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光回線は6割超で増加継続…自宅パソコンなどのインターネット接続回線の種類をさぐる(2019年公開版)

不破雷蔵「グラフ化してみる」「さぐる」ジャーナブロガー 検証・解説者
↑ 自宅のパソコンなどのインターネット環境は?(写真:アフロ)

インフラとしてのインターネットの整備は進んでいるが、その中身もナローバンドからブロードバンドへと大きな変容を遂げている。その実情を総務省の通信利用動向調査(※)の最新版の結果から確認する。

今調査によると、2018年9月末時点のインターネットの利用率(過去1年間にインターネットを利用したことがある人の率。いわば普及率)は79.8%。この調査結果における「インターネット利用」とは、6歳以上、過去1年間にパソコン・携帯電話(従来型携帯電話だけで無く、スマートフォンやPHS含む)・ゲーム機・タブレット型端末などあらゆる端末で、インターネットにアクセスすることを意味している。アクセス対象の機器を自分が保有しているか否か、利用目的が私的か仕事上のものか、あるいは学校の学習用であるかなどは問われていない。学校の授業でのみ利用したとしても、携帯電話経由のみの人も「利用者」に該当する。

「自宅」の「パソコン」など(タブレット型端末、インターネットテレビなども含まれる。携帯電話やスマートフォンの「単独・直接利用」は、今件では含まれない)でインターネットに接続する際、その接続回線の種類はブロードバンド(光、DSL、ケーブルテレビ、携帯電話回線など)・ナローバンド(ISDN、電話回線によるダイヤルアップ、PHS回線)のいずれなのか、そしてその世帯普及率はどれほどなのかを記したのが次のグラフ。

↑ 自宅パソコンなどのインターネット接続回線の種類(世帯単位、過去1年間に自宅からパソコンなどでインターネットを利用した世帯限定)
↑ 自宅パソコンなどのインターネット接続回線の種類(世帯単位、過去1年間に自宅からパソコンなどでインターネットを利用した世帯限定)

複数回答なので双方を並列導入している場合もあるが、ナローバンド回線は2007年から2010年の間は、普及率が確実に減っている。しかしそれを底として、それ以降は若干ながら増加の動きを示していた。ところが2013年以降は大きく減少しているのが確認されている。なお今件項目の調査対象母集団は「自宅からパソコンなどでインターネットを利用した世帯」であることに注意。

ブロードバンド回線の世帯ベースでの利用率(インターネット接続世帯比)は最新値の2018年で97.4%。パソコンなどでインターネットを使っている世帯では、ほぼすべての世帯が導入している計算になる。データが開示されている最初の年となる2006年から直近の2018年までに30%ポイント近く増加しており、確実な普及の様子がうかがえる。

入れ替え的な立場に見える「ナローバンド利用率」と「ブロードバンド利用率」の伸縮を比較すると、後者の伸びがやや鈍いのは、インフラの整備が遅れていること、「ブロードバンド・ナローバンド双方を使用している人が後者の利用を取りやめたのみで、ブロードバンドは元々利用していた事例があり、その場合はブロードバンドの利用率向上には換算されない」と考えることができる。さらに加えると後述するが、PHS回線の増加に伴い、ナローバンド回線の利用世帯率が一時的に底上げされていたのも一因。ただし2013年においてはこの微妙な位置関係は大きく変わり、ブロードバンドが大きく伸びて、ナローバンドが大きく落ちる結果となり、その状況は直近年まで継続している。

ブロードバンド・ナロードバンド双方で、具体的にどのような種類の回線を利用しているのかを示した利用率グラフが次の図(一部項目のみを抜粋)。

↑ 自宅パソコンなどのインターネット接続回線の種類(世帯単位、過去1年間に自宅からパソコンなどでインターネットを利用した世帯限定)
↑ 自宅パソコンなどのインターネット接続回線の種類(世帯単位、過去1年間に自宅からパソコンなどでインターネットを利用した世帯限定)
↑ 自宅パソコンなどのインターネット接続回線の種類(世帯単位、過去1年間に自宅からパソコンなどでインターネットを利用した世帯限定)(直近5年間)
↑ 自宅パソコンなどのインターネット接続回線の種類(世帯単位、過去1年間に自宅からパソコンなどでインターネットを利用した世帯限定)(直近5年間)

かつて日本においてブロードバンド環境を加速度的に浸透させ、一世を風靡した、ADSLに代表されるDSL回線はその普及率を下げ、一方で光回線が急速に伸びを見せている。

最新のデータとなる2018年分においては、前年比で光回線と携帯電話回線が伸び、DSL回線が落ちた以外は、ほぼ横ばいを維持。DSL回線の2016年分はイレギュラーだったのだろう。

携帯電話回線の2013年における過激なまでの伸びによる高い値は、やや落ちを見せてはいるがほぼそのまま維持されている。これはデータを精査した限りではLTEや、WiMAXなどのBWA回線を利用して、パソコンやタブレット型端末でアクセスしている人によるところが大きい。

トップの光回線の利用率は63.4%。2018年でも「5世帯に3世帯強」「過半数」の域に達してるが、かつてのような加速度的な普及率上昇では無い。やはり機動性・柔軟性に優れたWiMAXなどに目が移るのは仕方の無い話か。今後も自宅の固定回線でのブロードバンド化が進むには違いないものの、パワーバランスには小さからぬ変化が生じるに違いない。

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※通信利用動向調査

2018年分は2018年10~12月に、「世帯向けは都道府県および都市規模を層化基準とした層化二段無作為抽出法で選ばれた、20歳以上の世帯主がいる世帯・構成員に」「企業向けは公務を除く産業に属する常用雇用者規模100人以上の企業に」対して、郵送による調査票の配布および回収の形式によって行われている(企業向けは一部オンラインでも実施されている)。有効回答数はそれぞれ1万6255世帯(4万2744人)、2119企業。世帯調査における調査票のうち約8割は回収率向上のために調査事項を限定した簡易調査票が用いられている。各種値には国勢調査や全国企業の産業や規模の分布に従った、ウェイトバックが行われている。

(注)本文中のグラフや図表は特記事項の無い限り、記述されている資料からの引用、または資料を基に筆者が作成したものです。

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(注)グラフ中の「ppt」とは%ポイントを意味します。

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(注)今記事は【ガベージニュース】に掲載した記事に一部加筆・変更をしたものです。

「グラフ化してみる」「さぐる」ジャーナブロガー 検証・解説者

ニュースサイト「ガベージニュース」管理人。3級ファイナンシャル・プランニング技能士(国家資格)。経済・社会情勢分野を中心に、官公庁発表情報をはじめ多彩な情報を多視点から俯瞰、グラフ化、さらには複数要件を組み合わせ・照らし合わせ、社会の鼓動を聴ける解説を行っています。過去の経歴を元に、軍事や歴史、携帯電話を中心としたデジタル系にも領域を広げることもあります。

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