非正規社員の人達はなぜ非正規として働いているのだろうか(2019年公開版)

↑ 数ある選択肢の中で非正規の立場を選んだ理由は。(写真:アフロ)

「正規の仕事につけなくて仕方なく」は男性2割強、女性1割近く

労働問題で取り上げられることが多い非正規社員(職員・従業員)問題。当事者はいかなる理由で非正規として就労しているのだろうか。総務省統計局が2019年2月に発表した、2018年分の労働力調査(詳細集計)の速報結果を基に確認する。

労働力調査によると2018年における非正規社員は2120万人。これは前年比で84万人の増加となる。雇用者全体(5605万人、役員除く)に占める比率は37.9%。これら非正規社員の人達に、なぜ現職(非正規の立場)についているのか、その主な理由を聞いた結果が次の図。男女それぞれの回答者に占める比率と、回答実数をグラフ化する。

↑ 現職の雇用形態についた主な理由(非正規職員・従業員、理由明確者限定、男女別、比率)(2018年)
↑ 現職の雇用形態についた主な理由(非正規職員・従業員、理由明確者限定、男女別、比率)(2018年)
↑ 現職の雇用形態についた主な理由(非正規職員・従業員、男女別、万人)(2018年)
↑ 現職の雇用形態についた主な理由(非正規職員・従業員、男女別、万人)(2018年)
↑ 現職の雇用形態についた主な理由(非正規職員・従業員、積み上げ式グラフ、男女別、万人)(2018年)
↑ 現職の雇用形態についた主な理由(非正規職員・従業員、積み上げ式グラフ、男女別、万人)(2018年)

男女別の全体比率で見ると男性では「正規社員としての仕事が無い」よりも「自分の都合のよい時間に働きたい」の方が値は大きく、差異は7.1%ポイント。前者は非正規雇用問題でよく問題視される「正規雇用の椅子が減らされ、その分非正規雇用の椅子が増やされるので、そちらの椅子に座らざるを得なくなる」との指摘に該当する事例だが、男性においては2割強が同意を示すことになる。他方後者の「自分の都合のよい時間に働きたい」をはじめ、「家計の補助・学費などを得たい」「専門的な技術などを活かせる」とするポジティブ、自発的な意見が続く。

女性は男性同様に「自分の都合のよい時間に働きたい」がもっとも多く、「家計の補助・学費などを得たい」が続く。いずれも兼業主婦のパート・アルバイトでよくありがちな理由。男性では第2位となった、ネガティブな理由「正規社員としての仕事が無い」は1割足らずでしか無い。

これを人数別に見ると合計では、男性と女性を比較すると女性の方が非正規社員は多いこともあり、「自分の都合のよい時間に働きたい」が群を抜いて最上位に、次いで「家計の補助・学費などを得たい」が続き、「正規社員としての仕事が無い」は第3位の理由に落ち着く。ちなみに「正規社員としての仕事が無い」は合計で256万人となるが、これは非正規社員全体(2120万人)の12.1%に留まることになる。

非正規社員だけど転職したい、辞めたい人はどれほどいるのか

どのような職に就いている人でも、その職を離れたい、転職したいと考える人は存在する。ましてやネガティブな理由で現職にいる人は、できることなら転職し、他の環境で働きたいと願う気持ちが多分にあると考えられる。そこで非正規社員の立場の人に、現職についた主な理由別に「転職などをしてみたい?」と聞いた結果が次のグラフ。「など」とあるのは現職を辞して他の職につく他に、再就職はしたくない人も含まれているため。要は今の職を辞めたい人。

なお全体では2120万人のうち転職などの希望者は423万人(20.0%)、2割との結果となっている。

↑ 転職などの希望者率(非正規職員・従業員、現職の雇用形態についた主な理由別)(2018年)
↑ 転職などの希望者率(非正規職員・従業員、現職の雇用形態についた主な理由別)(2018年)

主に自分の都合で非正規社員になった人でも「転職したい」と考えている人は1割から2割ほどいる(男性で「家事・育児・介護などと両立しやすい」で28.6%の値が出ているのは、元値が小さく統計上のぶれが生じているため。実数としては7万人のうち2万人が対象)。しかしながらネガティブな、正規社員を望んだものの願わずしての結果として非正規社員の座についている人は、4割強が転職なり退職を望んでいる。他の理由で現職に就いている人よりも、転職への思いも強いに違いない。

今件は非正規社員問題に世間の注目が集まる状況を受け、2013年分から新設された調査項目。少なくとも現状においては、「非正規社員の男性2割強、女性1割近くは『正規社員になりたかったがなれず、仕方なく』非正規社員として働いている」「正規社員として働きたかったけどかなわず、非正規社員の立場にある人の4割強は転職、少なくとも離職を望んでいる」との現状は、認識しておくべきだろう。

一方で「正規社員の仕事が無い」とする理由については、単に「正規社員としての受け皿が少ない」のみと判断するのは早計。完全失業者などの失業理由でも、多分に雇用する側とのミスマッチが指摘されている以上、非正規社員の「正規社員の仕事が無い」とする意見においても、類似の傾向があるものと考えた方が道理は通る。

本当に「正規社員としての受け皿縮小が、正規社員を望んでいた非正規社員の増加につながっている」のか否か、そして事実ならばどれ程までに影響を及ぼしているのか、今後複数の視点から検証する必要があろう。

なお「他の理由で現職に就いている人よりも、転職への思いも強いに違いない」だが、実際に公開値から試算すると、その通りの結果が出る。次に示すのは非正規社員における現職の雇用形態についた主な理由に区分した上での、現職を離職をしたいか否かに関して、離職した後に他の職につきたいか(希望・求職)、単に離職するだけで再就職は望まないか(希望・非求職)の実情。

↑ 離職の希望者率(非正規職員・従業員、男性、現職の雇用形態についた主な理由別・離職後求職したいか否か別)(2018年)
↑ 離職の希望者率(非正規職員・従業員、男性、現職の雇用形態についた主な理由別・離職後求職したいか否か別)(2018年)
↑ 離職の希望者率(非正規職員・従業員、女性、現職の雇用形態についた主な理由別・離職後求職したいか否か別)(2018年)
↑ 離職の希望者率(非正規職員・従業員、女性、現職の雇用形態についた主な理由別・離職後求職したいか否か別)(2018年)

男性ではおおよそ離職したい人の半数が再就職を望んでいるが、女性では大体が3割前後しかいない。他方「正規の職員・従業員の仕事が無い」では男女ともに離職したい人が多いだけでなく、そのうち転職を望む人の全体比も離職希望者全体に占める割合も大きい。男性では「正規の職員・従業員の仕事が無い」との理由で非正規社員の立場にある人の約2割が転職したいと考えている。離職したい人の内情が透けて見えるようではある。

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