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政府支出総額比率で主要国軍事費の動向をながめ見る

不破雷蔵「グラフ化してみる」「さぐる」ジャーナブロガー 検証・解説者
↑ 大型空母の維持には莫大な費用が。所有できるのはごく一部の国。(ペイレスイメージズ/アフロ)

・ストックホルム国際平和研究所の調査結果によれば全世界の軍事費総額は1兆7386億米ドル。最上位はアメリカ合衆国、次いで中国(2017年)。

・軍事費の上位国における軍事費の対政府支出総額比では、サウジアラビアの30.4%が断トツ。韓国の12.1%、ロシアの12.0%が続く。

・軍事費の上位国における軍事費の対政府支出総額比は、大よその国では減少傾向にある。

国際的な軍事研究機関のストックホルム国際平和研究所(SIPRI)の公開資料を基に、主要国の軍事費を政府支出の総額比率の視点から確認する。各国の軍事費の実情を推し量ることができよう。

そのSIPRIの発表によると直近となる2017年における各国軍事費(米ドル換算)で、トップはアメリカ合衆国、次いで中国、そしてサウジアラビアの順となっている(グラフの注意書きにある通り、上位国では中国とサウジアラビアの額はSIPRIによる推定値)。

↑ 主要国軍事費(上位15位、米ドル換算、億ドル、*は推定値、SIPRI発表値)(2017年)
↑ 主要国軍事費(上位15位、米ドル換算、億ドル、*は推定値、SIPRI発表値)(2017年)

これは単純に米ドル換算して比較したもの。国によって内情が異なることから、単純な額面比較だけでは問題では無いかとの指摘もある。そこでそれぞれの国の政府支出総額、つまり国家予算に占める軍事費の比率を算出する。

次に示すのは2017年時点における米ドル換算による軍事費上位10か国の、それぞれの国の政府支出総額に占める軍事費の割合。例えばアメリカ合衆国は8.8%とあるので、同国の国家予算全体の1割近くは軍事費にあてられていることになる。また過去値を用い、計上可能な範囲での過去の比率推移を折れ線グラフ化する。

↑ 軍事費の対政府支出総額比(2017年時点の米ドル換算による軍事費上位10か国)(2017年)
↑ 軍事費の対政府支出総額比(2017年時点の米ドル換算による軍事費上位10か国)(2017年)
↑ 軍事費の対政府支出総額比(2017年時点の米ドル換算による軍事費上位5か国)
↑ 軍事費の対政府支出総額比(2017年時点の米ドル換算による軍事費上位5か国)
↑ 軍事費の対政府支出総額比(2017年時点の米ドル換算による軍事費上位6~10位の国)
↑ 軍事費の対政府支出総額比(2017年時点の米ドル換算による軍事費上位6~10位の国)

それぞれの国の各年における経済状況や周辺環境にも大きく影響するため、一概にどの程度が望ましい値なのかに関する基準値は無い。経済力に見合わない軍事費負担が国そのものの経済を不安定化させることも事実。

一方、同じ軍事費でも政府支出全体が増加すれば比率は下がる。政府支出総額に対する比率の低下は、単に軍縮・予算不足による削減以外に、経済力の伸張を意味する場合もある。

中東諸国は概して比率が高い傾向がある。そのため額面そのものも大きくトップテン入りしたサウジアラビアのために、グラフ全体の縦軸の最高値を引き上げる必要が生じる状況が生じている。それでもかつて示していたピーク時の約40%と比べ、現在では30.4%にまで落ち着いている。

その他の国ではロシアはいくぶん増加傾向にあるが(直近年では前年比で減少)、大よその国では減少傾向にある。中国も総額比率では減少しているが、これは他国とは少々事情が異なり、経済成長による総支出額に軍事費の増加が追い付いていないため。また今件で計上されている軍事費に関して中国の値は内情が推し量りにくいため、推測値となっているのも要因だろう。

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(注)グラフ中の「ppt」とは%ポイントを意味します。

(注)今記事は【ガベージニュース】に掲載した記事に一部加筆・変更を加えたものです。

「グラフ化してみる」「さぐる」ジャーナブロガー 検証・解説者

ニュースサイト「ガベージニュース」管理人。3級ファイナンシャル・プランニング技能士(国家資格)。経済・社会情勢分野を中心に、官公庁発表情報をはじめ多彩な情報を多視点から俯瞰、グラフ化、さらには複数要件を組み合わせ・照らし合わせ、社会の鼓動を聴ける解説を行っています。過去の経歴を元に、軍事や歴史、携帯電話を中心としたデジタル系にも領域を広げることもあります。

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