自国の民主主義への満足度は学歴で違いが生じる国もある
民主主義体制の国で、当事国の国民はどれほどまでに民主主義の実情に満足しているのだろうか。その実情の学歴別動向に関して、アメリカ合衆国の民間調査会社Pew Research Centerが2019年4月に発表した報告書「Many Across the Globe Are Dissatisfied With How Democracy Is Working」(※)から確認すると、少なからぬ国において有意な差が生じていることが明らかになった。
今調査対象母集団では全体として自国の民主主義の実情に満足している人は45%、不満足な人は51%となった。南米では低め、アジアでは高めの値が出ている。欧米では国によって大きな差が生じている。
それではこの実情は回答者の学歴によって違いがあるのだろうか。各国ごとに回答者の学歴で二分し、個々の結果を見た上で有意な差が出ている国を抽出したのが次のグラフ。
興味深いことに新興国と先進国では学歴における傾向が逆となる結果が出ている。新興国では高学歴の方が自国の民主主義に満足していない人の割合は多く、先進国では低学歴の方が満足していない人の割合は多い。
この傾向について報告書では直接の解説はしていない。新興国では元々民主主義が十分に浸透していないため、高学歴の人ほどその実情を把握しやすくなるので満足していない人の割合が多くなる、先進国では十分に浸透しているために高学歴ほど実情を把握して理解し、満足していない人が少なくなるからだろうか。つまり高学歴ほど自国の実情を認識しやすいという次第ではある。
なお関連事項として報告書では、具体的な国の動向はあげていないものの、新興国では高所得者の方が、先進国では低所得者の方が、自国の民主主義に満足していない人の割合が多くなると説明している。低所得の方が生活への不満を持ち、自国の民主主義が上手く機能していないから自分達が貧しくなると考えていると仮定すれば、先進国の実情は理解できる。しかし新興国の動きは説明が難しい。学歴と所得は連動しやすい傾向があるため、新興国の高所得者は高学歴でもあることから、実情をよく認識でき、それゆえに満足できないのかもしれない。
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※Many Across the Globe Are Dissatisfied With How Democracy Is Working
おおよその国では2018年3月から5月にかけてRDD方式で選出された18歳以上の1000人前後の人に対し、電話経由によるインタビュー形式で行われたもので、それぞれの国の国勢調査の結果に基づき男女別、年齢、教育、地域などの属性によるウェイトバックが実施されている。一部の国では対面方式による調査方法が用いられている。
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