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増える肉類、減る魚介類…主要食品摂取量の実情をさぐる

不破雷蔵「グラフ化してみる」「さぐる」ジャーナブロガー 検証・解説者
↑ 肉魚野菜…摂取バランスの現状は、そして10年前との違いは。(ペイレスイメージズ/アフロ)

昨今の日本人の食生活においては、昔と比べると欧米化の傾向にあり、肉食が増えて魚を食べる量が減ったといわれている。その実情を厚生労働省から2018年9月に発表された定期調査「国民健康・栄養調査」(※)の最新版となる2017年分における概要報告書などの公開値から確認する。

次に示すのは魚介類・肉類(それぞれ加工品を含む)、野菜類、乳類(牛乳、加工乳、乳製品全般、粉乳類、クリーム類、乳酸菌飲料、チーズ類やアイスクリーム類など)の一日あたりの平均摂取量を示したグラフ。最新値となる2017年分、そしてその10年前の2007年分についてデータを併記する。

また2017年分以降は年齢階層別のデータの区切りがそれ以前とは変わり、70歳以上の区分が無くなったため、参考値として両年で比較参照できる75歳以上の値を併記しておく(総数では含まれるが、年齢階層区分上では70~74歳の値がグラフには反映されないことになる)。

↑ 肉類の摂取量の平均値(男女計、年齢階層別、グラム/日)(2007年、2017年)
↑ 肉類の摂取量の平均値(男女計、年齢階層別、グラム/日)(2007年、2017年)
↑ 魚介類の摂取量の平均値(男女計、年齢階層別、グラム/日)(2007年、2017年)
↑ 魚介類の摂取量の平均値(男女計、年齢階層別、グラム/日)(2007年、2017年)
↑ 野菜類の摂取量の平均値(男女計、年齢階層別、グラム/日)(2007年、2017年)
↑ 野菜類の摂取量の平均値(男女計、年齢階層別、グラム/日)(2007年、2017年)
↑ 乳類の摂取量の平均値(男女計、年齢階層別、グラム/日)(2007年、2017年)
↑ 乳類の摂取量の平均値(男女計、年齢階層別、グラム/日)(2007年、2017年)

まず直近の平均値だが、魚介類は64.4グラム・肉類は98.5グラムと、肉類の方が魚介類よりも多い。また年齢階層別では魚介類がおおよそ年に連れて摂取量が増える一方、肉類は15~19歳の摂取量が最大で、あとは年上になるに連れて減少していく。75歳以上では魚介類・肉類の立ち位置が逆転し、肉類よりも魚介類の方を多く摂取している計算になる。両食品の特性、普段イメージされている好き嫌いがそのまま数字となって現れており、非常に興味深い。やはり年を取ると肉類は敬遠される傾向にあるようだ。

あるいは個々の「世代」の食生活の日常が、ある程度踏襲されている可能性も否定できない。つまり年齢階層による違いではなく、世代(西暦何年生まれなどの区分)による違いが多分に影響しているのでは、との考えである。それが事実ならば今後、高齢層でも少しずつ肉類の摂取量が増え、魚介類が減り、高齢者でも肉類の摂取量が魚介類以上になる可能性はある。

野菜類は1~6歳時点でこそ少なめなものの、それ以降は40代ぐらいまではほぼ同量、50代以降はむしろ増加していく傾向がある。健康志向の高まりを受けてのものだろう。そして乳類は1~6歳が多め、7~14歳で最大となり、以降は減少、そして50代以降は再び増加していく。乳幼児は子供向けの粉ミルクなど、未成年では学校給食などにおける牛乳や健康のため保護者から与えられる事例が多いのが主要因だと考えられる。高齢になるに連れて増えるのも、健康志向によるものと考えれば道理は通る。

なお乳類の男女別詳細値を詳細公開値から確認すると(グラフ化は略)、20代以降は女性の方が摂取量が多い。ヨーグルトなどの健康志向性の高い乳類を多く摂っているのだろう。

10年前の2007年当時の値も併記したが、それと直近となる2017年との比較をすると、「魚介類の摂取量が大きく減る」「肉類の摂取量が増える」「乳類は中年層以降で増加」などの動きが確認できる。「食文化の欧米化」との表現はあまりにも陳腐だが、肉食に傾きつつあることは間違いあるまい。また牛乳の全体消費量が減少していることがしばしば話題に上っているが、今データの限りではおおよそ未成年層へのアピールが必要なように見える。

10年間の変化を算出した結果が次のグラフ。

↑ 魚介類・肉類・野菜類・乳類の摂取量の平均値(男女計、年齢階層別、1日あたり摂取量)(2007年から2017年への変化率)
↑ 魚介類・肉類・野菜類・乳類の摂取量の平均値(男女計、年齢階層別、1日あたり摂取量)(2007年から2017年への変化率)

年齢階層では肉類は1~6歳以外で増え、魚介類は全年齢階層で減っている。他方変化率では肉類・乳類において高齢層の増加率が大きい結果が出ている。肉類の動きはやや妙に思えるかもしれないが、10年間における重量の増加分に大きな違いは無いため、元々摂取量が少なかった高齢者ほど、比率面では大きな値が出る次第。

健康的な食のバランスを保つためには、偏りなく、多彩な種類の食材を口にしたいものだ。

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※国民健康・栄養調査

健康増進法に基づき、国民の身体の状況、栄養素など摂取量および生活習慣の状況を明らかにし、国民の健康の増進の総合的な推進を図るための基礎資料を得ることを目的とするもの。2017年調査分における調査時期は2017年11月中、調査実施世帯数は5149世帯で、調査方法は調査票方式。

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(注)グラフ中の「ppt」とは%ポイントを意味します。

(注)「(大)震災」は特記や詳細表記の無い限り、東日本大震災を意味します。

(注)今記事は【ガベージニュース】に掲載した記事に一部加筆・変更をしたものです。

「グラフ化してみる」「さぐる」ジャーナブロガー 検証・解説者

ニュースサイト「ガベージニュース」管理人。3級ファイナンシャル・プランニング技能士(国家資格)。経済・社会情勢分野を中心に、官公庁発表情報をはじめ多彩な情報を多視点から俯瞰、グラフ化、さらには複数要件を組み合わせ・照らし合わせ、社会の鼓動を聴ける解説を行っています。過去の経歴を元に、軍事や歴史、携帯電話を中心としたデジタル系にも領域を広げることもあります。

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