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正規社員より非正規社員の方が恋愛や結婚をするのは厳しい

不破雷蔵「グラフ化してみる」「さぐる」ジャーナブロガー 検証・解説者
↑ 異性とのお付き合いは就業形態で差異があるのか。調査結果の統計値から確認。(写真:アフロ)

・同一人物に対する経年調査の結果では、正規社員の方が非正規社員よりも結婚している人の割合が大きい。

・配偶者がいない人における結婚願望でも、正規社員の方が非正規社員よりも結婚願望は強い。

・未婚状態が続いている人のうち結婚意欲がある人でも、正規社員の方が非正規社員よりも異性の交際相手がいる人の割合は大きい。

正規・非正規間の結婚への思いの違い

正規社員と非正規社員との間には生計の安定感の差異がある。それは異性関係にどのような影響を及ぼしているのか。結婚観や異性との関係の実情を、内閣府が2018年6月に発表した「少子化社会対策白書」での解説をきっかけとし、厚生労働省の「21世紀成年者縦断調査(平成24年成年者)」(2012年10月末時点で20代だった男女およびその配偶者に対し、同年から毎年同一人物を継続的に調査していく連続調査。毎年1回調査が実施され、最新分は2016年11月に実施された第5回)の各調査結果のうち、検証に値する調査項目における最新調査結果の数値から確認する(すべての項目が毎回調査で問われている・結果が発表されているわけでは無いので、項目によっては最新調査の第5回分では無い結果を用いている)。

まずは第1回調査時点で独身だった人における、直近調査までの間に結婚したか否かを就業状態別に見ていく。「非正規雇用として採用されている非正規社員」はパート・アルバイト、契約社員、派遣社員が該当する。また「結婚した」はその後離婚した人も含まれている。

↑ 雇用形態別・男女別の結婚状態(2012年10月末時点で独身の20代だった人、「結婚した」はその後離婚した者も含む。就業形態は「結婚した」は結婚前、「結婚していない」は2015年11月時点)(2016年11月時点)
↑ 雇用形態別・男女別の結婚状態(2012年10月末時点で独身の20代だった人、「結婚した」はその後離婚した者も含む。就業形態は「結婚した」は結婚前、「結婚していない」は2015年11月時点)(2016年11月時点)

男性は正規社員の2割強が結婚しているのに対し、非正規では7.6%しかいない。女性では非正規社員でも24.6%か結婚しているが、正社員の30.5%には及ばない。

男性は結婚すると自らの稼ぎで一家を支えねばならない場合が多いが、女性は(兼業主婦として働く事例は多々あるものの)自らの稼ぎを気にする必要は男性ほどは無いからか、正規と非正規の差はさほど大きくは無いようだ。

それでは結婚に対する願望はどのような状況なのか。配偶者がいない人に限定した結果が次のグラフだが、多数の人は結婚を望んでいる。

↑ 雇用形態別結婚願望(2012年11月時点で20代の男女のうち配偶者がいない人で、2015年11月時点でも未婚状態を継続している人)
↑ 雇用形態別結婚願望(2012年11月時点で20代の男女のうち配偶者がいない人で、2015年11月時点でも未婚状態を継続している人)

ただし非正規社員の方が結婚願望は薄い。元々結婚への意欲が無いので非正規社員としての就業状態を望んでいるのか、非正規社員だからこそ金銭的な不安感を持ち結婚が無理だと判断し、したくないと答えているのかまでは今調査項目だけでは確認できないが、非正規社員の方が結婚願望が薄い、明確な意識を持っていないのに違いは無い。

また、結婚願望同様、希望子供数も非正規社員の方が少なめに出ている(こちらは第1回目の調査結果のみが公表されている)。

↑ 雇用形態別結婚後の希望総子供数(2012年11月時点で20代の男女のうち配偶者がいない人)(2012年11月時点)
↑ 雇用形態別結婚後の希望総子供数(2012年11月時点で20代の男女のうち配偶者がいない人)(2012年11月時点)

結婚願望と同じく相関関係はともかく因果関係までをも説明できるものでは無いが、少なくとも非正規社員の方が正規社員よりも、結婚を望む人は比率的に少なく、結婚を望んでいたとしても子供の数は多く望んでいないことが分かる。多分に就労そのもの、そして金銭的な不安定さが家族構築への足かせとなっていることが想像できる結果には違いない。

異性の交際相手がいる率もまた

具体的な結婚観、子供の希望人数とまではいかなくとも、交際している異性がいるかいないかの点でも、正規・非正規間に差は生じている。

↑ 雇用形態・男女別の交際異性の有無(2012年11月時点で20代の男女のうち配偶者がいない人で、2015年11月時点でも未婚状態を継続している人のうち、結婚意欲がある人)
↑ 雇用形態・男女別の交際異性の有無(2012年11月時点で20代の男女のうち配偶者がいない人で、2015年11月時点でも未婚状態を継続している人のうち、結婚意欲がある人)

時間の拘束の点などでは非正規社員の方が融通は利きやすいはずだが、金銭面や生活の安定性の問題は、異性と付き合う余裕のある無しにも関わってくるようだ。また、付き合う異性との巡り合いの機会の点でも、非正規社員は正規社員と比べて恵まれていないのかもしれない。

このグラフの値は結婚願望がある人が異性と交際し、結婚に至るという通常のプロセスを前提としているため、あくまでも「配偶者がいない」人のうち、結婚願望がある人に限られた値となる。結婚願望が無いが異性の交際相手が居る人もゼロとは言えないだろう。だがそのような事例は今件における「結婚ができるか否か」との精査においては考慮外となる。

ともあれ男性は非正規社員の方が結婚率は低く、未婚者でも異性との付き合いをしている人も少ない、未既婚にかかわらず異性との付き合いは難しいとの結果が透けて見える(あくまでも相関関係ではあるが)。女性も未婚者に限れば、非正規社員の方が異性との付き合いをしている人は少ないことになる。

結婚願望と子供の保有願望は恐らくは連動している。さらにそれらは異性との交際が無ければ実現は不可能。そしてそれらの多くは経済的安定感を持つ正規社員の方が高い値を示している。職の安定が生活・経済面での安定を生み出し、結婚や子供保有・子育てへの促進につながることを意味すると解釈できる。「少子化対策は子育て世代の包括的かつ安定感をもたらす直接・間接を問わずの経済支援から」との説を、大きく後押しできる結果といえよう。

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(注)今記事は【ガベージニュース】に掲載した記事に一部加筆・変更をしたものです。

「グラフ化してみる」「さぐる」ジャーナブロガー 検証・解説者

ニュースサイト「ガベージニュース」管理人。3級ファイナンシャル・プランニング技能士(国家資格)。経済・社会情勢分野を中心に、官公庁発表情報をはじめ多彩な情報を多視点から俯瞰、グラフ化、さらには複数要件を組み合わせ・照らし合わせ、社会の鼓動を聴ける解説を行っています。過去の経歴を元に、軍事や歴史、携帯電話を中心としたデジタル系にも領域を広げることもあります。

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