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役員から内職者まで…有業者一人あたりの平均所得をさぐる(2019年公開版)

不破雷蔵「グラフ化してみる」「さぐる」ジャーナブロガー 検証・解説者
↑ 就業状況で所得にどれほどの違いが生じるのだろうか。(写真:アフロ)

厚生労働省では2019年7月に「国民生活基礎調査の概況」(※)の最新版を発表したが、それによると2017年時点における全世帯の平均世帯所得は551.6万円とのこと。この値は有業者の数や就業状況によって大きな違いを示す。そこで今回は、就業状況別に有業者における所得水準を確認する。

次に示すのは15歳以上における有業者の、就業状況別の平均所得。属する世帯全体ではなく、働き手本人の所得であり、世帯構成や人数で変化は生じない。なお「国民生活基礎調査の概況」では所得は給与・賃金以外に賞与も該当し、税金や社会保険料も含んでいる。現物支給の場合は時価で見積もった額に換算して含めている。ただし事業所得(自営業など)では収入から仕入れ原価・必要経費(税金・社会保険料は該当せず)を差し引いた金額となる。

↑ 有業者一人あたり平均所得金額(15歳以上、勤め先での呼称など別、万円)(2017年)
↑ 有業者一人あたり平均所得金額(15歳以上、勤め先での呼称など別、万円)(2017年)

調査対象母集団全体では349.4万円。これが会社などの役員となるとほぼ倍の678.5万円となる。正規社員(職員・従業員)では446.9万円だが非正規社員では170.4万円と半分にも満たない。ただしこれはパートやアルバイトが混じっているからで、派遣社員や契約社員・嘱託では268.6万円となる。

自営業者は398.6万円。ただ職種によりピンからキリまでなので、あくまでも今調査の対象となった人の平均としての参考値程度に見るのが無難。むしろ内職などの場合、223.9万円との具体的な値が確認できたのは注目すべき。

これを男女別に見たのが次のグラフ。

↑ 有業者一人あたり平均所得金額(15歳以上、勤め先での呼称など別・男女別、万円)(2017年)
↑ 有業者一人あたり平均所得金額(15歳以上、勤め先での呼称など別・男女別、万円)(2017年)

女性は男性のおおよそ半分ぐらいの金額に留まっている。これは不思議なことにどのような就業状況でも変わるところが無い。役員の立場ですら、女性は427.6万円で、男性の正社員の平均より低い。

最後に経年変化。「国民生活基礎調査の概況」の今件項目では2003年以降のデータが収録されている。役員や正規・非正規それぞれの推移は他の調査でも取り上げる機会も多いことから、ここでは非正規社員の詳細区分として、「パート・アルバイト」と「派遣社員、契約社員、嘱託など」について、男女別の動向を確認する。

↑ 有業者一人あたり平均所得金額(15歳以上、非正規社員、勤め先での呼称など別、男女別、万円)
↑ 有業者一人あたり平均所得金額(15歳以上、非正規社員、勤め先での呼称など別、男女別、万円)

意外にも取り扱われている期間内ではパート・アルバイトも契約社員なども、所得に変化はあまりない。むしろ女性に限ればこの10年あまりの間にわずかながら上昇する動きすら見受けられる。また、直近の数年ではいずれも上昇の気配を覚えさせる。雇用市場の変化に伴い、ここ数年は非正規社員でも時給が上昇していることは他調査でも確認できることもあり、今後は小さからぬ動きも見られるかもしれない。

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※国民生活基礎調査

全国の世帯および世帯主を対象とし、各調査票の内容に適した対象を層化無作為抽出方式で選び、2018年6月7日に世帯票、同年7月12日に所得票を配ることで行われたもので、本人記述により後日調査員によって回収され、集計されている(一部は密封回収)。回収の上集計が可能なデータは世帯票が4万4135世帯分、所得票が6227世帯分。今調査は3年おきに大規模調査、それ以外は簡易調査が行われている。今回年(2018年分)は簡易調査に該当する年であり、世帯票・所得票のみの調査が実施されている。

また1995年は阪神・淡路大震災の影響で兵庫県の分、2011年は東日本大震災の影響で岩手県・宮城県・福島県(被災三県)の分、2012年は福島県の分、2016年は熊本地震の影響で熊本県の分はデータが取得されておらず、当然各種結果にも反映されていない。

(注)本文中のグラフや図表は特記事項の無い限り、記述されている資料からの引用、または資料を基に筆者が作成したものです。

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(注)グラフ中の「ppt」とは%ポイントを意味します。

(注)「(大)震災」は特記や詳細表記の無い限り、東日本大震災を意味します。

(注)今記事は【ガベージニュース】に掲載した記事に一部加筆・変更をしたものです。

「グラフ化してみる」「さぐる」ジャーナブロガー 検証・解説者

ニュースサイト「ガベージニュース」管理人。3級ファイナンシャル・プランニング技能士(国家資格)。経済・社会情勢分野を中心に、官公庁発表情報をはじめ多彩な情報を多視点から俯瞰、グラフ化、さらには複数要件を組み合わせ・照らし合わせ、社会の鼓動を聴ける解説を行っています。過去の経歴を元に、軍事や歴史、携帯電話を中心としたデジタル系にも領域を広げることもあります。

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