電子書籍リーダーとタブレット型端末の所有・利用状況をさぐる(2019年公開版)

↑ 電子書籍革命の立役者的存在とも呼ばれた電子書籍リーダーだが。(写真:アフロ)

持てはやされた電子書籍リーダーの現状

高性能を誇るものの機動性が今一つのパソコンと、機動力に長けるが性能面や入力インターフェイスの上で難があるスマートフォン。それぞれ一長一短の性能を持つ両端末の合間にある存在とも表現できるタブレット型端末。また、新時代の読書スタイルともいえる電子書籍を購読・閲読するのを主目的とした、専用タブレット型端末として電子書籍リーダーも普及が著しいように見える。今回は総務省が2019年9月に情報通信政策研究所の調査結果として公式サイトで発表した「平成30年度 情報通信メディアの利用時間と情報行動に関する調査」(※)の公開値を基に、電子書籍リーダー、そしてタブレット型端末の普及・利用状況を確認する。

次に示すのは電子書籍リーダーの所有および利用状況。自宅にある・無しを回答者に答えてもらい、ある場合には回答者自身が利用しているか、それとも利用していないか(置いてあるだけなのか、家族の別の人が使っているかは問わない)、無い場合には自宅に欲しいか、いらないかを答えてもらっている。単純にある無しの回答だけでなく、ある場合には利用状況を、無い場合には所有希望の有無まで尋ねることで、電子書籍リーダーの需要状況を確認できる。なお今件選択肢は回答票には「電子書籍リーダー(AmazonのKindleなど)」と記載されている。

↑ 電子書籍リーダー所有状況(自宅、属性別)(2018年)
↑ 電子書籍リーダー所有状況(自宅、属性別)(2018年)
↑ 電子書籍リーダー所有状況(自宅、「無い」、属性別)(2018年)
↑ 電子書籍リーダー所有状況(自宅、「無い」、属性別)(2018年)

全体では世帯所有率は18.9%だが、利用率は6.9%に留まっている。10代では特に所有率が高い一方で利用率はさほど高くなく、学生・生徒でも同じような傾向が見られる。保護者が教育のために調達したか、あるいはそれを兼ねて自前で購入したものの、子供自身はさほど使っていない状況が思い浮かばれる。

もっとも、世帯所有率に対する非利用率の高さは、若年層に限った話ではない。年齢階層別の差異はさほど無く、就業別の際立った違いも見られない。世帯年収別ではおおよそ低世帯年収ほど所有率・利用率が低い傾向があるが、最大世帯年収の属性でも利用率は1割強。保護者が買い与えて子供が使っていないだけでなく、所有世帯の多くが使いこなせず放置している可能性は低くない。

非所有世帯でも、似た雰囲気を覚えさせる結果が出ている。非所有世帯率に多少の差はあるが、「世帯に無く、欲しい」とする意見は一定率、1割前後でしかなく、残りはおおよそ不必要と回答している。どのような属性でも「無いけれど欲しい」の意見率に大きな変化が無いのが興味深い。見方を変えれば、属性で変化するような特徴、魅力が電子書籍リーダーからは感じられないと判断することもできる。せいぜい学生・生徒の所有願望が高めといったところか。

「タブレット型端末が欲しい」学生・生徒では4割強

続いてタブレット型端末。こちらは世帯所有状況ではなく、回答者自身の利用状況を尋ねている(利用している/利用していない&将来ほしい/利用していない&将来もほしくない の3選択肢から選択。つまり利用していない≒使える端末が手元に無い)。なお回答用紙の機種に関する説明は「タブレット端末(iPad、Nexus9、GalaxyTabなど)」となっている。その点で、上記の電子書籍リーダーとは微妙に設定が異なっている(元々別項目の設問である)。

↑ タブレット型端末利用状況(回答者自身、属性別)(2018年)
↑ タブレット型端末利用状況(回答者自身、属性別)(2018年)
↑ タブレット型端末利用状況(回答者自身、「無い」、属性別)(2018年)
↑ タブレット型端末利用状況(回答者自身、「無い」、属性別)(2018年)

