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健康意識と医療サービスの利用実情をさぐる

不破雷蔵「グラフ化してみる」「さぐる」ジャーナブロガー 検証・解説者
↑ 入院中の高齢者。健康意識と医療サービスの利用実情は。(ペイレスイメージズ/アフロ)

・60歳以上に対する健康への意識調査において、日本では「現在健康である」と答えた人は約2/3。「あまり健康だとはいえないが病気では無い」が3割近く。

・韓国では「病気がちで寝込むことあり」が多め。ドイツでは「あまり健康だとはいえないが病気では無い」が多い。

・60歳以上に対する医療サービスの利用状況は、日本では「月一以上の利用」が約6割、「週一以上の利用」が2割強。

高齢者は加齢により心身が衰えることから、医療サービスの利用頻度が高まり、健康への意識も強いものとなる。それらの実情における日本と諸外国の相違を、「高齢者の生活と意識に関する国際比較調査結果」(※)から確認する。

まずは日本と諸外国における、60歳以上の高齢者(日本では「高齢者」は65歳以上を指すことが多いが、他国と合わせるために今件では60歳にしている)の、健康についての意識を尋ねた結果。日本では自分自身の状況について、現在健康であると答えた人は約2/3となっている。

↑ 健康についての意識(国際比較、60歳以上男女対象)
↑ 健康についての意識(国際比較、60歳以上男女対象)

韓国の「病気がちで寝込むことあり」がやや多めなのが目に留まる。他は日本とアメリカ合衆国、スウェーデンがほぼ同水準で、ドイツの「健康である」が日本などと比べると半分程度となり、その分「あまり健康だとはいえないが病気では無い」が多い(57.2%)。今回登場した諸国ではドイツが一番多い値となっている。

もっとも「健康である」「あまり健康だとはいえないが病気では無い」の項目は本人の自己判断によるもので、意識の持ち方・国民性や環境要素、厚生インフラの対応も反映されるため、青色と灰色の部分、つまり軽くは無い「病気」を持つ割合のみを特に注視すればよい(日本は各調査でネガティブな反応を示しがちだが、今件では他国と変わらない良好な値が出ているのが興味深い)。しかしながらその観点でも、やはり韓国が一番多くなっている。

一方自己判断では無く、実際にカウントできる医療サービスの利用頻度を尋ねた結果が次の図。高齢者自身の健康意識ではアメリカ合衆国やスウェーデンと並び高水準(健康のように見える)だった日本が、韓国と同程度の高頻度での利用傾向(色々と体に支障があるように判断できる)にあることが分かる。

↑ 医療サービスの利用状況(国際比較、60歳以上男女対象)
↑ 医療サービスの利用状況(国際比較、60歳以上男女対象)

日本の「月一以上の利用」が約6割、「週一以上の利用」が2割強との回答は、最初の「健康意識の回答」とは随分とかけ離れているように思える。

健康面で何らかの自覚症状を持ち、通院を繰り返していても、その通院が日常生活化している(当たり前だと認識している)、「通院しているが健康だ」「通院しているから健康を維持できている」と、各高齢者が考えているのかもしれない。その推測も含め、日本では医療サービスの利用姿勢の点で、他国との差異がある可能性は否定できない。

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※高齢者の生活と意識に関する国際比較調査

直近分となる2015年分は日本、アメリカ合衆国、ドイツ、スウェーデンの60歳以上の男女(施設入所者は除く)を対象とし、2015年9月~12月にかけて個別面接聴取調査によって行われたもので、各国とも1000サンプル回収を原則としている。5年毎の定点観測調査で、過去の調査も(調査対象国に違いはあるが)ほぼ同じ条件で実施されている。

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「グラフ化してみる」「さぐる」ジャーナブロガー 検証・解説者

ニュースサイト「ガベージニュース」管理人。3級ファイナンシャル・プランニング技能士(国家資格)。経済・社会情勢分野を中心に、官公庁発表情報をはじめ多彩な情報を多視点から俯瞰、グラフ化、さらには複数要件を組み合わせ・照らし合わせ、社会の鼓動を聴ける解説を行っています。過去の経歴を元に、軍事や歴史、携帯電話を中心としたデジタル系にも領域を広げることもあります。

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