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日本が1番…アメリカ合衆国のアジア地域諸国に対するパートナー意識の重要度推移(2019年5月発表版)

不破雷蔵「グラフ化してみる」「さぐる」ジャーナブロガー 検証・解説者
↑ アメリカ合衆国にとってアジアで重要視している国は?(写真:GYRO PHOTOGRAPHY/アフロイメージマート)

アメリカ合衆国にとってアジアで最も重要なパートナーは?

アメリカ合衆国の人達はアジア地域においてどの国をパートナーとして重要視しているのだろうか。その実情を外務省が2019年5月に発表した「米国における対日世論調査」(※)の結果から確認する。

まずは「アジア地域の中でどの国が、アメリカ合衆国・地域にとって最も重要なパートナーであるか」(つまりアメリカ合衆国におけるアジア地域でもっとも頼りにしたい、付き合いを深めたい国)との設問に、択一で答えてもらった結果の推移の確認。

↑ アジア地域の中でどの国がアメリカ合衆国・地域にとってもっとも重要なパートナーであるか(一般人、択一)
↑ アジア地域の中でどの国がアメリカ合衆国・地域にとってもっとも重要なパートナーであるか(一般人、択一)
↑ アジア地域の中でどの国がアメリカ合衆国・地域にとってもっとも重要なパートナーであるか(有識者、択一)
↑ アジア地域の中でどの国がアメリカ合衆国・地域にとってもっとも重要なパートナーであるか(有識者、択一)

一般人は2011年度になって初めて、有識者では2010年度に日中の逆転現象が起きた。これは中国の人口・資源を背景にした経済成長に伴う影響力の強化によるもの。1990年以降、とりわけ今世紀に入ってからの中国の値の伸びがそれを裏付けている。

ところが2012年度になると、一般人では日中の立ち位置が再び逆転し、日本が上位につき、有識者でも順位の変化こそ無いものの両国の差は急激に縮まった。この変動の理由については、米中関係の変化(悪化)に伴い、相対的に日本への政治的側面での再評価が行われたもの、そして2011年3月に発生した東日本大地震・震災に伴う米軍の救援作戦「オペレーション・トモダチ」によるものと考えられる(2011年度調査時点では震災関連の動きは反映されていない)。

その翌年の2013年度では、中国の動きは一般人では横ばい、有識者では大きな下落を示している。他方日本は一般人では大きく下落し、再びトップの座を中国に明け渡している。有識者ではほぼ横ばいで、中国との差は4%ポイントにまで縮小した。他方、一般人・有識者ともに韓国が大きく伸びている。

直近の2018年度では一般人では日本の値は前年度から多少落ち、中国は上昇を示し、結果として両国の値は差を縮める形となっている。他方有識者では中国が前年度から大きく値を落とし、日本は大きく上昇を示し、差が大きく開く結果となっている。一般人と有識者との間では、ここ1、2年における日本と中国に対する見方の変化が大きく異なるようだ。

パートナーとしての認識の理由を確認

今世紀における中国の値を押し上げた原因としては「経済成長に伴う影響力の強化」が想像できる。その想像の裏付けをしていくことにする。まずは一般人において、日本と中国それぞれをベストパートナーとして選んだ回答者に、その理由を自由回答で答えてもらい、上位5位の推移を見たものが次のグラフ。直近年度となる2018年度では選択肢の少なからぬ変更が行われ、継続性のある項目が少なくなってしまっている。また「日本」のグラフで7項目が掲載されているのは、5位の選択肢が同率で3つ存在するため(「国の経済・好景気」「歴史・実績」「国の特質(人口など)」)。

↑ 「日本」と回答した理由(一般人、自由回答)
↑ 「日本」と回答した理由(一般人、自由回答)
↑ 「中国」と回答した理由(一般人、自由回答)
↑ 「中国」と回答した理由(一般人、自由回答)

日本では「技術力」「貿易・経済関係」が高い値を示していたが、「技術力」はおおよそ漸減、「貿易・経済関係」もここ数年度では減少傾向を示している。「技術力」は2014年度を底にいくぶん持ち直しを見せているのは幸いだが。また、「国の特質(人口など)」が一定値を示し続けているのは興味深い。

他方中国では各項目が横ばい、減少にあるのに対し、唯一「貿易・経済関係」が跳ね上がっていた。要は多くの一般人にとって、中国がアジアでの最重要パートナーである理由は、経済関係に寄るところが大きいと見てよい。もっとも2013年度をピークに大きな減少を示しており、「貿易・経済関係」がパートナー認識の理由として選ばない人が増えている様子がうかがえる。直近年度でも選択肢の中ではトップに変わりは無いのだが。

有識者においても一般人と大きな認識の違いは無い。グラフの動きがやや粗いのは、元々有識者数が少ないのに加え、それぞれの国と回答した人に限定されているからである。「技術力」は2013年度以降は複数回答形式にもかかわらず、大きく値を下げてしまっているのも注目に値すべき動きではある。

有識者においても一般人と大きな認識の違いは無い。グラフの動きがやや粗いのは、元々有識者数が少ないのに加え、それぞれの国と回答した人に限定されているからである。

↑ 「日本」と回答した理由(有識者、自由回答)
↑ 「日本」と回答した理由(有識者、自由回答)
↑ 「中国」と回答した理由(有識者、自由回答)
↑ 「中国」と回答した理由(有識者、自由回答)

有識者の認識において、日本に対しては2013年度にて「貿易・経済関係」の値が2倍以上に増加しており、日本に何を求めている・期待しているのか改めて認識できる(回答形式の変更も多分な要因だが)。

直近年度の2018年度調査結果で初めて公開された「他国に近い場所」は一般人でもそれなりの回答率を示しているが、具体的な国の例示はされていない。重要な、あるいは問題視される国々に近い場所にある、要石的な存在との解釈をすればよいのだろうか。「歴史・実績」の値が前年度から大きく上昇しているのは注目に値する。

他方中国では「貿易・経済関係」「国の特質(人口など)」が大きく上昇を示したものの、この数年で大きく失速している。それでもまだ高い値には違いないが、中国を推す有識者の認識に変化が生じていると解釈すればよいのだろう。

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※米国における対日世論調査

直近分は外務省がニールセン社に委託し、アメリカ合衆国内において2019年1月に実施されたもので、有効回答数は一般人1036人(インターネット経由。18歳以上)・有識者200人(電話によるインタビュー形式。政官財、学術、マスコミ、宗教、労働関係などで指導的立場にある人物)。過去の調査もほぼ同条件で実施されている。

(注)本文中のグラフや図表は特記事項の無い限り、記述されている資料からの引用、または資料を基に筆者が作成したものです。

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(注)グラフ中では体裁を整えるために項目などの表記(送り仮名など)を一部省略、変更している場合があります。また「~」を「-」と表現する場合があります。

(注)グラフ中の「ppt」とは%ポイントを意味します。

(注)「(大)震災」は特記や詳細表記の無い限り、東日本大震災を意味します。

(注)今記事は【ガベージニュース】に掲載した記事に一部加筆・変更をしたものです。

「グラフ化してみる」「さぐる」ジャーナブロガー 検証・解説者

ニュースサイト「ガベージニュース」管理人。3級ファイナンシャル・プランニング技能士(国家資格)。経済・社会情勢分野を中心に、官公庁発表情報をはじめ多彩な情報を多視点から俯瞰、グラフ化、さらには複数要件を組み合わせ・照らし合わせ、社会の鼓動を聴ける解説を行っています。過去の経歴を元に、軍事や歴史、携帯電話を中心としたデジタル系にも領域を広げることもあります。

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