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学生のみ減少の気配…賃貸住宅管理会社への来客層の変化をさぐる(2018年12月発表版)

不破雷蔵「グラフ化してみる」「さぐる」ジャーナブロガー 検証・解説者
↑ 物件を紹介中の賃貸住宅管理会社の人達。(写真:アフロ)

賃貸住宅の物件を探しに管理会社に来客した人達は増えているのか減っているのか。賃貸住宅の需給を推し量れる来客の実情を、賃貸住宅管理会社による協会「日本賃貸住宅管理協会」の調査「賃貸住宅市場景況感調査(日管協短観)」(※)から確認する。

賃貸住宅を管理する会社に来たお客の属性を「学生」「一般単身(学生除く)」「一般ファミリー」「高齢者(65歳以上)」「法人」「外国人」に大別。その上で、それぞれの来客数(直接来店した人の数)の「前年同期」(今件ならば2017年4~9月)と比べた変化を尋ねた結果が次のグラフ。「学生」は「減少」が「増加」を上回る、つまり全体的には客足が遠のいてしまっている。それ以外の属性は「増加」が「減少」を上回る、つまり客足が伸びている状況が確認できる。

↑ 賃貸住宅管理会社に対する来客数の変化(前年同期比)(2018年4~9月)
↑ 賃貸住宅管理会社に対する来客数の変化(前年同期比)(2018年4~9月)

増加(緑)よりも減少(オレンジ)が多いのは「学生」のみだが、「高齢者」「外国人」は増加が4割を超えているのに対し減少が1割にも届いていない、「一般ファミリー」は増えた派が1/4を超えているが減った派も1割を超えているなど、それぞれの属性における来客数の動向がかいま見られる形となっている。

傾向がより分かりやすいように、DI値(「増加」マイナス「減少」)を算出した結果が次のグラフ。よい機会でもあるので全国の平均以外に、首都圏、関西圏、首都圏・関西圏以外の地域それぞれにおけるDI値を算出し、併記する。それぞれの地域別の特性が見えてくる。

↑ 賃貸住宅管理会社に対する来客数の変化・DI値(前年同期比、増加-減少、属性別)(2018年4~9月)
↑ 賃貸住宅管理会社に対する来客数の変化・DI値(前年同期比、増加-減少、属性別)(2018年4~9月)
↑ 賃貸住宅管理会社に対する来客数の変化・DI値(前年同期比、増加-減少、属性別・地域別)(2018年4~9月)
↑ 賃貸住宅管理会社に対する来客数の変化・DI値(前年同期比、増加-減少、属性別・地域別)(2018年4~9月)

「学生」はマイナスを示し、この層の賃貸住宅への需要が減少していることが分かる。ただしそれが学生そのものの人数の減少によるものなのか、学生が賃貸住宅を用いて通学せずに実家通いの傾向を強めているからなのかまでは分からない。

「学生」はここしばらくDI値でマイナスを示すことが多い(グラフ化は略)。来店する時間的余裕が無い、IT化が進み来店する必要性が無いと判断した結果、来客数としてカウントされる機会が生じないのかもしれない。

それ以外はすべてプラス。「一般単身(学生除く)」「法人」は2割を超え、「高齢者(65歳以上)」「外国人」は3割を超えるほど。「一般ファミリー」が少なめなのと併せ、人数構成別世帯数の伸び具合(単身世帯の増加、夫婦世帯の減少、高齢層の増加)と連動している感はある。また、一般単身者や高齢者は賃貸住宅を借りる際に条件が厳しくなる(貸す側、借りる側双方)ので、問い合わせが必要な場合も多いのだろう。

地域別の動向を見ると、関西圏では特に「高齢者(65歳以上)」の伸びが著しい。他方首都圏・関西圏以外の地域では「学生」が大きく落ち込んでいる、「学生」の全体値がマイナスなのは首都圏・関西圏以外の地域のマイナスによるところなのが分かる。

今回動向が数字化された来店客全員が賃貸住宅の契約をするわけでは無いが、契約の可能性は十分にある。少なくとも直接足を運んでいる以上、単に公式サイトを閲覧したりチラシを読んだ限りの人と比べ、賃貸住宅への興味あるいは必要性の度合いは高い。管理会社側としても冷やかし前提のもので無い以上、来客はあるに越したことは無い。その点ではお客の各属性の動向、地域別の変化はさまざまな方面で役立つ指標となるだろう。

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※賃貸住宅市場景況感調査(日管協短観)

日本賃貸住宅管理協会会員に対して半年ごとに定期的に行われている調査で、直近は2018年10~11月にインターネットを用いて実施。有効回答数は153社(回収率12.2%)。2018年4月1日から2018年9月30日に関する状況についての回答。

(注)本文中のグラフや図表は特記事項の無い限り、記述されている資料からの引用、または資料を基に筆者が作成したものです。

(注)本文中の写真は特記事項の無い限り、本文で記述されている資料を基に筆者が作成の上で撮影したもの、あるいは筆者が取材で撮影したものです。

(注)記事題名、本文、グラフ中などで使われている数字は、その場において最適と思われる表示となるよう、小数点以下任意の桁を四捨五入した上で表記している場合があります。そのため、表示上の数字の合計値が完全には一致しないことがあります。

(注)グラフの体裁を整える、数字の動きを見やすくするためにグラフの軸の端の値をゼロで無いプラスの値にした場合、注意をうながすためにその値を丸などで囲む場合があります。

(注)グラフ中では体裁を整えるために項目などの表記(送り仮名など)を一部省略、変更している場合があります。

(注)グラフ中の「ppt」とは%ポイントを意味します。

(注)「(大)震災」は特記や詳細表記の無い限り、東日本大震災を意味します。

(注)今記事は【ガベージニュース】に掲載した記事に一部加筆・変更をしたものです。

「グラフ化してみる」「さぐる」ジャーナブロガー 検証・解説者

ニュースサイト「ガベージニュース」管理人。3級ファイナンシャル・プランニング技能士(国家資格)。経済・社会情勢分野を中心に、官公庁発表情報をはじめ多彩な情報を多視点から俯瞰、グラフ化、さらには複数要件を組み合わせ・照らし合わせ、社会の鼓動を聴ける解説を行っています。過去の経歴を元に、軍事や歴史、携帯電話を中心としたデジタル系にも領域を広げることもあります。

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