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スマートフォンやタブレット型端末の利用で遭遇するトラブルの実状をさぐる

不破雷蔵「グラフ化してみる」「さぐる」ジャーナブロガー 検証・解説者
↑ スマートフォン経由で飛び込むアレな情報に怒りを覚えることも!?(ペイレスイメージズ/アフロ)

・スマートフォンやタブレット型端末でインターネットを利用している人が経験した(トラブル的)経験のトップは迷惑メールや架空請求メールの受信。55.5%が経験(2017年)。

・端末を無くしたり盗難にあった人は4.1%。

・高齢層では迷惑メールや架空請求メールの受信は低めだが、ウイルス感染は高め。

過半数の人が迷惑メール受信経験者

スマートフォンやタブレット型端末の猛烈な普及率の高まりに連れ、それらの利用で遭遇するトラブルも増加の一途をたどっている。今回は総務省が2018年5月に発表した「通信利用動向調査」(※)の公開値を基に、インターネット利用の中でも特に昨今利用者が急増しているスマートフォンやタブレット型端末でインターネットを利用している人に限り、トラブルの現状を確認する。

次に示すのは、スマートフォンあるいはタブレット型端末を使ってインターネットを利用している人における、その端末で経験したトラブルのたぐいを複数回答で尋ねた結果。回答時において過去1年との縛りは無いので(利用した端末そのものは過去1年間の縛りはある)、2017年中の1年間だけで無く、これまでに経験があるか無しかになる。

↑ インターネットを利用していて実際に経験したこと(スマートフォンまたはタブレット型端末でインターネットを利用している人限定、複数回答)(2017年)
↑ インターネットを利用していて実際に経験したこと(スマートフォンまたはタブレット型端末でインターネットを利用している人限定、複数回答)(2017年)

迷惑メール受信経験者は55.5%。最近はプロバイダやメール受信ソフト側のフィルタリング機能も充実・高性能化しており、低レベルの迷惑メールなどは即時自動的にゴミ箱行き、あるいは受信すらされなくなっている。とはいえ網の目を潜り抜ける事例はいくらでもあり、フィルタをすり抜けるための技も高度化し、場合によっては一日何十件もその類のメールを目にする羽目になる。また単純な迷惑メールだけで無く、「勝手に有料サイトを利用されたことになっていて、勝手に請求書的メールが届いた」的な架空請求のメールも増えている。

「ウェブ閲覧履歴などに関連する広告表示やメールの送付」は少々分かりにくいかもしれない。広告技術の一つとして、ブラウザの履歴をもとに利用者の利用傾向を統計的に推測し、「より需要にマッチしたものを」との『好意』から、多様な広告展開がなされたり、さらにはメールで情報が送られてくる場合がある。メールは多分に利用側の選択で受け取り拒否はできるものの、ブラウザ上の表示広告に関しては難しい。中には関連する商品として、閲覧者には不愉快なものが表示されることもあり、迷惑メールと何ら変わりない体験となる。

一方本格的なトラブルともいえる「ウイルス感染」「個人情報漏洩」「フィッシング」は数%台。ゼロでは無く、確実に存在するあたり、これらの事案が実在し、自分の身の回り、自分自身に起きうることを再確認させられる。ただし「フィッシング」は調査票では「フィッシング」のみの表記で、補足説明として別票で「実在する企業からの正規のメールやウェブサイトなどに見せかけ、暗証番号やパスワードを入力させる詐欺的な行為を意味する」との説明があるか、そこまで目を通さずに回答をスルーしている可能性は否定できない。実受信率はもう少し高い可能性はある。

年齢でトラブル体験率は違いを見せる

この経験率を回答者の年齢階層別に見たのが次のグラフ。

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↑ インターネットを利用していて実際に経験したこと(スマートフォンまたはタブレット型端末でインターネットを利用している人限定、複数回答、年齢階層別)(2017年)
↑ インターネットを利用していて実際に経験したこと(スマートフォンまたはタブレット型端末でインターネットを利用している人限定、複数回答、年齢階層別)(2017年)

