老衰による死亡者の「死亡時の場所」の実情をさぐる(2019年公開版)

↑ 病院で老衰にて亡くなる人も増加中。(写真:アフロ)

老衰による死亡者、その場所の現状

寿命によって亡くなる、自然死とも呼ばれている老衰(死)(※)。高齢化社会の到来に伴い、確実に件数は増えている。日本における実情を死亡時の場所の観点から、厚生労働省の人口動態調査による人口動態統計を用いて確認する。

初めに確認するのは、最新値となる2018年分の老衰死に関する、場所別の動向。

↑ 老衰による死亡者(場所別・男女別、人)(2018年)
↑ 老衰による死亡者(場所別・男女別、人)(2018年)

男性より女性の方がはるかに老衰死の数が多い。場所別では男性は病院が一番多く、次いで老人ホーム、自宅の順。他方女性は老人ホームがもっとも多く、次いで病院、自宅の順となっている。

某映画で有名となったシーンなどをはじめ、自宅における老衰死も容易に想像されるが、実際としては全体の約15%でしかないことも分かる。

過去からの推移

老衰死における場所の動向を、データが取得可能な1999年以降について、数そのものを単純に推移として見たのが次のグラフ。男女で縦軸の区切りが異なることに注意。

↑ 老衰による死亡者(男性、場所別、人)
↑ 老衰による死亡者(男性、場所別、人)
↑ 老衰による死亡者(女性、場所別、人)
↑ 老衰による死亡者(女性、場所別、人)

意外にも男女ともに一時期は自宅での老衰死は減少する傾向にあった。最近再び増加に転じているが、その動きもゆるやか。それとは対照的に、病院や老人ホーム、そして絶対数こそまだ少数だが介護老人保健施設での老衰死が増加している。結局のところ、高齢者による一人暮らし世帯が増えたことで自宅での老衰死が環境的に想定しがたくなってきたことに加え、老衰死に至る以前に相応の体の機能低下などが生じており、該当施設に長時間、あるいは常在する必要性が生じるようになったのが、これらの動きの理由だろう。

これを各年における比率換算を行ってグラフ化したのが次の図。

↑ 老衰による死亡者(男性、場所別、比率)
↑ 老衰による死亡者(男性、場所別、比率)
↑ 老衰による死亡者(女性、場所別、比率)
↑ 老衰による死亡者(女性、場所別、比率)

まず男性だが、自宅での老衰死比率が減り、その分病院、老人ホーム、介護老人保健施設が増えていく。しかし病院は2006~2007年で伸びが止まり、最近では漸減。一方で老人ホームと介護老人保健施設は増加の一途。

他方女性は元から男性と比べて病院における事例比率が少なめで、その分老人ホームが多い。そして男性と同じく2006~2007年で病院の比率の増加の動きは止まり(しかもその時の比率は男性より低い)、その後の減少度合いも男性より大きい。介護老人保健施設や老人ホームの増加は男性と同じような動きだが、老人ホームの増加が著しく、1/3を超えるまでとなった。

元々男女で老衰における死亡の際の年齢動向、至るまでの健康状態に違いがあることは先行記事の通りだが、それが老衰による死亡時の場所の違い、比率の変化傾向の差異にも現れている。

高齢者の一人暮らし世帯が増加する中で、今後さらに自宅で老衰にて息を引き取る人が急増していくとは考えにくい。代わりにどの場所の値が増えるかは推測が難しいが、病院はここ数年の動きが鈍化していることから、そろそろ収容能力に限界があることも予想される(絶対数は増加しているが全体数に対する比率は減少)。色々な面で考えねばならないことが多いのには間違いない。

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※老衰(死)

歳をとるにしたがって体を構成する細胞や組織の機能が低下することを老化と呼んでいるが、その老化現象により生命活動能力が衰弱し、生命維持が困難となり、多臓器不全で死に至った場合、それを老衰死と呼ぶことになる。厚生労働省が発行している【最新版の死亡診断書(死体検案書)記入マニュアル】によると、死因として「老衰」が当てはまるのは「高齢者で他に記載すべき死亡の原因が無い、いわゆる自然死の場合のみ用います」とある。ただし老衰から他の病気を併発しての死亡の場合は、直接死因はその病気、その病気の原因として老衰を記述することとなる。

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(注)グラフ中の「ppt」とは%ポイントを意味します。

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