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4マスではテレビがプラス、インターネット広告は堅調(経済産業省広告売上動向2018年2月分)

不破雷蔵「グラフ化してみる」「さぐる」ジャーナブロガー 検証・解説者
↑ 日常生活に浸透する広告の動向。経済産業省による直近発表分では?(写真:アフロ)

・経済産業省の特定サービス産業動態統計調査の結果によれば、2018年2月の4マスの広告における売上高はテレビのみ前年同月比でプラス。

・インターネット広告はプラスを継続。

・インターネット広告は新聞の約2.41倍の額。

4マスはテレビのみ前年同月比でプラス

経済産業省が先日発表した「特定サービス産業動態統計調査」の結果によれば、2018年2月分の日本全体の広告業全体における売上高は前年同月比でマイナス0.7%となり、減少傾向にあることが分かった。主要業務種類5部門(4マスとも呼ばれる4大従来型メディアである新聞・雑誌・ラジオ・テレビと、新形態の広告媒体となるインターネット広告)では新聞、雑誌、ラジオはマイナス、テレビとインターネット広告はプラスを示した。下げた部門では新聞が一番下げ幅は大きく、マイナス10.4%を計上している。

↑ 4大従来型メディアとインターネット広告の広告費前年同月比(2018年1月~2018年2月)
↑ 4大従来型メディアとインターネット広告の広告費前年同月比(2018年1月~2018年2月)

今件グラフの各値は前年同月比を示したもので金額そのものでは無い。また前回月分からの動きが確認しやすいよう、2018年1月分データも併せてグラフに反映している。

ここしばらくは軟調が続いている4マス(新聞・雑誌・テレビ・ラジオ)だが、今回月では新聞やラジオの下げ幅が縮小したものの、テレビを除いてすべてマイナス。テレビはかろうじてプラスを計上している。

2015年以降4マスは大よそ軟調が続いている。ラテ(ラジオとテレビ)は2016年に入ってから復調の動きも見られるようになったが、紙媒体の新聞と雑誌は下げ基調が止まらず、今回月の2018年2月分に至っても、2015年以降でプラスを計上した月は、2015年4月に雑誌が示したプラス2.5%と、2017年10月に新聞が計上したプラス9.5%の2回のみとなっている。2ケタ台の下げ率を見せたのは新聞が6回、雑誌は10回。1年分を超えてもなお前年同月比でマイナスが続いているのは、単なる反動を超えた、中期的な下げの中にあることを意味している。

↑ 4大従来型メディアとインターネット広告の広告費前年同月比(2014年1月以降)
↑ 4大従来型メディアとインターネット広告の広告費前年同月比(2014年1月以降)

一方、インターネット広告は前回月に続きプラスを示す形となった。

なお主要業務種類以外の屋外広告など(一般広告)の動向は次の通り。

↑ 一般広告の広告費・前年同月比(2018年2月)
↑ 一般広告の広告費・前年同月比(2018年2月)

海外広告はインターネット広告や4マスも含め広告種類中最大の上げ幅を示しているが、額面は小さいため、全体への影響はほとんど無い。他方、額面としては大きめな「その他」が下げたのが、売上高合計がマイナスとなった要因の一つだろう。

新聞とインターネット広告の金額差は約2.41倍

業務種類別の具体的売上高は次の通り(億円単位における小数点以下は四捨五入しての表記となる)。

↑ 月次広告費(2018年2月、億円)
↑ 月次広告費(2018年2月、億円)

ここ数年で新聞とインターネット広告の金額的な立ち位置は逆転してしまっている。現時点では2014年1月を最後に、毎月の新聞の広告費の金額はインターネット広告の金額を超えておらず、金額面で主要業務種類5部門の上位順位はテレビ・インターネット広告・新聞の順となっている。

今回月では両者の金額差は約347億円。約2.41倍の差がついている。もちろんインターネット広告の方が上。「従来型メディアの紙媒体全体の広告費」は約305億円で、これはインターネット広告費よりも下。つまり今回月も前回月に続き「インターネット広告の売上高が、大手4マスのうち紙媒体全体の広告費を上回った」ことになる。

次のグラフは主要業務種類5部門、そして広告費総計(主要業務種類5部門以外の広告も含むことに注意)について、公開されているデータを基にした中期的推移を示したもの。今調査でインターネット広告の金額が計上されはじめたのは2007年1月以降なので、それ以降に限定した流れを反映させている。

↑ 4大従来型メディアとインターネット広告の広告費・前年同月比
↑ 4大従来型メディアとインターネット広告の広告費・前年同月比

雑誌と新聞の折れ線がグラフ中では「0%」よりも下側に位置する機会が多い。これは金額が継続的に減っていることを意味する。前年同月と比べてマイナスの値が続けば、金額は漸減していくのは道理ではある。そして効果が上がらない、広告力(世間一般に働きかけられる影響力。メディア力)の無いメディアに広告費を継続して大量投入することは、少なくとも広告の直接対価によるものとしては想定しがたいので、雑誌・新聞の広告力が漸減していると広告主からは判断されているようだ。

昨今の動向を見返すと、やや起伏は大きいもののインターネット広告が確実に上昇基調(プラス領域)にあり、他の業種とのかい離が生じていること、テレビがプラスマイナスゼロ付近でもみ合いをしているのが分かる。ラジオも似たような動きだったが、2017年初頭あたりから失速したようだ。

2015年に入ってから4マスの軟調さが際立ち、現在に至るまで紙媒体では継続しているのも気になる(それ故に2017年10月の新聞の選挙特需によるプラス化はひときわ目立つ形となっている)。2014年同月からの反動でも無く、広告市場における何らかの動きが生じている可能性は否定できまい。

他方、インターネット広告も2017年以降伸び率がやや頭打ちになっているのも目に留まる。無論プラス圏で、しかも大よそプラス10%前後を維持しているので、大きな成長を続けていることに変わりは無いのだが。

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(注)本文中のグラフや図表は特記事項の無い限り、記述されている資料からの引用、または資料を基に筆者が作成したものです。

(注)本文中の写真は特記事項の無い限り、本文で記述されている資料を基に筆者が作成の上で撮影したもの、あるいは筆者が取材で撮影したものです。

(注)記事題名、本文、グラフ中などで使われている数字は、その場において最適と思われる表示となるよう、小数点以下任意の桁を四捨五入した上で表記している場合があります。そのため、表示上の数字の合計値が完全には一致しないことがあります。

(注)グラフの体裁を整える、数字の動きを見やすくするためにグラフの軸の端の値をゼロで無いプラスの値にした場合、注意をうながすためにその値を丸などで囲む場合があります。

(注)今記事は【ガベージニュース】に掲載した記事に一部加筆・変更を加えたものです。

「グラフ化してみる」「さぐる」ジャーナブロガー 検証・解説者

ニュースサイト「ガベージニュース」管理人。3級ファイナンシャル・プランニング技能士(国家資格)。経済・社会情勢分野を中心に、官公庁発表情報をはじめ多彩な情報を多視点から俯瞰、グラフ化、さらには複数要件を組み合わせ・照らし合わせ、社会の鼓動を聴ける解説を行っています。過去の経歴を元に、軍事や歴史、携帯電話を中心としたデジタル系にも領域を広げることもあります。

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