有料動画配信は1980億円…映像ソフト市場の実情をさぐる(2019年公開版)

↑ 映像鑑賞は昔も今も楽しい娯楽の一つ。その媒体毎のセールスは。(写真:アフロ)

インターネットメディアの普及と回線の高速化、映像技術の進歩に配信サービスの加速的充実から、昨今では物理メディアにおけるエンタメ部門のセールスが思わしくないとの話がある。音楽業界、CD・DVD部門がその最たるものだが、映像ソフト(ビデオソフト、DVDやBD<ブルーレイディスク、以下同>、さらには有料動画)でも状況に大きな変わりは無い。今回は日本映像ソフト協会が2019年5月に発表した、日本の映像ソフト協会そのものやソフト関連の実地調査結果をまとめた白書「映像ソフト市場規模及びユーザー動向調査」の最新版から、日本の映像ソフト市場の実情を確認する。

まずは映像ビデオ市場の市場規模。「セル」は販売、「レンタル」は貸出を意味する。過去発表分のレポートの値も用い、確認できる経年データ(2005年以降)を見る限り、全般的にはセル・レンタルともに市場規模は縮小する傾向にある。

↑ 映像ソフト市場規模(億円)
↑ 映像ソフト市場規模(億円)

特に2008年以降の急落ぶりは音楽CDの売れ行きとおおよそ似ており、非常に興味深い。メディア環境の変質は音楽メディアと映像メディア双方に、ほぼ同じタイミングで生じたことが分かる。見方を変えればメディアそのものの変質が状況変化の主要因であり、コンテンツの種類はさほど関係が無い。

↑ 音楽ソフト・音楽配信の売上(億円)(日本レコード協会公開資料から筆者作成)
↑ 音楽ソフト・音楽配信の売上(億円)(日本レコード協会公開資料から筆者作成)

エンタメ系メディアは直近においては、2007年から2008年が大きなターニングポイントと見て問題はなさそう。コンテンツの質や方向性では無く、鑑賞媒体・ツールなどの周辺環境変化が、市場に大きな影響を与えていることになる。

2013年分からは緑色の部分、有料動画配信の市場推計値が追加されている。これは2012年までがゼロで推移していたのでは無く、単に今件調査結果で対象としていなかったまでの話。具体的には「定額見放題サービス」「都度課金サービス」「有料動画購入サービス」などが該当する。さらに2015年からはこれまで計上されていなかったWOWOWやスカパー!のような有料放送局による自社放送番組の再配信、ポータルサイトの有料付随サービス、動画配信サービスの有料プレミアムなども該当するものとして数字に含まれている。2015年の有料動画配信市場における前年からの躍進ぶりは、一部にこの定義変更によるところがある。ただし2016年以降は定義の変更が無いにもかかわらず値は上乗せされており、有料動画配信市場は拡大フェイズにあるとの現実に変わりは無い。

また有料動画配信市場は2013年分からのカウントだが、2012年以前の数年間は、セル市場+レンタル市場+有料動画配信市場の合計額、つまり広義の意味での映像ビデオ市場は、大きな変化が無かった可能性が高い。他方物理メディア市場(DVDやBDを対象としたセル市場とレンタル市場)の規模に限れば、縮小の動きを示していることに違いは無い(2018年は3648億円、前年比マイナス1.5%)。

映像ソフト市場のうち物理メディアによるビデオソフト市場は、セル市場もレンタル市場も、そして双方の合計でも縮小の一途をたどっている。そしてそのうちの少なからずは、動画配信に利用者がシフトしたものと考えられるが、その際に市場に支払われる対価が減少し、市場全体も縮小している感があった。しかしながら2014年以降はおおよそ有料動画配信市場が全体を大きく補完し、躍進に転じさせている。特に直近の2018年では有料動画配信市場がはじめてレンタル市場を超える形となった。恐らくは次年の2019年ではセル市場も超えることになるだろう。

有料動画配信「市場」は直近の2018年時点では1980億円。そのうちのどれほどが「元々レンタルもセルも目に留めていなかった人が利用した、新規の掘り起こし的な需要」なのか、「セル市場やレンタル市場からのシフト組」なのかは判断する材料が無いが、後者の場合は該当する人数が同じでも、市場に投下される金額は随分と縮小する。現状ではむしろ新たな市場を作っているようであるのが幸いだが。

今後金額面での市場規模がいかなる変化を見せていくのか。大いに注目したいところではある。

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