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カラーテレビの普及率の現状を詳しくさぐる

不破雷蔵「グラフ化してみる」「さぐる」ジャーナブロガー 検証・解説者
↑ カラーテレビが欠かせない世帯も今なお多そうだが。(ペイレスイメージズ/アフロ)

・世帯ベースでのカラーテレビの普及率は単身世帯で91.9%、二人以上世帯で96.6%(2018年)。

・単身世帯は年齢階層別では30代までが8割強、40代以降は9割超え。二人以上世帯ではすべての年齢階層で9割超え。

・世帯主の年収別ではカラーテレビの普及率に違いはほとんど見られない。

インターネットの普及に伴い大きなゆらぎを見せながらも、今なおメディアとしては絶大な影響力を持つテレビ業界。そのテレビ本体の浸透の実情を、内閣府の消費動向調査(※)の結果から複数視点で確認する。

まず最初に示すのは、直近2018年の全般的なカラーテレビの世帯普及率。単身世帯は91.9%、二人以上世帯は96.6%。やや単身世帯が低めなものの、実質的には前者が約9割、後者はほぼ10割と表現できる。

↑ カラーテレビ世帯主男女別普及率(2018年3月末)
↑ カラーテレビ世帯主男女別普及率(2018年3月末)

続いて世帯主の年齢階層別普及率。男女別とクロスしたデータと、男女合わせた値ではあるが、より細かい年齢階層区分のデータが取得できるので、双方をそれぞれグラフ化する。

↑ カラーテレビ世帯主男女別・年齢階層別普及率(2018年3月末)
↑ カラーテレビ世帯主男女別・年齢階層別普及率(2018年3月末)
↑ カラーテレビ世帯主年齢階層別普及率(2018年3月末)
↑ カラーテレビ世帯主年齢階層別普及率(2018年3月末)

各年齢階層とも単身世帯より二人以上世帯の方が普及率は高い。また単身世帯では若年層、特に男性の普及率が低い傾向にある。今流行の「若年層のテレビ離れ」との言葉が当てはまりそうな雰囲気もあるが、それでも8割超の普及率では「テレビ離れ」の言い回しは少々無理がある。もっとも今件はあくまでも普及率=テレビ放送受信機保有率の話で、テレビ番組の視聴状況はまた別の話なのだが。

続いて世帯年収別。実のところ世帯年収別では大きな変化は見られない。なおグラフの表記上、一部の属性では「以上」を省略している。例えば「300~400万円未満」は「300万円以上400万円未満」を意味する。

↑ カラーテレビ世帯年収別普及率(2018年3月末)
↑ カラーテレビ世帯年収別普及率(2018年3月末)

どの属性も100%に近い状態に違いは無い。テレビ視聴は基本的に無料(ただし初期投資以外に電気料金などは必要。また、有料放送も無料では視聴できない)。そのため年収による普及率の差はほとんど見られない。多少の違いはあれど法則性は無く、また多い少ないも誤差レベル。「テレビは貧富の隔てなく楽しめる娯楽」「もっとも安価な大衆娯楽」との言葉に間違いは無い。

最後に時系列的な推移。消費動向調査はかつて二人以上世帯のみを対象としており、単身世帯は別途「単身世帯消費動向調査」で調査が行われていた。そこで単身世帯では一部に「単身世帯消費動向調査」の結果を用いている(現在は消費動向調査の時系列データとして収録されている)。

↑ カラーテレビ世帯種類別普及率(単身世帯の一部は「単身世帯消費動向調査」から)
↑ カラーテレビ世帯種類別普及率(単身世帯の一部は「単身世帯消費動向調査」から)

単身世帯の方が普及率は低い。これは昔も今も変わらず。そして二人以上世帯の普及率が高いまま推移する一方、単身世帯では多少の上下がありながらも、少しずつ値が減っているように見える。

またブラウン管テレビの除外(※※)に伴う普及率の急落だが、単身世帯の方が下落率が大きい。単身世帯ではブラウン管テレビから薄型テレビへの買い換え率が低いと考えられる。外部周辺機器を使うなどでブラウン管テレビでも地デジ放送を視聴することは不可能では無いが、画質などの点であまり合理的では無い。一人暮らしだから我慢できる、同居人の反対も無いといったところだろうか。

ブラウン管テレビ除外で大きく下落した後は、少しずつだが確実に元の値に戻りつつあるのも事実。もっとも単身世帯の値の戻り具合はゆるやかで、ここ数年では横ばいから漸減に転じていることから、元の96%強にまで復帰することは難しそうだ。また二人以上世帯でも2016年の値を天井としたような動きを示しているのが気になるところではある。

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※内閣府の消費動向調査

今後の暮らし向きの見通しなどについての消費者の意識や各種サービスなどへの支出予定、主要耐久消費財などの保有状況を把握することにより、景気動向判断の基礎資料を得ることを目的としている調査。調査世帯は、二人以上の世帯、単身世帯毎に三段抽出(市町村・調査単位区・世帯)により選ばれた8400世帯。調査時期は毎月1回で、調査時点は毎月15日。毎月10日前後に調査対象世帯に調査票が届くよう郵送し、毎月20日頃までに届いた調査票を集計する。

毎月調査を実施しているが年1回、3月分において、他の月よりは細部にわたる内容を調査している。その中の項目の一つ「主要耐久消費財の普及・保有状況」を今件精査では用いている。これは「回答者の世帯において対象品目を回答時点(直近分の場合は2018年3月末時点)で持っているか否か」「持っている場合は保有数量はどれほどか」を尋ねた結果。具体的な利用状況は尋ねていない。

※※ブラウン管テレビの除外

消費動向調査では2013年までは薄型テレビとブラウン管テレビの双方をカラーテレビとして対象としていたものの、2014年からは薄型テレビのみを対象としており、ブラウン管テレビは除外されている。

(注)本文中のグラフや図表は特記事項の無い限り、記述されている資料からの引用、または資料を基に筆者が作成したものです。

(注)本文中の写真は特記事項の無い限り、本文で記述されている資料を基に筆者が作成の上で撮影したもの、あるいは筆者が取材で撮影したものです。

(注)記事題名、本文、グラフ中などで使われている数字は、その場において最適と思われる表示となるよう、小数点以下任意の桁を四捨五入した上で表記している場合があります。そのため、表示上の数字の合計値が完全には一致しないことがあります。

(注)グラフの体裁を整える、数字の動きを見やすくするためにグラフの軸の端の値をゼロで無いプラスの値にした場合、注意をうながすためにその値を丸などで囲む場合があります。

(注)「ppt」とは%ポイントを意味します。

(注)今記事は【ガベージニュース】に掲載した記事に一部加筆・変更を加えたものです。

「グラフ化してみる」「さぐる」ジャーナブロガー 検証・解説者

ニュースサイト「ガベージニュース」管理人。3級ファイナンシャル・プランニング技能士(国家資格)。経済・社会情勢分野を中心に、官公庁発表情報をはじめ多彩な情報を多視点から俯瞰、グラフ化、さらには複数要件を組み合わせ・照らし合わせ、社会の鼓動を聴ける解説を行っています。過去の経歴を元に、軍事や歴史、携帯電話を中心としたデジタル系にも領域を広げることもあります。

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