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小中学生の長期欠席者数の実情をさぐる(2018年12月発表版)

不破雷蔵「グラフ化してみる」「さぐる」ジャーナブロガー 検証・解説者
↑ 病気などで長期欠席の場合も。(ペイレスイメージズ/アフロ)

多くの子供にとって学校は楽しい場所であり、日常生活の多分を占める居場所でもある。しかし病気やケガ、家庭内の事情で休まねばならない場合も生じてくる。また中にはさまざまな理由で通学そのものを望まず、長期にわたり欠席してしまう子供もいる。今回は多様な理由で長期にわたって学校(小中学校)を休んでしまう子供の状況、「理由別長期欠席児童生徒数」の推移を、文部科学省の「学校基本調査」や「児童生徒の問題行動等生徒指導上の諸問題に関する調査」の報告書から精査する。

公開データには長期間欠席した児童数が記載されているが、その理由として「病気」「経済的理由」「不登校(以前は「学校ぎらい」の名称だった)」「その他」と大別されている。また、大元の公開値では1959年以降の値が収録されているが、「長期欠席」の定義が1991年以降「通算30日以上欠席」に改められているため(それまでは50日以上)、その前後で明確には連続性は無い。そこで1991年以降のものについて時系列的にデータを取得し、グラフ化を行う。

まずは最新のものとして収録されている2017年度分について。なお全児童・生徒比では計算結果の表記上0.00%と表記されている項目もあるが(少数第二位までの表記)、具体的人数のグラフに表記している通り、人数がゼロでは無いので厳密にはゼロ%では無い。

↑ 小中学生の長期欠席者数(2017年度)
↑ 小中学生の長期欠席者数(2017年度)
↑ 小中学生の長期欠席者数(全児童・生徒比)(2017年度)
↑ 小中学生の長期欠席者数(全児童・生徒比)(2017年度)

中学生の長期欠席者、特に不登校率が高いのが気になる。3.25%といえば、30人学級なら大体1人は不登校者がいる計算。小学生では比率としては少ないものの、絶対数となると3万人以上の不登校者が確認できる。

前年度と比較すると他要因は増減さまざまだが、不登校は小中学生ともに増加しており、これが全体数を底上げする形となっている。また、既存の区切りでは当てはまらない「その他」の理由で長期欠席をしている例も急激に増加している。報告書の説明にはこの「その他」に該当する者は

上記「病気」「経済的理由」「不登校」のいずれにも該当しない理由により長期欠席した者。

・「その他」の具体例

 ア 保護者の教育に関する考え方、無理解・無関心、家族の介護、家事手伝いなどの家庭の事情から長期欠席している者

イ 外国での長期滞在、国内・外への旅行のため、長期欠席している者

ウ 連絡先が不明なまま長期欠席している者

エ 欠席理由が二つ以上あり(例えば「病気」と「不登校」)、主たる理由が特定できない者

とある(該当者が小中学生であることに注意)。「不登校」の要素を含んでいる事例は「その他」総数のうち小学校で2割強、中学校では4割近くに達しており、長期欠席の問題が単純な区分では難しい現状を再確認できる。

続いてこれを「長期欠席」の定義変更後の1991年度以降について、その推移を折れ線グラフにしたのが次の図。

↑ 長期欠席児童数(30日以上欠席、小学生)
↑ 長期欠席児童数(30日以上欠席、小学生)
↑ 長期欠席生徒数(30日以上欠席、中学生)
↑ 長期欠席生徒数(30日以上欠席、中学生)

小学校は病気による長期欠席者が多かったものの、2000年度前後から少しずつ減少。一方で不登校者数には大きな変わりは無く、結果として両者の順位が入れ替わっている。中学校も2000年前後から病気による長期欠席者は少しずつ減り、小学生とほぼ同じタイミングで不登校者は増加し、その後横ばい。ただし病気を理由とする者との差は大きく開いている。またこの数年に限ると小中学生ともに、不登校を理由とする長期欠席者が跳ねる形で増加している、そして小学生では「その他」の理由による長期欠席者は前世紀末頃から増えているのが、グラフの上からも確認できる。

確認のため「生徒絶対数」では無く、「各年の児童生徒数全体に占める比率」を算出してグラフ化したが、増減の傾向に違いは無かった。つまり児童生徒数そのものの変化で、欠席者数が急増したわけでは無いことが分かる。

↑ 長期欠席児童数(30日以上欠席、小学生、小学校児童数に占める比率)
↑ 長期欠席児童数(30日以上欠席、小学生、小学校児童数に占める比率)
↑ 長期欠席生徒数(30日以上欠席、中学生)(中学校生徒数に占める比率)
↑ 長期欠席生徒数(30日以上欠席、中学生)(中学校生徒数に占める比率)

病気や経済的理由はともかくいわゆる「不登校」について、2000年前後をピークとし増加に歯止めがかかっている、むしろ少しずつ減っていたのは幸い。それゆえに、2013年度以降の有意な上昇は大いに気にかかるところではある。ただし「不登校」の解説には

何らかの心理的、情緒的、身体的、あるいは社会的要因・背景により、児童生徒が登校しないあるいはしたくともできない状況にある者(ただし、「病気」や「経済的理由」による者を除く)をいう。

とあり、「その他」の増加と併せ、子供の事情も以前より複雑な状況が生じているのかもしれない。あるいは社会的に、しかるべき事情が存在する場合には不登校を容認する雰囲気が形成されつつあるのだろうか。

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「グラフ化してみる」「さぐる」ジャーナブロガー 検証・解説者

ニュースサイト「ガベージニュース」管理人。3級ファイナンシャル・プランニング技能士(国家資格)。経済・社会情勢分野を中心に、官公庁発表情報をはじめ多彩な情報を多視点から俯瞰、グラフ化、さらには複数要件を組み合わせ・照らし合わせ、社会の鼓動を聴ける解説を行っています。過去の経歴を元に、軍事や歴史、携帯電話を中心としたデジタル系にも領域を広げることもあります。

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