台風19号と消費税率引き上げで景況感大後退…2019年10月景気ウォッチャー調査の実情をさぐる

↑ 消費税率の10%への引き上げが行われた2019年10月の景況感は。(写真:吉澤菜穂/アフロ)

現状は下落、先行きは上昇

内閣府は2019年11月11日付で2019年10月時点における景気動向の調査「景気ウォッチャー調査」(※)の結果を発表した。その内容によれば現状判断DI(※)は前回月比で下落、先行き判断DIは上昇した。結果報告書によると基調判断は「このところ回復に弱い動きがみられる。なお、消費税率引上げに伴う駆込み需要の反動や台風19号などによる影響が一部にみられる。先行きについては、海外情勢などに対する懸念もある一方、持ち直しへの期待がみられる」と示された。2019年2月分までは「緩やかな回復基調が続いている」で始まる文言だったことから、景況感がネガティブさを見せる形が3月分以降、8か月連続する形となっている。

2019年10月分の調査結果をまとめると次の通り。

・現状判断DIは前回月比マイナス10.0ポイントの36.7。

 →原数値では「やや悪くなっている」「悪くなっている」が増加、「よくなっている」「ややよくなっている」「変わらない」が減少。原数値DIは36.3。

 →詳細項目は全項目で下落。「小売関連」のマイナス18.2ポイントが最大の下げ幅。基準値の50.0を超えている詳細項目は皆無。

・先行き判断DIは前回月比でプラス6.8ポイントの43.7。

 →原数値では「やや悪くなる」「悪くなる」が減少、「よくなる」「ややよくなる」「変わらない」が増加。原数値DIは43.6。

 →詳細項目は「雇用関連」のみ下落。「雇用関連」のマイナス0.7ポイントが最大の下げ幅。基準値の50.0を超えている項目は皆無。

昨今では現状判断DI・先行き判断DIともに低迷傾向と表現できよう。

↑ 景気の現状判断DI(全体)
↑ 景気の現状判断DI(全体)
↑ 景気の先行き判断DI(全体)
↑ 景気の先行き判断DI(全体)

現状判断DIは昨今では海外情勢や消費税率引き上げによる景況感の悪化を受け、基準値の50.0以下を示して低迷中。今回月は台風19号の影響に加え、消費税率引き上げ直後であることから、前回月比で10.0ポイントと大幅な下落を示した。前回の消費税率引き上げ(2014年4月)の際に生じた15.7ポイントの下落(2014年3月は54.1、2014年4月は38.4)と比べれば下げ幅は小さいものの、大幅に景況感が悪化したことに違いは無い。

先行き判断DIも海外情勢や消費税率引き上げによる景況感の悪化を受け、昨今では急速に下落していたが、今回月では前回月比で6.8ポイントのプラスと大幅な上昇を示した。消費税率引き上げ後の景況感の悪化からの立ち直りが早期に生じるとの思惑を持つ人は、案外多いようだ。

DIの動きの中身

次に、現状・先行きそれぞれのDIについて、その状況を確認していく。まずは現状判断DI。

↑ 景気の現状判断DI(~2019年10月)(景気ウォッチャー調査報告書より抜粋)
↑ 景気の現状判断DI(~2019年10月)(景気ウォッチャー調査報告書より抜粋)

今回月の現状判断DIは合計で前回月から10.0ポイントのマイナス。詳細項目では上昇項目は無し。今回月で基準値を超えている現状判断DIの詳細項目は皆無。特に「小売関連」の31.8は、前回の消費税率引き上げ直後の2014年4月につけた27.9に迫る勢いを示している。

続いて先行き判断DI。

↑ 景気の先行き判断DI(~2019年10月)(景気ウォッチャー調査報告書より抜粋)
↑ 景気の先行き判断DI(~2019年10月)(景気ウォッチャー調査報告書より抜粋)

今回月で基準値を超えている先行き判断DIの詳細項目は皆無。「小売関連」の11.5ポイントのプラスが最大の上げ幅だが、それでもなお基準値には届いていない。

台風19号と消費税率引き上げのダブルパンチ

報告書では現状・先行きそれぞれの景気判断を行うにあたって用いられた、その判断理由の詳細内容「景気判断理由の概況」も全国での統括的な内容、そして地域ごとに細分化した内容を公開している。その中から、世間一般で一番身近な項目となる「全国」に関して、現状と先行きの家計動向に係わる事例を抽出し、その内容についてチェックを入れる。

■現状

・消費税増税後にキャッシュレス・消費者還元事業がスタートし、来客数が好調に推移している。今まで来店していなかった客が来店するようになっている(コンビニ)。

・消費税の引上げと食品の軽減税率が実施され、酒などは月前半の販売量が減ったものの復調基調である(スーパー)。

・増税前の特需による反動で、集客が落ちている(家電量販店)。

・10月初旬までは横ばいで推移していたが、台風19号によるキャンセルが相次いだことで景気は悪くなっている(観光型ホテル)。

■先行き

・前回よりも増税幅が小さいこと、軽減税率などの各種施策が存在すること、また年間最大の年末商戦が直近で控えていることから、前回の消費税増税時よりも景気回復のタイミングは早いと思われる(百貨店)。

