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アジア太平洋地域の平和と安定のため米国は日本にどれほど期待しているのか(2018年12月発表版)

不破雷蔵「グラフ化してみる」「さぐる」ジャーナブロガー 検証・解説者
↑ アジア太平洋地域の平和と安定のため米国が日本に求める姿勢は。(GYRO PHOTOGRAPHY/アフロ)

中国の経済的発展と軍事的影響力の強化に連れ、アジア太平洋地域では今世紀に入ってから前世紀とは比べ物にならないほどに緊張が高まっている。情勢の変化に伴いアメリカ合衆国も憂慮の念を強めており、同地域の同盟国である日本への期待も並々ならぬものがある。今回は外務省が2018年12月に同省公式サイト内において発表した「米国における対日世論調査」(※)の結果から、その期待の一端を確認する。

まずは日本とアメリカ合衆国はアジア太平洋地域の平和と安定のために、緊密に協力すべきと思っているか否か。「安全」では無く「安定」であることに注意。つまり現状…厳密には昨今の騒乱的情勢が起きる以前の比較的安定した状況を継続させるため、日米が緊密に協力し、状況の改善を模索すべきか否か。これには直近年度では一般人で95%、有識者では99%の人が同意を示した。

↑ 日本とアメリカ合衆国はアジア太平洋地域の平和と安定のために緊密に協力すべきと考えるか(「はい」「いいえ」「分からない」のうち「はい」の回答率)
↑ 日本とアメリカ合衆国はアジア太平洋地域の平和と安定のために緊密に協力すべきと考えるか(「はい」「いいえ」「分からない」のうち「はい」の回答率)

今項目は2014年度から新設されたもので経年変化の動向は都合4年分のみ。昨今では緊張の度合いを増しているとの認識が強まり、新たに確認項目として付け加えられることとなったのだろう。いくぶん一般人の方が低めの値は出ているものの、双方とも9割以上の同意者で占められており、日本との緊密な協力体制を望んでいることが分かる。

それでは単なる協力姿勢だけで無く、これまで以上の施策などによる積極的な役割を、日本は果たすべきであるとアメリカ合衆国は考えているのだろうか。これについては単純な密接度の高い協力体制の確認と比べるとやや賛意者は減るものの、一般人で63%、有識者で87%の人が同意を示す結果となった。

↑ 日本はアジア太平洋地域の平和と安定のためにより積極的な役割を果たしていくべきと考えるか(「はい」「いいえ」「分からない」のうち「はい」の回答率)
↑ 日本はアジア太平洋地域の平和と安定のためにより積極的な役割を果たしていくべきと考えるか(「はい」「いいえ」「分からない」のうち「はい」の回答率)

やはりこちらの項目でも有識者の方が同意率は高い。「より積極的な役割」が何を意味するのかは調査結果からは分からないが、事態打開のための行動に関して、もっと前に出るべきだとの思惑であるとの認識で違いは無いだろう。

ただしそれが「現状ではひかえめだからもっと積極的に動いてもいいのだが」なのか、「アメリカ合衆国はこれ以上手出しできない(したく無い、係わりたく無い)ので、日本にもっと前に出てもらいアメリカ合衆国は後ろに下がるように」を意味するのか、今調査項目だけでは判断が難しい。また、そこまで深読みすること無く単純に、このままか積極姿勢かどちらかといえば後者の方が、程度の意味かもしれない。

なお2017年度では一般人の回答率が前年度比で17%ポイントも落ちている。内情としては「分からない」の回答率が8%から32%に急増している。また2017年度の調査では一般人でイレギュラー的な回答率の低下が複数の設問で確認されており、経年変化の動向精査には注意を要する状況となっている(対日本の設問だけでなく、他の国に対する回答でも同様の動きが生じている)。一般人の間で心境の急激な変化が生じたとの判断は早急に過ぎると見た方がよさそうだ。

ともあれアメリカ合衆国においては一般人も有識者も、アジア太平洋地域の平和と「安定」のため、日本との協力関係を維持強化しつつ、日本へは一層の積極姿勢を望んでいることは間違いなさそうではある。

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※米国における対日世論調査

直近分は外務省がニールセン社に委託し、アメリカ合衆国内において電話により2018年3月に実施されたもので、有効回答数は一般人1057人(18歳以上)・有識者200人(政官財、学術、マスコミ、宗教、労働関係などで指導的立場にある人物)。過去の調査もほぼ同条件で実施されている。

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(注)今記事は【ガベージニュース】に掲載した記事に一部加筆・変更をしたものです。

「グラフ化してみる」「さぐる」ジャーナブロガー 検証・解説者

ニュースサイト「ガベージニュース」管理人。3級ファイナンシャル・プランニング技能士(国家資格)。経済・社会情勢分野を中心に、官公庁発表情報をはじめ多彩な情報を多視点から俯瞰、グラフ化、さらには複数要件を組み合わせ・照らし合わせ、社会の鼓動を聴ける解説を行っています。過去の経歴を元に、軍事や歴史、携帯電話を中心としたデジタル系にも領域を広げることもあります。

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