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スペインでは45%…西欧諸国のポピュリストの比率をさぐる

不破雷蔵「グラフ化してみる」「さぐる」ジャーナブロガー 検証・解説者
↑ 現在欧米で注目、あるいは問題視されている「ポピュリズム」だが、その実情は。(写真:アフロ)

現在欧米で注目されている、あるいは問題視されている主義の一つ「ポピュリズム」(※)。現状の社会体制を否定し、打破を掲げる政治的思想であり、その思惑の遂行や喧伝活動の際に一般市民の権利や利益、思惑をことさらに提示したり、不安などを悪用して扇動する方法が用いられる。大衆主義、大衆迎合主義とも表現されるもので、そのような考え方を持つ人のことを「ポピュリスト」と呼んでいる。そのポピュリズムが台頭しつつあるとも指摘されている西欧諸国では、どれほどの人がポピュリストと判断される状況なのだろうか。西欧の実情をアメリカ合衆国の民間調査会社Pew Research Centerが2018年5月に発表した調査「In Western Europe, Public Attitudes Toward News Media More Divided by Populist Views Than Left-Right Ideology」(※)の報告書の内容を基にさぐる。

次に示すのは調査対象国において、調査対象母集団がポピュリストか非ポピュリストか、いずれにも該当しない中庸と判断される人なのか、その割合を示したもの。自称・自認ではこの類の判断は難しいことから、今調査では2つの設問「国全体の問題を解決する場合、一般の人は選挙で選ばれた人よりもよい成果を出すか否か」「選挙で選ばれた公務員は回答者自身のような一般の人の考えを気にするか否か」への回答を基に、回答者がポピュリストか非ポピュリストかを属性付けている(回答者自身はその結果を知ることは無い)。「一般の人の方がよい成果を出す」「公務員は一般の人の考えを気にしない」との回答ならポピュリストの属性に区分され、「選挙で選ばれた人の方がよい成果を出す」「公務員は一般の人の考えを気にする」ならば非ポピュリスト、いずれか・双方の設問で回答をしなかった人などは中庸的立場と区分される。

↑ ポピュリストか非ポピュリストか(2017年10~12月)
↑ ポピュリストか非ポピュリストか(2017年10~12月)

一番ポピュリストが多いのはスペインで45%、次いでイタリアの43%、フランスの40%。非ポピュリストの方が多い国はオランダ、デンマーク、スウェーデンの3か国に留まっている。スペインは中庸派の割合すらも超え、この区切りの限りでは最大の値を示していることになる。

単純にポピュリズムを標榜するポピュリストといっても中身は多様だが、昨今ではそれを党是に掲げて支持を求める政党も多数出ている。グラフ化は略するが報告書でも諸国の主要なポピュリズムを党是に持つ政党への支持度合いが調査対象となっており、明らかにポピュリストにおける支持率が高いものとなっている(例えばスウェーデンのSweden Democrats党への支持率は、非ポピュリストが10%、中庸派が20%なのに対し、ポピュリストからの支持は38%にも達している)。

単に民衆への聞こえがよい話ばかりを並べ立て、要望をストレートにかなえさせるというのがポピュリズムの本髄だが、世の中の実情はそれができるほど甘いものでは無い。それができるほどのリソースがあるのなら、そもそもポピュリズムの考えが生じるような状況になっているはずも無い。また容易にファシズムや反社会的策動に流用される危険性もある。

今件結果の傾向としては、政情不安定な国ほどポピュリストの比率が高いのでは無く、南部の国ほど高め、北部ほど低めのように見受けられる。民族性が少なからぬ影響を及ぼしているのかもしれない。

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※In Western Europe, Public Attitudes Toward News Media More Divided by Populist Views Than Left-Right Ideology

2017年10月から12月にかけて西欧諸国(デンマーク、フランス、ドイツ、イタリア、オランダ、スペイン、スウェーデン、イギリス)を対象にしたもので、有効回答数は各国2000人強。RDD方式によって選ばれた18歳以上の自国居住者を対象に電話(固定電話と携帯電話双方)によるインタビュー形式で実施されている。結果の値にはそれぞれの国の国勢調査の結果を用いたウェイトバックが行われている。

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「グラフ化してみる」「さぐる」ジャーナブロガー 検証・解説者

ニュースサイト「ガベージニュース」管理人。3級ファイナンシャル・プランニング技能士(国家資格)。経済・社会情勢分野を中心に、官公庁発表情報をはじめ多彩な情報を多視点から俯瞰、グラフ化、さらには複数要件を組み合わせ・照らし合わせ、社会の鼓動を聴ける解説を行っています。過去の経歴を元に、軍事や歴史、携帯電話を中心としたデジタル系にも領域を広げることもあります。

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