ニュースメディアによる報道の政治的中立性への評価、イギリスでは37%
5つの視点でニュースメディアの評価を確認
社会の日々の移り変わりや国内外のさまざまな動向を知るのに欠かせないニュース。そのニュースの情報源となるニュースメディアへの西欧諸国の評価を、アメリカ合衆国の民間調査会社Pew Research Centerが2018年5月に発表した調査「In Western Europe, Public Attitudes Toward News Media More Divided by Populist Views Than Left-Right Ideology」(※)の報告書の内容から確認する。
次に示すのはそれぞれの視点に関してニュースメディアの仕事ぶりにおいて「大変よくやっている」「それなりによくやっている」「あまりよくやっていない」「まったく駄目」の4選択肢のうち1つを選んでもらい、そのうち肯定派に当たる「大変よくやっている」「それなりによくやっている」を合算した値。要は該当視点においてニュースメディアを評価する人の割合となる。
国別動向として、イギリスは元々ニュースメディアへの信用度合いが低いこともあり、評価そのものも他国と比べると低めに出ている。他方、スウェーデンやデンマーク、オランダなど位置的に北部にある国の値は高め。
国によって評価の違いはあるが、おおよそどの国でも「日々の重要な話の把握」への評価は高く、「政府の動向確認」「事実の正確な把握」「企業の影響力からの独立性」「報道の政治的中立性」となるに連れて評価は落ちていく。他方、ドイツやイタリアでは「日々の重要な話の把握」が一段と高くその他の視点への評価は低い、デンマークやオランダでは大きな違いが出ていないなど、国によってニュースメディアへの評価の違いが大きく出ているのは興味深い。
「報道の政治的中立性」はどの国でも評価の度合いは低い。特にイタリアやイギリスでは4割を切っている。5割を超えているのはデンマークとスウェーデンのみ。もっともその2国でも評価できる人は半数程度しかいないとの解釈も可能だ。
ポピュリストはニュースメディアを評価せず
最近特に問題視されているポピュリスト(※※)か否かに区分した上で、2つほど視点を挙げて評価の違いを確認していく。
まずは「事実の正確な把握」における評価。
事実に関して正確に把握をすることはニュースメディアにおいては必要不可欠な機能ですらあるのだが、一様にポピュリストの方が非ポピュリストと比べると肯定派は低い。これはポピュリストには元々現在の国家社会には問題がある、否定すべきだの認識が多少なりとも存在し、そう思わせる状況の一因としてニュースメディアが期待している機能を果たしていないと考えている人がいるからだろうと思われる。つまりニュースメディアが責任を果たしていないから現状のような社会となっており、そのような状況に追いやったニュースメディアを評価できるはずは無いとするもの。
イタリアやフランスでは両派の差はさほどないが、ドイツやスペイン、スウェーデン、イギリスでは大きめの差が出ている。特にドイツでは32%ポイントもの差が生じており、同国におけるニュースメディアが伝える内容への嫌疑の度合いが両派で大きく分かれていることがうかがえる。
もう一つは「報道の政治的中立性」。ニュースメディアが機関紙化してしまっては、公共の利益には貢献しないことになるので、受け手側としては事は重大ではある。
やはりこの視点でも、一様に一様にポピュリストの方が非ポピュリストと比べると肯定派は低い。理由もまた「事実の正確な把握」と同じと見てよいだろう。
両派間ではイタリアとイギリスはさほど差は無いものの、デンマーク、フランス、ドイツ、オランダ、スペイン、スウェーデンと多くの国では大きな差が出ている。特にフランス、ドイツ、スウェーデンでは際立った差異が確認できる次第ではある。
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※In Western Europe, Public Attitudes Toward News Media More Divided by Populist Views Than Left-Right Ideology
2017年10月から12月にかけて西欧諸国(デンマーク、フランス、ドイツ、イタリア、オランダ、スペイン、スウェーデン、イギリス)を対象にしたもので、有効回答数は各国2000人強。RDD方式によって選ばれた18歳以上の自国居住者を対象に電話(固定電話と携帯電話双方)によるインタビュー形式で実施されている。結果の値にはそれぞれの国の国勢調査の結果を用いたウェイトバックが行われている。
※※ポピュリスト
現状における国家社会・社会体制を否定し、打破を掲げる政治思想(ポピュリズム。大衆主義、大衆迎合主義とも表現される)を持つ人のことを指す。その行動の際に一般市民の権利や利益、思惑を提示したり、不安などを悪用して扇動する方法が用いられる。
今調査では2つの設問「国全体の問題を解決する場合、一般の人は選挙で選ばれた人よりもよい成果を出すか否か」「選挙で選ばれた公務員は回答者自身のような一般の人の考えを気にするか否か」への回答を基に、回答者自身がポピュリストか非ポピュリストかを属性付けている。「一般の人の方がよい成果を出す」「公務員は一般の人の考えを気にしない」との回答ならポピュリストの属性に区分され、「選挙で選ばれた人の方がよい成果を出す」「公務員は一般の人の考えを気にする」ならば非ポピュリスト、いずれか・双方の設問で回答をしなかった人などは中庸的立場と区分される。
昨今のヨーロッパ諸国ではこの考えが浸透しつつあるとの指摘もあり、今回の調査では精査対象項目として取り入れられたと思われる。
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