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中米独印日の順…各国再生可能エネルギーの発電量動向をさぐる(2019年公開版)

不破雷蔵「グラフ化してみる」「さぐる」ジャーナブロガー 検証・解説者
↑ 日本では急速に浸透するとともに問題も指摘されるようになった太陽光発電だが。(写真:アフロ)

直近では中国がトップ、アメリカ合衆国が続く

昨今注目を集め、同時に問題も指摘されるようになった、太陽光発電などの再生可能エネルギー(自然エネルギー)。発電量の実情はどのような状況なのか、世界における実情を、国際石油資本BP社が毎年発行しているエネルギー白書「Statistical Review of World Energy」から確認する。

今資料では最新の2018年分だけでなく1965年以降における、各再生可能エネルギー発電所による発電・消費量推移を、エネルギーとしての石油換算で算出している。今回は最新の公開内容における値(石油換算100万トンを1.0とする)が1.0以上のものについて具体的にグラフに反映することにした。なお「再生可能エネルギー」とは風力発電、地熱発電、太陽光発電、バイオマス発電、廃棄物発電などを指す。水力発電は別途計算されており、今件には含まれていない。

まずは最新データの2018年における上位国、そして全世界の再生可能エネルギー発電・消費全量に占めるシェアのグラフを形成する。エネルギー関連では常に上位についている中国がトップ。シェアにして1/4強。そしてアメリカ合衆国が続く。

↑ 再生可能エネルギー発電所発電による電力消費量(1.0以上・国名判別分のみ、100万トン(石油換算))(2018年)
↑ 再生可能エネルギー発電所発電による電力消費量(1.0以上・国名判別分のみ、100万トン(石油換算))(2018年)

中国の143.5(×100万トン石油換算)は、同国の原発発電量66.6(×100万トン石油換算)をはるかに凌駕する。内訳としては風力発電の割合が大きく、6割近くを占める(82.8×100万トン石油換算)。同国ではそれ以外のエネルギー生成量(そして当然ながら、あるいはそれらの原因としてエネルギー消費量)も急増し、2017年以降はアメリカ合衆国を抜き世界でトップの量をカウントしている。

続いてアメリカ合衆国。2016年までは中国より量は多く世界最大値を示していたが、2017年以降は中国に抜かれる形となった。同国でも内訳としては風力発電の割合がもっとも多く、約6割(62.8×100万トン石油換算)。

第3位はドイツ、そしてインド、日本が続く。ドイツが上位についているのは、太陽光発電の国策的な電力買取によるところが大きい。もっともこの国策も、国家財政と健全なエネルギーバランスの維持の上ではプラスをもたらさないとの認識が強まり(例えば「国の買取制度」も結局は国民の負担が増えるだけ)、大幅な軌道修正を行っているため、今後もこの順位を維持できるかは不確か。

日本は世界では第5位の再生可能エネルギーによる電力発電・消費国。内訳としては太陽光発電が最多で約6割を占める(16.2×100万トン石油換算)。

経年変化で動向を確認

これを2018年の上位国から抽出する形で、2001年からの(つまり今世紀の)推移を眺めたのが次のグラフ。

↑ 再生可能エネルギー発電による電力消費量(2018年時点の上位国、100万トン(石油換算))(2001年以降)
↑ 再生可能エネルギー発電による電力消費量(2018年時点の上位国、100万トン(石油換算))(2001年以降)

アメリカ合衆国では国策としてエネルギー創出に対する関心が高く、各方面の再生可能エネルギーに対する研究も盛んに行われている(昨今のシェールガス・オイルの開発もよい例)。絶対量はともかく、この成長ぶりが、同国のエネルギーに対する熱意を表している。

他方ドイツの伸びは直上で示したように、主に太陽光発電エネルギーの固定買取制度によるもの。しかし加速する財政的負担に、技術進歩によるコストダウン・安定性の増大が追い付かず、国の財務状態を悪化させることとなり、制度そのものが行き詰っている。今後において、これまでの伸び率が維持できる可能性はさほど高くは無い。

インドや中国も、ここ数年間で高い伸び率を示している。特に中国は大きな上昇カーブを描いており、2012年にはドイツを抜いて世界第2位に、そして2017年ではついにアメリカ合衆国を抜いてトップとなった。これは両国の経済発展に伴い、エネルギーの必要性が急増したことによるもの。再生可能エネルギーに限らず、他のこれまでの記事にある通り、他の主要エネルギーもまた、続々と生産・消費量を積み増している。

余談ではあるが、これらの再生可能エネルギーはエネルギー消費量全体のどれほどに該当するのかを把握するため、世界規模において他の主要エネルギー源と並べたのが次のグラフ。

↑ 世界全体のエネルギー消費量(100万トン・石油換算)(2018年)
↑ 世界全体のエネルギー消費量(100万トン・石油換算)(2018年)

再生可能エネルギーは成長こそ続けているものの、既存エネルギー源の代替的存在となるのには、現状の量では不足しているのが実情ではある。

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「グラフ化してみる」「さぐる」ジャーナブロガー 検証・解説者

ニュースサイト「ガベージニュース」管理人。3級ファイナンシャル・プランニング技能士(国家資格)。経済・社会情勢分野を中心に、官公庁発表情報をはじめ多彩な情報を多視点から俯瞰、グラフ化、さらには複数要件を組み合わせ・照らし合わせ、社会の鼓動を聴ける解説を行っています。過去の経歴を元に、軍事や歴史、携帯電話を中心としたデジタル系にも領域を広げることもあります。

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