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アメリカ合衆国では6割強が「政治的な思惑が異なる相手と話しても共通点を見出すのは難しい」と考えている

不破雷蔵「グラフ化してみる」「さぐる」ジャーナブロガー 検証・解説者
↑ 政治的思惑が異なる人との間に共通点は見出せるだろうか。(写真:アフロ)

政治的思惑は宗教的な方向性があり、物理的・論理的事実を覆してでも信奉をしてしまうこともある。アメリカ合衆国における政治的思惑の違いやイデオロギーによる対立構造の実情を、同国の民間調査会社Pew Research Centerが2018年11月に発表した調査報告書「More Now Say It’s ‘Stressful’ to Discuss Politics With People They Disagree With」(※)を基に確認する。

今調査の限りでは、アメリカ合衆国内においては民主党支持者の方が共和党支持者よりも、政治面で同意できない意見を持つ人との政治的な会話で、ストレスを感じる人が多く、さらに民主党支持者の中でもリベラル的なイデオロギーを持つ人のストレス感は強い傾向がある。

↑ 政治面で同意できない意見を持つ人との間で政治的な会話をした時に通常抱く感情(アメリカ合衆国、支持政党別・イデオロギー別)(2018年10月)
↑ 政治面で同意できない意見を持つ人との間で政治的な会話をした時に通常抱く感情(アメリカ合衆国、支持政党別・イデオロギー別)(2018年10月)

それでは政治面で同意できない意見を持つ人との間における政治的な会話をした際に、相手に政治的な共通点があるとの認識はどのような実情だろうか。つまり政治面で理解し合える相手であると認識できるか否か、その度合いである。

↑ 政治面で同意できない意見を持つ人との間で政治的な会話をした時に通常抱く感情(アメリカ合衆国、相手との間の政治的な共通点について、支持政党別・イデオロギー別)(2018年10月)
↑ 政治面で同意できない意見を持つ人との間で政治的な会話をした時に通常抱く感情(アメリカ合衆国、相手との間の政治的な共通点について、支持政党別・イデオロギー別)(2018年10月)

元々政治面で同意できない≒対立している考えを持つ人との会話なのだから、共通点を見出すのは難しいことは容易に想像ができるが、それでも何らかの同意できる点を見出して融和を模索し、建設的な会話をすることはできるはず。しかしながら実情では、思っていたよりも相手との間における政治的共通点は少なかったとの感想を抱く人が多いようだ。全体では63%の人が、思っていたより相手との間における政治的共通点が少ないと認識している。

報告書でも言及されているが、属性別における差異はほとんど生じていない。かろうじて民主党支持者のリベラル的なイデオロギーを持つ人の「政治的共通点が少ない」との認識の値が高い程度。この属性は一つ目のグラフにある通り、政治面で同意できない意見を持つ人との間での政治的な会話で強いストレスを感じる結果が出ており、共通点が見出しにくいことが、ストレスにつながっている可能性がある。

もちろんそれぞれの属性の考え方が正しいか否かはまた別の話。ただ、この類の主張に関しては、誰もが皆、自分の考えが正しいと考えているのもまた事実。宗教間の対立のようなものであり、実情が確認できたところで、それを解消することは極めて難しい話ではある。解消する必要は無いのかもしれないが。

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※More Now Say It's ‘Stressful’ to Discuss Politics With People They Disagree With

直近分は2018年9月24日から10月7日にかけてアメリカ合衆国内に住む18歳以上の人に対してインターネット経由で実施されたもので、有効回答数は10683件。回答者は居住地に基づいたランダムな選別が行われ、該当者には手紙で確認を取り、インターネット環境が無い人には電話で確認を取り了承があった場合はインターネットへのアクセスができるよう、タブレット型端末が送付されている。以前の調査も同様の方法が用いられている。

(注)本文中のグラフや図表は特記事項の無い限り、記述されている資料からの引用、または資料を基に筆者が作成したものです。

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(注)グラフ中の「ppt」とは%ポイントを意味します。

(注)「(大)震災」は特記や詳細表記の無い限り、東日本大震災を意味します。

(注)今記事は【ガベージニュース】に掲載した記事に一部加筆・変更をしたものです。

「グラフ化してみる」「さぐる」ジャーナブロガー 検証・解説者

ニュースサイト「ガベージニュース」管理人。3級ファイナンシャル・プランニング技能士(国家資格)。経済・社会情勢分野を中心に、官公庁発表情報をはじめ多彩な情報を多視点から俯瞰、グラフ化、さらには複数要件を組み合わせ・照らし合わせ、社会の鼓動を聴ける解説を行っています。過去の経歴を元に、軍事や歴史、携帯電話を中心としたデジタル系にも領域を広げることもあります。

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