Yahoo!ニュース

下落を見せるメディアへの信頼度、その実情をさぐる(2019年公開版)

不破雷蔵「グラフ化してみる」「さぐる」ジャーナブロガー 検証・解説者
↑ 新聞へ寄せられる信頼の度合いは?(写真:アフロ)

新聞通信調査会が2019年11月に発表した「メディアに関する世論調査」(※)によれば、NHKテレビや新聞、民放テレビなど主要メディアの信頼度は長期的に見ればおおよそ下落傾向にある。その実情を確認する。

主要情報配信メディアに対する信頼度(それぞれのメディアの情報をどの程度信頼しているかについて、「全面的に信頼…100点」「まったく信頼していない…0点」「普通…50点」の基準で点数をつけてもらった結果)は漸減する傾向にある。NHKや新聞など一部メディアに関してはここ1、2年で下げ止まった雰囲気だが、他のメディア同様に中長期的に見れば減少傾向にあることは否定できない。

↑ 各メディアの信頼度(100点満点)
↑ 各メディアの信頼度(100点満点)

そこで質問時における過去1年間において、各メディアに対して信頼感は変化したのか否かを尋ねた結果が次のグラフ。直近5年分の結果を併せてグラフには反映させている。また「高くなった」から「低くなった」の値を引いたDI値を算出し、その値のみの動きもグラフ化した。プラスならば上昇と考えた人が多く、マイナスならば下落と考えた人が多い。それぞれの方向の絶対値が大きいほど、その思いが強いことになる。

↑ 各メディアへの信頼感は変化したか(前年度と比べて)
↑ 各メディアへの信頼感は変化したか(前年度と比べて)
↑ 各メディアへの信頼感DI(高くなった-低くなった)
↑ 各メディアへの信頼感DI(高くなった-低くなった)

信頼感の上下度合いは回答者それぞれで一概には言えないが、おおよそ「高くなった」が「低くなった」より多ければ信頼度は増加し(DI値はプラス)、逆なら減少(DI値はマイナス)と見ることができる。その観点で結果をチェックすると、全メディアで信頼度は減少していることになる。何しろDI値のグラフでゼロを超える値が存在しないのだから。

メディア毎の動向を見ると、特に民放テレビと雑誌において、「低くなった」が「高くなった」を大きく上回る結果が出ている。信頼感が損なわれた、失望した人が多かった次第である。直近年度では民放テレビのDI値がマイナス9.2%、雑誌がマイナス11.9%との結果が出ており、権威が大きく損なわれていることが確認できる。またこの両メディアは少なくともこの5年間、大きなマイナス幅を示し続けており、信頼感の著しい下落ぶりが継続していることがうかがえる。

NHKテレビでは2015年度に大きな「低くなった」の値を示し、DI値も大きなマイナス幅となった。これは例えば2015年4月末における報道番組「クローズアップ現代」に関するやらせ問題で、総務省からの行政指導文書の受け取りを一時的ながらもNHK側が拒否したことをはじめ、国内外の事案に係わる誤報や不祥事的な報道や、その事案に対する姿勢への問題がいくつか想起される。その後はいくぶんながらもDI値のマイナス幅を縮小しているが、それ以前の信頼感の回復までにはいまだに至っていないことが分かる。さらに直近年度ではマイナス6.9%と、2015年度に肩を並べるほどのマイナス幅を示している。信頼度そのものが前年度比で大きく下がり、新聞にトップの座を奪われた実情が改めて認識できる。

新聞のDI値におけるマイナス幅は小幅だがマイナス状態は継続中。グラフには反映されていないものの2014年度では大きなマイナス幅が示されたが(マイナス6.3%)、これはいうまでもなく朝日新聞における誤報・捏造・虚報の数々が取り沙汰されたことである。直接事案による不信感は時の流れとともに薄れつつあるが、一向に改善しない体質に、信頼感のDI値をプラスに押し上げるまでの環境は期待できそうにも無い。

インターネットにおける2017年度のDI値の大きなマイナス幅は恐らく「フェイクニュース」報道によるものだろう。実際に「フェイクニュース」と定義されるものはインターネットを介して伝えられるものばかりでは無いのだが。

■関連記事:

「本震」から半年、緊急時のマスメディアへの信頼性はどのように変化したか

震災時のデマ情報の浸透とその打ち消し情報の広まりをグラフ化してみる(2011年版情報通信白書より)

※メディアに関する世論調査

直近分となる第12回は2019年8月23日から9月10日にかけて住民基本台帳からの層化二段無作為抽出法によって抽出された18歳以上の男女個人5000人に対して、専門調査員による訪問留置法によって行われたもので、有効回答数は3051人。有効回答者の属性は男性1467人・女性1584人、18~19歳58人・20代296人・30代390人・40代540人・50代490人・60代538人・70代以上739人。過去の調査もほぼ同じ条件で行われている。

(注)本文中のグラフや図表は特記事項の無い限り、記述されている資料からの引用、または資料を基に筆者が作成したものです。

(注)本文中の写真は特記事項の無い限り、本文で記述されている資料を基に筆者が作成の上で撮影したもの、あるいは筆者が取材で撮影したものです。

(注)記事題名、本文、グラフ中などで使われている数字は、その場において最適と思われる表示となるよう、小数点以下任意の桁を四捨五入した上で表記している場合があります。そのため、表示上の数字の合計値が完全には一致しないことがあります。

(注)グラフの体裁を整える、数字の動きを見やすくするためにグラフの軸の端の値をゼロで無いプラスの値にした場合、注意をうながすためにその値を丸などで囲む場合があります。

(注)グラフ中では体裁を整えるために項目などの表記(送り仮名など)を一部省略、変更している場合があります。また「~」を「-」と表現する場合があります。

(注)グラフ中の「ppt」とは%ポイントを意味します。

(注)「(大)震災」は特記や詳細表記の無い限り、東日本大震災を意味します。

(注)今記事は【ガベージニュース】に掲載した記事に一部加筆・変更をしたものです。

「グラフ化してみる」「さぐる」ジャーナブロガー 検証・解説者

ニュースサイト「ガベージニュース」管理人。3級ファイナンシャル・プランニング技能士(国家資格)。経済・社会情勢分野を中心に、官公庁発表情報をはじめ多彩な情報を多視点から俯瞰、グラフ化、さらには複数要件を組み合わせ・照らし合わせ、社会の鼓動を聴ける解説を行っています。過去の経歴を元に、軍事や歴史、携帯電話を中心としたデジタル系にも領域を広げることもあります。

不破雷蔵の最近の記事