ソーシャルメディア上のbotの善悪、アメリカ合衆国の人達の意見をさぐる(低許容度編)

↑ botによるフェイクニュースやニセ情報に驚く。でも許容できる人もいる。(写真:アフロ)

フェイクニュースやニセ情報でも7%は許容

ソーシャルメディア上にあふれるbot(Robotが由来。機械的に情報を生成し、定められた仕組みに従って情報を公開する自動プログラム。あるいは公開された情報そのもの)による情報。人々はどのような性質のものなら許容できると考えているのか。アメリカ合衆国の人達の考えを、同国の民間調査会社Pew Research Centerが2018年10月に発表した調査「Social Media Bots Draw Public's Attention and Concern」(※)の結果報告書を基に確認する。

次に示すのは実際にソーシャルメディア上で利用されているbotに関して、次のような手法ならば許されるのか、その認識を尋ねた結果のうち、許容できるとの回答率が比較的低かった選択肢。無論、ソーシャルメディアにおけるbotを知らなければ判断のしようが無いので、知っている人限定となっている。

↑ 次のようなソーシャルメディアにおけるbotの使い方は許容できる(アメリカ合衆国、ソーシャルメディアにおけるbotを知っている人限定)(2018年7~8月)
↑ 次のようなソーシャルメディアにおけるbotの使い方は許容できる(アメリカ合衆国、ソーシャルメディアにおけるbotを知っている人限定)(2018年7~8月)

今回抽出した選択肢の中では「特定の問題に注意を集めるための任意組織による情報発信」がもっとも高い値を示し、4割強が許容している。実際には内容によるところが大きいが、得てしてプロパガンダ的な、選挙中の選挙カーのような目障りさを覚えるものが多いだけに、これほどの値が出るのは驚きではある。あるいは寄付活動のような善意的な話を想起した人が多いのかもしれない。

他方、有名人によるファン獲得のための情報発信は32%と意外に低め。興味が無ければ対象のアカウントを追いかけていることは無いわけで、このような情報も目に留まる機会はあまり無いはずなのだが、リツイートや引用などで伝わってくるものについて、目障り感を覚えているのかもしれない。あるいはスパムのような頻繁な発信が否定されたのだろう。似たような話は政党による情報者支援の情報発信にも当てはまり、こちらは24%しか許容できる人がいない。政治的な思惑が絡むと、肯定できない人も増えるようだ。

そして先のアメリカ合衆国の大統領選挙で大きくスポットライトを浴びることになった、フェイクニュースをはじめとするニセ情報の配信に関しては7%のみ。むしろ7%も許容する人がいるのは驚きだが、これは初めからニセ情報と公知した上で配信されるネタ的なものも含めて考えている人がいるのだろう。本来なら本物の情報のように流していくフェイクニュースとは異なるのだが。

属性別の許容実情を確認

続いて具体的な属性別の詳細。まずは特定の問題に注意を集めるための任意組織による情報発信。

↑ 次のようなソーシャルメディアにおけるbotの使い方は許容できる(アメリカ合衆国、ソーシャルメディアにおけるbotを知っている人限定、特定の問題に注意を集めるための任意組織による情報発信、属性別)(2018年7~8月)
↑ 次のようなソーシャルメディアにおけるbotの使い方は許容できる(アメリカ合衆国、ソーシャルメディアにおけるbotを知っている人限定、特定の問題に注意を集めるための任意組織による情報発信、属性別)(2018年7~8月)

4割台で属性別による大きな傾向だった動きは無し。あえて言えば高学歴ほど高い値を示している。

続いて有名人によるファン獲得のための情報発信。

↑ 次のようなソーシャルメディアにおけるbotの使い方は許容できる(アメリカ合衆国、ソーシャルメディアにおけるbotを知っている人限定、有名人によるファン獲得のための情報発信、属性別)(2018年7~8月)
↑ 次のようなソーシャルメディアにおけるbotの使い方は許容できる(アメリカ合衆国、ソーシャルメディアにおけるbotを知っている人限定、有名人によるファン獲得のための情報発信、属性別)(2018年7~8月)

有名人によるファン獲得のための情報発信では属性による違いが大きく出ている。年齢階層別では30~49歳がもっとも高く、それより年が上になると減少する傾向。高齢になると有名人を新たに知ろうとする意欲が減るために、邪魔な情報に過ぎないとの認識が増えるのだろうか。

学歴別では傾向のようなものは見られないものの、支持政党別では民主党支持者の方が高い値。これは(ジャーナリスト系の)有名人で民主党支持者によるソーシャルメディア上での情報発信が多いことが影響しているのかもしれない。

次は政党による候補者支援の情報発信。

↑ 次のようなソーシャルメディアにおけるbotの使い方は許容できる(アメリカ合衆国、ソーシャルメディアにおけるbotを知っている人限定、政党による候補者支援の情報発信、属性別)(2018年7~8月)
↑ 次のようなソーシャルメディアにおけるbotの使い方は許容できる(アメリカ合衆国、ソーシャルメディアにおけるbotを知っている人限定、政党による候補者支援の情報発信、属性別)(2018年7~8月)

すべての属性で2割台だが、男女別では男性、学歴別では低学歴、支持政党別では共和党支持者の方が高い値を示している。有名人による利用は民主党支持者の方が許容する人は多く、政党による候補者支援の情報発信は共和党支持者の方が高い許容率を示すのは不思議な話ではある。

最後は組織や個人によるフェイクニュースやニセ情報の配信。

↑ 次のようなソーシャルメディアにおけるbotの使い方は許容できる(アメリカ合衆国、ソーシャルメディアにおけるbotを知っている人限定、組織や個人によるフェイクニュースやニセ情報の配信、属性別)(2018年7~8月)
↑ 次のようなソーシャルメディアにおけるbotの使い方は許容できる(アメリカ合衆国、ソーシャルメディアにおけるbotを知っている人限定、組織や個人によるフェイクニュースやニセ情報の配信、属性別)(2018年7~8月)

フェイクニュースは虚実を事実であるかのように語ることだが、ニセ情報はフェイクニュース同様の場合もあれば、あらかじめ虚実の話であると宣言した上で流すものもある(エイプリールフールのネタ情報が好例)。それらをまとめた選択肢のため、わずかではあるが許容する人がいる。

年齢階層別では傾向だった動きは無いが、男女別では男性、学歴別では低学歴の方が、いくぶん許容率は高い。とはいえ元々が1割未満でしかなく、誤差の範囲とも解釈できよう。むしろ支持政党別で差が生じなかったことに驚きを覚える人もいるかもしれない。

結局のところbotは自動的に文章を生成し配信する仕組みに過ぎず、それのよし悪しは使い方や内容によるところが大きい。今回例示された選択肢のほとんどは、やり方次第では同一のbotの仕組みで行うことができる。botそのものが問題なのではなく、どのように使うか、利用する側の考えに許容度合いが左右されると見てよいだろう。

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※Social Media Bots Draw Public's Attention and Concern

Pew Research Centerの調査パネルATP(American Trends Panel)によって行われたもので、調査実施期間は2018年7月30日から8月12日。有効回答数は4581人。ATPはRDDで抽出された固定電話と携帯電話番号への通話で18歳以上のアメリカ合衆国居住者に対して応募が行われたもので、国勢調査の結果でウェイトバックが実施されている。

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