・忘年会シーズンになるため、若干景気が上向くと予想される(高級レストラン)。

・12月中旬以降はオフ期を向かえ、韓国との関係悪化による定期便運休の影響もあるが、10月末からの地方便の拡充や来年1月からの日中間の便の増加に期待が持てる(都市型ホテル)。

・消費税増税の影響により、消費者の購買意欲が低下している。キャッシュレス・消費者還元事業の効果もさほどみられない(その他専門店[造花])。

今回月は台風19号による大きな被害が各地で生じ、その影響が少なからず生じていることがうかがえる。また消費税率引き上げで消費者の消費マインドが低下し、前回月の駆け込み需要の反動もあり、消費の減退が生じているようだ。一方で消費税率の引き上げが10月に実施されたため、すぐに年末の繁忙期に突入することから、それが景況感の低迷からの回復に貢献するのではとの期待も大きい。

企業関連では米中貿易摩擦の激化に伴う世界経済の後退感と、台風19号や消費税率引き上げによる影響がプラス・マイナス双方で生じているのが確認できる。

■現状

・消費税増税の影響で受注が前倒しとなった案件もあり、増税後は受注が若干減少している(出版・印刷・同関連産業)。

・台風19号により、県内では北部を中心に被害を受けている。折込チラシを出稿していた小売店が被災し、折込チラシが中止となっている。また、各種イベントも自粛傾向となり、景気は格段に悪くなっている(新聞販売店[広告])。

■先行き

・(台風の)被害からの復旧工事が進むことにより、入居率の上昇が見込める。また、冬が近づき空調工事などの受注が増える可能性もある(不動産業)。

・中国市場関連の影響で、受注先からの受注量の激減が、前月から継続している(精密機械器具製造業)。

現状は消費税率引き上げと台風19号でダブルパンチ状態だが、先行きでは多少ながらも明るい話も見受けられる。

雇用関連では人材需給にネガティブな変化が生じている気配が見える。

■現状

・求人数が前年に比べ減少傾向にあるものの、なかなか充足せず、依然として介護や建設分野では人手不足感がある(職業安定所)。

■先行き

・紹介業の求人件数が減少している。派遣業では、同一労働同一賃金に向けて人件費向上抑制対策を講じるという見解を示す企業が増えている(人材派遣会社)。

人手不足は相変わらず。一方で同一労働同一賃金の政策に対し、低い賃金の側の引き上げを抑えるために、人件費全体の抑え込みの動きが見受けられる。高い賃金側で一律に揃えるのが政策側の思惑だが、支払う企業側としては低い側で揃えようとする力が働くのは止む無い話か。

今件のコメントで消費税率引き上げに関するコメントを「消費税」のキーワードで確認すると、現状のコメントで568件、先行きのコメントで441件もの言及がある。不安や懸念といったネガティブな内容が圧倒的に多く、景況感の悪化が危惧される。どこぞで主張されている「消費税の増税で財政再建が進むので社会保障への安心感が強まり、消費が活性化される」などとの意見は見受けられず、これが現状なのだろう。年末商戦で景況感の悪化は吹き飛ぶとの意見もあるが、一方で年末商戦の勢いそのものが吹き飛ぶのではとの懸念も見受けられるほどである。「台風19号と大雨、消費税増税などが重なり、消費者の口からは悲観的な言葉がよく出てくる気がする。実際に購買意欲も落ちている」という意見も目に留まる。

米中貿易摩擦に関しては先行きのコメントにおいて「中国」で25件、「米中」で33件が確認できる。こちらもネガティブな内容がほとんどで、景況感の足を引っ張っていることは間違いない。特に製造業でマイナスの影響が顕著化しているのが目に留まる。今後、米中間の対立が受注量にさらなる影響をおよぼすことは十分に考えられよう。

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※景気ウォッチャー調査

※DI

内閣府が毎月発表している、毎月月末に調査が行われ、翌月に統計値や各種分析が発表される、日本全体および地域毎の景気動向を的確・迅速に把握するための調査。北海道、東北、北関東、南関東、甲信越、東海、北陸、近畿、中国、四国、九州、沖縄の12地域を対象とし、経済活動の動向を敏感に反映する傾向が強い業種などから2050人を選定し、調査の対象としている。分析と解説には主にDI(diffusion index・景気動向指数。3か月前との比較を用いて指数的に計算される。50%が「悪化」「回復」の境目・基準値で、例えば全員が「(3か月前と比べて)回復している」と答えれば100%、全員が「悪化」と答えれば0%となる。本文中に用いられている値は原則として、季節動向の修正が加えられた季節調整済みの値である)が用いられている。現場の声を反映しているため、市場心理・マインドが確認しやすい統計である。

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(注)グラフ中の「ppt」とは%ポイントを意味します。

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