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公立学校の給食費未納状況をさぐる

不破雷蔵「グラフ化してみる」「さぐる」ジャーナブロガー 検証・解説者
↑ 学校給食は楽しい時間ではあるが、給食費を滞納する事例が皆無では無く。(写真:アフロ)

・公立小学校では41.6%、中学校では54.5%の学校で給食費が未納の児童生徒がいる(2016年度)。

・教師の多くは児童生徒の給食費未納の問題を、保護者の責任感や規範意識によるものと認識している。

文部科学省が2018年7月に発表した、2016年度における学校給食費の徴収状況に関する調査(※)の結果によると、学校給食を実施している公立学校では41.6%の小学校、54.5%の中学校で学校給食費が未納の児童生徒がいることが分かった。

調査結果によれば小学校394校のうち、学校給食費の未納児童生徒がいた学校は164校、中学校は178校中97校。小学校で4割強、中学校では5割強の学校で未納問題が体現化している。

↑ 学校給食費徴収状況(小学校)
↑ 学校給食費徴収状況(小学校)
↑ 学校給食費徴収状況(中学校)
↑ 学校給食費徴収状況(中学校)

実際の未納生徒数は小学校で1174人・中学校で621人(今調査母体学校内)。未納生徒がいなかった学校も合わせた、全生徒数比はそれぞれ0.8%・0.9%となる。金額ではそれぞれ0.4%・0.5%。人数比より金額比の方が小さく、給食費の低い学校・事例で未納が多めであることがうかがえる。

0.8%・0.9%との値はあくまでも「未納生徒がいない学校も合わせた生徒数」に対する比率。概算だが「未納生徒が”いる”学校生徒数」では、それぞれ2.0%・1.7%となる。

また4年前の前回調査の結果と比較すると、小学校では未納生徒比率・未納額ともにほぼ横ばいだが、中学校では未納生徒比率・未納額ともに減少しており、学校給食費の未納問題は中学校においては、数字の上に限るが、改善の方向にあると見ることができる。

この未納児童生徒に対応している教師・学校側の認識による、生徒の未納の主な原因は次の通り。「保護者の経済的な問題」よりも「保護者の責任感や規範意識」の方が多いという状況で、調査実施年とともに「保護者の責任感や規範意識」の回答率は増加しつつある。

↑ 未納児童生徒の主な原因についての「教師による」認識(未納児童生徒対応の教師回答)
↑ 未納児童生徒の主な原因についての「教師による」認識(未納児童生徒対応の教師回答)

直近年度では小学校で2/3近く、中学校では3/4強が「保護者の責任感や規範意識」との回答となっており、経済難では無く保護者側の認識の問題による給食費の滞納事例の割合が増加している実情が確認できる。もちろんこれは教師側の認識であり、その判断が100%正しいとは限らない。

また、「その他」の回答率が増加しているのにも注意が必要。報告書では「『保護者としての責任感や規範意識』と『保護者の経済的な問題』のいずれか明確に判別ができない」と説明があり、該当する児童生徒の実情が把握しにくいケースが増えていることがうかがえる。実際今調査の別項目で「未納家庭の学校外滞納についての学校の把握状況」を見ると、学校給食費未納家庭における、学校外滞納(税金、健康保険料、保育料、水道料、公営住宅料などの自治体における債権の滞納)を把握しているとの回答はごくわずかで、学校単位では小学校で1.2%、中学校で3.1%に留まっている。「一部を把握している」を足しても小学校で7.3%、中学校で5.2%に過ぎない。

いかなる考えを信奉するかは自由だが、社会を維持するための決まりには粛々と従い、その上で意思表現をしてほしいもの。それと同時に、困っている場合は自らの状況を臆することなく、頼れる相手に相談することをお勧めする。実際今資料においても、課題を抱える家庭への支援として、学校側が保護者へ就学援助制度などの活用を推奨したり、福祉部局・福祉関係機関などによる支援へつなぎ、成果が出た事例が多数報告されているのだから。

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※学校給食費の徴収状況に関する調査

直近調査分については学校給食を実施している全国の公立小学校・中学校約28000校のうち572校を抽出し、2016年度(2016年4月~2017年3月)の学校給食費の徴収状況を調査している。選定にあたっては学校の規模の割合が全国の状況と同じくなるように、また特定の地域や市町村に集中することなく、各都道府県内の実態を広く反映するよう選定している。過去分もほぼ同じ条件下での調査が実施されている。

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「グラフ化してみる」「さぐる」ジャーナブロガー 検証・解説者

ニュースサイト「ガベージニュース」管理人。3級ファイナンシャル・プランニング技能士(国家資格)。経済・社会情勢分野を中心に、官公庁発表情報をはじめ多彩な情報を多視点から俯瞰、グラフ化、さらには複数要件を組み合わせ・照らし合わせ、社会の鼓動を聴ける解説を行っています。過去の経歴を元に、軍事や歴史、携帯電話を中心としたデジタル系にも領域を広げることもあります。

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