具体的な選択肢として全体では最多回答率となる迷惑メール受信だが、意外にも高齢層の回答率は低い。メールそのものをチェックしていないのか、スマートフォンやタブレット型端末を利用し始めてからまだ日が浅く、経験するまでに至っていないのか、あるいはメールそのものを使っていないのかもしれない。アプリケーションのみの使用とのスタイルも十分ありえる。さらには迷惑メールとの認識をしていない可能性も否定できない。

興味深いのはウイルス感染の割合が50代以降、定年退職後の年齢階層でやや高めの傾向が生じていること。好奇心旺盛で「さまざまな」サイトにアクセスするが、リスクへの構えは十分で無い、積極的な初心者的事例が多い状況が想像できる。

端末そのものを無くしてしまったり、盗難にあったとの事例は若年層が多い。特に30代は7.2%、およそ14人に1人が経験している。行動範囲が広いため、出先で利用してそのままつい置きっぱなしにしてしまう、あるいはポケットなどから落ちてしまうなどのパターンだろうか。75~79歳が9.6%と高めなのは統計上のぶれの可能性が高い(比重調整後の集計人数は35人)。

今件設問部分は実のところ、調査では単に経験談を尋ねているのであり、トラブルの類としての説明は無い。調査票では「機器を利用していて実際に経験したこと」との表記のみ。しかしながら何を意図してまとめられているのかは明らか。その選択肢の中に「ウェブ閲覧履歴などに関連する広告表示やメールの送付」(グラフ上では「ウェブ閲覧履歴関連の広告表示など」と表記)が含まれていることは、設問者、そして利用者にとっては、ウェブ閲覧の履歴に連動する形で広告が表示されたり、さらにはメールが送付される事象が、迷惑だとの認識があることを意味する。

システムの提供側は「よかれと思って」「便宜性の向上のため」のような理由を示しているが、利用者側が必ずしもそのような受け止め方をしているとは限らない事実に、十分注意すべきではある。

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※通信利用動向調査

2017年分は2017年11月~12月に世帯向けは都道府県および都市規模を層化基準とした層化二段無作為抽出法で選ばれた、20歳以上の世帯主がいる世帯・構成員に、企業向けは公務を除く産業に属する常用雇用者規模100人以上の企業に対し、郵送による調査票の配布および回収の形式によって行われている(企業向けは一部オンラインでも実施)。有効回答数はそれぞれ1万6117世帯(4万1752人)、2592企業。調査票のうち約8割は回収率向上のために調査事項を限定した簡易調査票が用いられている。各種値には国勢調査や全国企業の産業や規模の分布に従った、ウェイトバックが行われている。過去もほぼ同様の条件下で実施されている。

(注)本文中のグラフや図表は特記事項の無い限り、記述されている資料からの引用、または資料を基に筆者が作成したものです。

(注)本文中の写真は特記事項の無い限り、本文で記述されている資料を基に筆者が作成の上で撮影したもの、あるいは筆者が取材で撮影したものです。

(注)記事題名、本文、グラフ中などで使われている数字は、その場において最適と思われる表示となるよう、小数点以下任意の桁を四捨五入した上で表記している場合があります。そのため、表示上の数字の合計値が完全には一致しないことがあります。

(注)グラフの体裁を整える、数字の動きを見やすくするためにグラフの軸の端の値をゼロで無いプラスの値にした場合、注意をうながすためにその値を丸などで囲む場合があります。

(注)グラフ中の「ppt」とは%ポイントを意味します。

(注)今記事は【ガベージニュース】に掲載した記事に一部加筆・変更をしたものです。

「グラフ化してみる」「さぐる」ジャーナブロガー 検証・解説者

ニュースサイト「ガベージニュース」管理人。3級ファイナンシャル・プランニング技能士(国家資格)。経済・社会情勢分野を中心に、官公庁発表情報をはじめ多彩な情報を多視点から俯瞰、グラフ化、さらには複数要件を組み合わせ・照らし合わせ、社会の鼓動を聴ける解説を行っています。過去の経歴を元に、軍事や歴史、携帯電話を中心としたデジタル系にも領域を広げることもあります。

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