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「定年まで・定年後もこの会社に勤めたい」新社会人でも3割強(2019年版)

不破雷蔵「グラフ化してみる」「さぐる」ジャーナブロガー 検証・解説者
↑ 仕事への不満や失望から継続就業の気持ちも薄らぐ?(写真:アフロ)

日本の終身雇用制度的慣習も薄れつつあるとはいえ、正規・非正規雇用問題や社会保障の観点も併せると、多くの就業者は自ら門戸を叩いた会社に長年勤めたいと考えている。一方、就業してからの会社の実態を知るに連れ、長期間の就業は難しい、転職や転業を考えたいとする人も多い。今回はソニー生命保険が2019年4月に公開した、新社会人に対する意識調査結果「社会人1年目と2年目の意識調査2019」(※)を基に、新社会人と、就業してから1年が経過した準新社会人における、就業した会社への就業希望年数を確認する。

腰掛け的に転職を前提として入社をした人なら別だが、多くの人は新社会人として企業などに入社を果たし、長きにわたり就業を続けたいと考えている、はず。今調査対象母集団のうち新社会人(社会人1年生)に、最初に就職した会社でどれくらいの期間働きたいかを聞いた結果が次のグラフ。意外にも定年まで・定年後も働きたいとする人は3割強に留まっていた。

↑ 最初に就職した会社でどのぐらいの間働きたいと思うか(単一回答、社会人1年生)(2019年)
↑ 最初に就職した会社でどのぐらいの間働きたいと思うか(単一回答、社会人1年生)(2019年)

ボリュームゾーンは2~10年で、合わせて44.4%。回答者はその多勢が20代前半のはずだから(社会人1年生。一応調査対象は20代なので、中には20代後半の人もいるだろうが)、定年退職までの期間が間近にひかえているので継続就業希望期間が短くなるとの話でも無い。企業に対する忠誠心、就業し続けたい思いはさほど強くは無いようだ。さらに入社直前(質問をしたのは3月15~22日)の時点で、すでに9.0%の人が「すでに辞めたいと考えている」と答えている。何か色々と複雑な事情があるのだろうが、就業を果たせない人から見れば「もったいない」との言葉しか浮かんでこないに違いない。

これが就業してから1年が経過した、社会人2年生となると、大きく心境は変化する。

↑ 最初に就職した会社でどのぐらいの間働きたいと思うか(単一回答、社会人2年生)(2019年)
↑ 最初に就職した会社でどのぐらいの間働きたいと思うか(単一回答、社会人2年生)(2019年)

まず「定年まで・定年後も働きたい」とする意見が2割近くにまで減少する。そして「すでに辞めたいと考えている」との意見が27.4%と大きな増加を示し、辞めたい意欲が強まっているのが分かる。最初の「1年生」と同一人物による回答では無いので誤差が生じている可能性はあるが、1年間の就業の中で、転職(少なくとも現在勤めている企業からの離職)の思いをより強く抱かせる事柄が少なからず生じたのだろう。とりわけ、どこまで本気なのか否かはともかく、1年の就業で「この会社は今すぐにでも辞めたい」と考えている人が4人に1人以上は存在している。

ちなみに上記2つのグラフの値を比較することで、1年の就業期間に生じた継続就業意欲の変化を推し量ることができる。

↑ 最初に就職した会社でどのぐらいの間働きたいと思うか(単一回答、社会人1年生から2年生への変移、ppt)(2019年)
↑ 最初に就職した会社でどのぐらいの間働きたいと思うか(単一回答、社会人1年生から2年生への変移、ppt)(2019年)

「すでに辞めたい」とする意見が大幅増加し、「定年まで」で大きな減少が生じている。年単位での就業希望者の回答率変化は誤差程度であまり変化無し。ただし「1年くらい」「2~3年くらい」が増加し、「4~5年くらい」以降の長期期間のほとんどが減少していることから、辞めたい気持ちが強まっていることが見て取れる。特に「1年くらい」「2~3年くらい」は心境的には「すでに辞めたい」と同じようなものと解釈することもでき、それらを合わせると26.0%もの人が1年間の就業の中で「早く今の会社を辞めたい」と考えるようになったと読むこともできる。

今件は新社会人にスポットライトをあてた調査で、社会人1年生と2年生に限定されているが、仮に3年生、4年生…と就業継続年数を重ねて再調査をした場合、どのような値の変動を示すのだろうか。結婚やマイホーム購入など就業継続にかかわる要素が加わるため、一概に比較することは難しいが、興味深いテーマではある。

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※社会人1年目と2年目の意識調査2019

2019年3月15日から3月22日にかけて、「今春就職した社会人1年生」「就職してから1年経過した社会人2年生」(いずれも20代)に対してインターネット調査形式で行われたもので、有効回答数はそれぞれ500人。男女比はそれぞれ1対1。調査協力会社はネットエイジア。過去の調査もほぼ同様の条件で実施されている。

(注)本文中のグラフや図表は特記事項の無い限り、記述されている資料からの引用、または資料を基に筆者が作成したものです。

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(注)今記事は【ガベージニュース】に掲載した記事に一部加筆・変更をしたものです。

「グラフ化してみる」「さぐる」ジャーナブロガー 検証・解説者

ニュースサイト「ガベージニュース」管理人。3級ファイナンシャル・プランニング技能士(国家資格)。経済・社会情勢分野を中心に、官公庁発表情報をはじめ多彩な情報を多視点から俯瞰、グラフ化、さらには複数要件を組み合わせ・照らし合わせ、社会の鼓動を聴ける解説を行っています。過去の経歴を元に、軍事や歴史、携帯電話を中心としたデジタル系にも領域を広げることもあります。

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