主要テレビ局の複数年にわたる視聴率推移をさぐる(2019年5月公開版)

↑ テレビ(局)の成績表ともいえる視聴率。その推移は?(写真:アフロ)

HUTの意味とその推移

テレビ局の番組や局のメディア力のすう勢を推し量るのに、一番明確な指標が視聴率。キー局などにおける複数年の視聴率の移り変わりを確認する。

具体的には先行記事【フジ・テレ朝が上昇…主要テレビ局の直近視聴率をさぐる(2019年3月期下半期・通期)】で行った手法と同じように、TBSホールディングス・決算説明会資料集ページに掲載されている各年の決算短信資料を確認し、主要局(キー局とNHK)の視聴率を抽出、各種精査を行う(他局の決算短信資料で補完や確認も併せて行っている)。直近分は2018年度(2018年4月~2019年3月)・通期。

まずはHUTの推移を確認する。この「HUT」とはテレビの総世帯視聴率(Households Using Television、テレビをつけている世帯)を意味する言葉で、具体的には調査対象となる世帯のうち、どれほどの比率の世帯がテレビ放送をリアルタイムで視聴しているかを示す値(チャンネル別の区分は無い)。

これには録画した番組の再生、家庭用ゲーム機でテレビ画面を使っている場合は該当しない。またパソコンやスマートフォンなどによるワンセグの放送視聴も当てはまらない。ただしインターネットテレビによるテレビ番組の視聴は該当する。

HUTの値として確認できるのは、ゴールデンタイム(19~22時)、全日(6~24時)、プライムタイム(19~23時)の3種類。そのうち一番視聴率が高く、変移が見やすいゴールデンタイムのもの、そして包括的な意味を持つ全日のグラフ、合わせて2つを併記し、状況を確認する。

↑ HUT(ゴールデンタイム)
↑ HUT(ゴールデンタイム)
↑ HUT(全日)
↑ HUT(全日)

かつてはゴールデンタイムで70%を超えていたHUTも、直近データでは約60%にまで落ち込んでいる。1997年度下半期の71.2%をピークに、多少の上下はあれど、全体的には下降の一途をたどっている。また、年末年始は特番が多く放映される、正月休みで自宅待機率が高まることを受けてテレビ視聴率が上昇するため、毎年「上期より下期の方が高い」傾向があり、結果としてギサギザの形を示す。

中期的には全日・ゴールデンタイムともにHUTは落ちているが、2010年前後からは(特にゴールデンタイムでは)横ばいの動きに転じていた。さらに2013年度に入ると、明らかに底打ち感から反転の兆し、トレンド転換の動きが明確化した。同時期に電通・博報堂や経済産業省による月次の記事を展開している広告費動向において、テレビ広告費の動向も似たような動きを示していたことから、テレビの復調感を覚えさせる流れではあった。

ところが2014年度上期以降、再び下落基調に転じる。直近の2018年度下期では、下期にあるはずの年末年始の特番によるボーナス的な上昇も起きず、直前の2018年度上期よりも低い値となってしまっている。特に全日による下げ幅は0.8%ポイントと著しいものに。

2016年10月からはタイムシフト視聴率の調査が実施され、タイムシフト視聴率や統合視聴率が試験的に一部ではあるが公開されている。しかしながら各報告書の言及や他の公開状況の限りでは、HUTはリアルタイム視聴率のまま。HUTの下落もあるいは、タイムシフト視聴をしている人が増えているのが一因かもしれない。

主要キー局などの視聴率動向

次に各局の視聴率について。年度ベースにおける2008年度から2018年度までの主要局のゴールデンタイムにおける視聴率の推移をグラフとして生成した。なお類似データとして全日・プライムタイムのものもあるが、大局的に違いは無いので、別途生成はしない。また併記している折れ線グラフは取得可能な全期の動向を対象としている。

↑ 主要局年度視聴率(ゴールデンタイム、年度ベース)
↑ 主要局年度視聴率(ゴールデンタイム、年度ベース)
↑ 主要局年度視聴率(ゴールデンタイム、年度ベース)(2004年度以降)
↑ 主要局年度視聴率(ゴールデンタイム、年度ベース)(2004年度以降)

この数年の動向として、「テレビ東京の下落」「フジテレビの凋落」「NHKの下落」「TBSの不調から横ばい、復調へ」「テレビ朝日の復調から失速、転落」が確認できる。TBSは9年ほど前に急落を見せた後に横ばい傾向へと移行し、その後はじわりと復調中。

NHK・フジテレビは双方とも8、9年間ほぼ継続して下落。特にフジテレビでは2012年度に1.6%ポイントもの大きな下落を示した。NHKは2016年度で回復に転じたが、その直後に再び下落。「真田丸」などによる底上げはイレギュラー的な動きでしかなかったようだ。フジテレビの下げはようやく底打ちから反転への気配を見せているが、まだ確定した動きなのか、安心できる状況には無い。またテレビ朝日も直近年度は大きく盛り返しているが、これが底打ち反転の動きとなるか、それとも単なるイレギュラーなものなのかは、フジテレビ同様に次年度以降の動きを見ないと判断は難しい。

各局の視聴率動向、主に下方基調がこの1、2年の短期的なものの動きでは無く、中期的な流れに沿ったものであることが、今件データからは確認できる。単発的に勢いをつけるコンテンツもこの時期には多数展開されたはずだが、それでもなお、下落の流れを変えるまでには至らなかった。

もちろん、かつて社会現象化するほどの好評を博した、TBSの「半沢直樹」のようなスター的存在が局全体の雰囲気を変える可能性も秘めている。この「スターコンテンツが複数、定期的に登場すれば、全体の流れは容易に変わりうる」状況は、かつてのテレビ局の状況そのもの。また媒体は異なるものの昨今の雑誌業界、具体的には「進撃の巨人」や「妖怪ウォッチ」「おそ松さん」で大きく飛躍した雑誌が複数存在している状況にも当てはまる。

各局の中期的な視聴率動向が、今後どのような動きを示していくのか。テレビ全体の視聴動向、HUTにも深く関連する話なだけに、大いに気になるところではある。

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