利用率は全体では4割近く、男女ではほぼ変わらず。そして意外にも10代の利用率が4割近くとなっているのが目に留まる(世帯別所有率では無いことに注意)。これはタブレット型端末に関する他の調査でも見受けられる動きだが、スマートフォン同様に子守り用の玩具として保護者から与えられる場合や、家族共有の端末として利用する事例が多々あるからだろう。そして40代で利用率はピークとなり、あとは年齢とともに下がる。実質的には10~40代で4割前後という表現が妥当だろう。

就業形態別では法則の類は見受けられないが、世帯年収別ではおおよそ高世帯年収ほど利用率が高めの値が出ている。都市規模別では特徴的な動きは無い。

非利用者における利用(≒所有)希望傾向だが、電子書籍リーダーとは異なり、高めの値が示されている。全体では1/4近く、10代では1/3超もの人がタブレット型端末の利用を希望している。一方高齢層では所有していないし欲しくも無い人が多数におよび、60代では5割強がいらないと答えている。

世帯年収別においては、利用率は高世帯年収ほど高かったため、当然非利用率は低世帯年収ほど高くなる。そして利用希望率は高世帯年収ほど高い。高年収世帯は現状でも利用者率が高いだけでなく、さらにタブレット型端末の需要が多分にあると解釈できよう。

アマゾンKindleの日本版で一気に日本国内でも花開いた感もある電子書籍だが、実際のところ電子書籍リーダーの普及状況は今一つで、利用・所有願望もかんばしくない。タブレット型端末の需要の高さと合わせ見ると、パソコンやスマートフォン、タブレット型端末による閲読・購読をする人が多分で、電子書籍リーダーを使って電子書籍を読む人は少数派のようにも見える。

機動性の高いモバイル端末とはいえ、複数を持ち運ぶのにはやはり難儀する。スマートフォンなりタブレット型端末の多機能性を合わせ考えると、さらにもう一つ電子書籍リーダーを持ち運ぶよりは、多少機能の上で劣っていてもスマートフォンなどで見た方が、総合的な利便性では上になるとの判断が、多くの人に働いているのだろうか。

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※平成30年度 情報通信メディアの利用時間と情報行動に関する調査

2019年2月23日から3月1日にかけて、全国125地点をランダムロケーションクォーターサンプリング(調査地点を無作為に抽出、地点ごとにサンプル数を割り当て、該当地域で調査対象者を抽出する方法)によって抽出し、訪問留置調査方式により、13~69歳を対象とする1500サンプルを対象としたもの。アンケート調査と日記式調査を同時並行で実施し、後者は平日2日・休日1日で行われている。よってグラフの表記上は「10代」だが、厳密には13~19歳を意味する。

なお今調査は例年11~12月にかけて行われるが、直近分は翌年の2~3月となっている。グラフや本文上の表記や考察は、報告書に準ずる形で2018年と表記する。また調査のタイミングにより一部調査結果においてイレギュラー的な動きが生じているが、報告書では「調査時期の違いによる影響や単年の一時的な傾向である可能性も否定できず、継続的な傾向の把握については今後の調査などの結果も踏まえる必要がある」と但し書きをしている。

(注)本文中のグラフや図表は特記事項の無い限り、記述されている資料からの引用、または資料を基に筆者が作成したものです。

(注)本文中の写真は特記事項の無い限り、本文で記述されている資料を基に筆者が作成の上で撮影したもの、あるいは筆者が取材で撮影したものです。

(注)記事題名、本文、グラフ中などで使われている数字は、その場において最適と思われる表示となるよう、小数点以下任意の桁を四捨五入した上で表記している場合があります。そのため、表示上の数字の合計値が完全には一致しないことがあります。

(注)グラフの体裁を整える、数字の動きを見やすくするためにグラフの軸の端の値をゼロで無いプラスの値にした場合、注意をうながすためにその値を丸などで囲む場合があります。

(注)グラフ中では体裁を整えるために項目などの表記(送り仮名など)を一部省略、変更している場合があります。また「~」を「-」と表現する場合があります。

(注)グラフ中の「ppt」とは%ポイントを意味します。

(注)「(大)震災」は特記や詳細表記の無い限り、東日本大震災を意味します。

(注)今記事は【ガベージニュース】に掲載した記事に一部加筆・変更をしたものです。