「ppt」とは%ポイントを意味します。

(注)「(大)震災」は特記や詳細表記の無い限り、東日本大震災を意味します。

(注)今記事は【ガベージニュース】に掲載した記事に一部加筆・変更をしたものです。

「グラフ化してみる」「さぐる」ジャーナブロガー 検証・解説者

ニュースサイト「ガベージニュース」管理人。3級ファイナンシャル・プランニング技能士(国家資格)。経済・社会情勢分野を中心に、官公庁発表情報をはじめ多彩な情報を多視点から俯瞰、グラフ化、さらには複数要件を組み合わせ・照らし合わせ、社会の鼓動を聴ける解説を行っています。過去の経歴を元に、軍事や歴史、携帯電話を中心としたデジタル系にも領域を広げることもあります。

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