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年金だけで生活費は足りるかな? 年金に対する考え方をさぐる

不破雷蔵「グラフ化してみる」「さぐる」ジャーナブロガー 検証・解説者
↑ 年金だけで生活費はまかなえるか否か。(写真:アフロ)

単身世帯では5割強が「年金だけでは日常生活もつらい」

受給時期にまで年を重ねた際、果たして年金で日常生活を過ごせるのか否か、足りないと考えている場合、その理由はどこにあるのか。その思いの実情を金融広報中央委員会の「知るぽると」が毎年実施している調査「家計の金融行動に関する世論調査」(※)の公開結果から確認する。

まずは年金支給額について、その額(公的年金に加えて企業年金も含め、個人年金は除く。以下同)だけで老後の生活を営めるか否かを尋ねた結果が次のグラフ。単身世帯と二人以上世帯でそれぞれ区分して集計してある。

↑ 年金に対する考え方(単身世帯)
↑ 年金に対する考え方(単身世帯)
↑ 年金に対する考え方(二人以上世帯)
↑ 年金に対する考え方(二人以上世帯)

二人以上世帯で2001年に大きな変化が生じているが、これは同年から「日常生活費程度もまかなうのが難しい」の選択肢の文面を変更したため。元々はより緩やかな生活をイメージさせる「年金だけではゆとりが無い」だった。表現の変更により回答率に変化が生じたのだろう。

経年動向を見ると、意外にも昔から直近まで、年金と老後生活の金銭的な関係において、考え方に大きな差は生じていないことが分かる。あえていえば二人以上世帯では「不自由なく暮らせる」が微減、単身世帯では微増しているぐらいが、中長期的な変化といえるだろうか。少なくとも今調査に限れば、公的年金受給額に関する心境は、昨日今日に騒がれ出した問題ではない。

もっとも直近年の2018年に限れば、単身・二人以上世帯ともに「年金でさほど不自由なく暮らせる」「ゆとりは無いが、日常生活費程度はまかなえる」の値が前年から増加をしており、両種類世帯とも統計値のある限りでは両者の合計値が過去最高を計上することとなった。景況感の変化が影響しているのだろうか。

なぜ年金だけではゆとりが無いと考えているのか

年金だけで老後の生活をまかなえるか否かについて、「ゆとりは無いが、日常生活費程度はまかなえる」「日常生活費程度もまかなうのが難しい」、要は「ゆとりが無い」とする回答者に、なぜ「ゆとりが無い」と考えているのか、その理由を選択肢の中から2つまで選んでもらった。その結果の直近年分および推移をグラフ化したのが次の図となる。

↑ 年金ではゆとりが無いと考える理由(ゆとりが無い世帯、2つまでの複数回答)(2018年)
↑ 年金ではゆとりが無いと考える理由(ゆとりが無い世帯、2つまでの複数回答)(2018年)
↑ 年金ではゆとりが無いと考える理由(単身世帯、ゆとりが無い世帯、2つまでの複数回答)
↑ 年金ではゆとりが無いと考える理由(単身世帯、ゆとりが無い世帯、2つまでの複数回答)
↑ 年金ではゆとりが無いと考える理由(二人以上世帯、ゆとりが無い世帯、2つまでの複数回答)
↑ 年金ではゆとりが無いと考える理由(二人以上世帯、ゆとりが無い世帯、2つまでの複数回答)

まず直近年分。回答数平均値を見ると、二人以上世帯では1.77個なのに対し、単身世帯では1.57個に留まっている。それだけ二人以上世帯の方が、ゆとりが無い世帯における不安要素が多岐にわたっていることが分かる。もっとも理由の順位に差異はほとんど無く、悩みの中身に大きな違いは無い。両種類世帯とも、最大の要因は「年金が支給される金額が引き下げられる」とするもの。ただし二人以上世帯ではそれに「高齢者への医療費用の個人負担増加」「年金支給年齢引き上げ」がほぼ同率で続くのに対し、単身世帯では「年金支給年齢引き上げ」が単独で続いているのは興味深いところ。

経年変化では、単身・二人以上世帯ともに「支給金額の減額」を懸念する声がもっとも大きいことに違いは無い。また、以前は「高齢者への医療費用の個人負担が増える」ことを心配する人が多かったが、少しずつ減少している。

このグラフ、状況の推移動向からは、「いくらもらえるか」「いつからもらえるか」この2点における懸念が、年金生活における不安を底上げしている現状がつかみ取れる。現実問題として支給金額の減額や、支給開始年齢の引き上げが起きていることから、それらへの心配が増すのも道理ではある。

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※家計の金融行動に関する世論調査

直近分となる2018年分は二人以上世帯においては、層化二段無作為抽出法で選ばれた、世帯主が20歳以上でかつ世帯員が2名以上の世帯に対し訪問と郵送の複合・選択式で、2018年6月15日から7月24日にかけて行われたもので、対象世帯数は8000世帯、有効回答率は44.7%。単身世帯においてはインターネットモニター調査で、世帯主が20歳以上70歳未満・単身で世帯を構成する者に対し、2018年6月22日から7月4日にかけて行われたもので、対象世帯数は2500世帯。過去の調査も同様の方式で行われている。

(注)本文中のグラフや図表は特記事項の無い限り、記述されている資料からの引用、または資料を基に筆者が作成したものです。

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(注)グラフ中では体裁を整えるために項目などの表記(送り仮名など)を一部省略、変更している場合があります。

(注)グラフ中の「ppt」とは%ポイントを意味します。

(注)「(大)震災」は特記や詳細表記の無い限り、東日本大震災を意味します。

(注)今記事は【ガベージニュース】に掲載した記事に一部加筆・変更をしたものです。

「グラフ化してみる」「さぐる」ジャーナブロガー 検証・解説者

ニュースサイト「ガベージニュース」管理人。3級ファイナンシャル・プランニング技能士(国家資格)。経済・社会情勢分野を中心に、官公庁発表情報をはじめ多彩な情報を多視点から俯瞰、グラフ化、さらには複数要件を組み合わせ・照らし合わせ、社会の鼓動を聴ける解説を行っています。過去の経歴を元に、軍事や歴史、携帯電話を中心としたデジタル系にも領域を広げることもあります。

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