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朝鮮半島情勢、中国、国際テロ…日本国民の防衛面からの関心事の実情をさぐる

不破雷蔵「グラフ化してみる」「さぐる」ジャーナブロガー 検証・解説者
↑ 朝鮮半島情勢は日本にとっても強い関心事。(写真:アフロ)

・防衛面でもっとも関心を持たれているのは2018年時点では「朝鮮半島情勢」。7割近くが同意を示している。

・防衛面での関心は中国や朝鮮半島に関連する事柄で強い傾向がある。

・前回調査の2015年からの関心度合いの変化では、「中国の軍事力の近代化や海洋における活動」が減少。ただし中国が深いかかわりあいを持つ「東南アジア情勢」などでは大きな増加。

周辺諸国の軍拡と軍事的圧力の増大、国境を超えた反社会的勢力の策謀、同盟国アメリカ合衆国の日本の周辺諸国とのやりとり、そしてインターネットを介した攻撃…日本の平和と安全を脅かしそうな要素は多様な機会で見聞きすることとなり、改めて平和と安全の大切さを思い知らされる。当然、伝えられる、実体化する事象が多いほど懸念も大きなものとなり、関心も寄せられることになる。

今回は内閣府が2018年3月に発表した自衛隊・防衛問題に関する定期世論調査(※)の結果報告書から、世間一般の人が日本の防衛の面で、どのような事柄に関心を持っているかを確認し、日本を取り巻く諸問題への認識を見ていくことにする。

防衛問題について世間一般の人が気にかけるであろう項目を選択肢として複数挙げ、そのうち回答者が実際に関心を抱いている対象について、複数回答で答えてもらった結果が次のグラフ。もっとも多くの人が「関心あり」と答えた項目は「朝鮮半島情勢」だった。7割近い人が関心ありと回答している。昨今の弾道ミサイルの相次ぐ実験や核開発問題、日々行われる恫喝が伝えられる昨今では、多くの人が関心を寄せるのも当然ではある。

↑ 防衛問題で関心を持っていること(複数回答)
↑ 防衛問題で関心を持っていること(複数回答)

次いで多数の人の関心事として選ばれたのは「中国の軍事力の近代化や海洋における活動」で48.6%。こちらも昨今の挙動が日々伝えられることで、大きな関心を集めている。

ISILなどの国際テロ組織の活動を指す「国際テロ組織の活動」、さらに北朝鮮や中国の挙動とも深いかかわりあいの有る「日本の周辺地域における米国の軍事態勢」「米国と中国との関係」が続く。また主に中国の挙動を指す「東南アジア情勢」(質問票原文では「南シナ海の領有権問題などの東南アジア情勢」と具体的例を挙げている)などが上位についている。大よそ日本の近隣諸国の中でも北朝鮮と中国が関わっている項目で、日本の平和や安全の観点では多くの人がこれらの国の動向に注意を払い、懸念を持っていることが分かる。

また情勢の変化に鑑み、2018年分からは「自衛待機による緊急発進(スクランブル)回数の増加」が項目に加わっているが、回答率は16.2%。

「サイバー攻撃を巡る動向」「中東情勢」「国際平和協力活動などの海外における自衛隊の活動」「宇宙空間をめぐる動向」など、日本の平和と安全においては周辺地域だけで無く、世界全体で包括的な視点で考える必要性を再認識させられる。しかし日本の周辺地域と直接関わり合いがある内容と比べると関心の度合いは低い。身近なものがまず目に付き気になるのは世の常であり、それは平和と安全においても変わりは無い。

前回調査の2015年からの変移を見ると、グラフ上で赤矢印を配した項目で大きな増加が確認できる。特に「朝鮮半島情勢」は順位が入れ替わるほどの増加ぶりで、多くの人達が強い関心を寄せていることがうかがえる。関連性の深い「大量破壊兵器やミサイルなどに関する軍備管理・軍縮分野」でも大きな伸びが生じている。また、中国そのものの動向を指す「中国の軍事力の近代化や海洋における活動」は値を大きく減らしているものの、具体的行動を意味する「東南アジア情勢」は大幅に増加しており、より具体的な案件への注目にシフトしているようすがうかがえる。

より緊迫感、必要性の高い事象に対し国民一般からの関心が強まるのは当然の話。ただしその動きが過度に至ると、情報の送り手側に扇動されるリスクも上乗せされる。踊っているつもりが踊らされているだけだった、という類のものである。受け取れる情報をうのみにするのでは無く、判断材料として取り込み、自分で考える能力を身に付けることをお勧めしたい。

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※自衛隊・防衛問題に関する定期世論調査

2018年1月11日から21日にかけて、層化二段無作為抽出法によって選ばれた18歳以上の日本国内に在住する日本国籍を持つ人に対し、調査員による個別面接聴取法で行われたもので、標本数は3000人、有効回答数は1671人。有効回答者の男女構成比は781対890。年齢階層別構成比は18~29歳が133人、30代が175人、40代が271人、50代が265人、60代が361人、70歳以上が466人。

過去の調査もほぼ同様の条件で行われているが、今回調査の2018年は年齢の下限が18歳、前回調査の2015年までは20歳となっている。

(注)本文中のグラフや図表は特記事項の無い限り、記述されている資料からの引用、または資料を基に筆者が作成したものです。

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(注)今記事は【ガベージニュース】に掲載した記事に一部加筆・変更を加えたものです。

「グラフ化してみる」「さぐる」ジャーナブロガー 検証・解説者

ニュースサイト「ガベージニュース」管理人。3級ファイナンシャル・プランニング技能士(国家資格)。経済・社会情勢分野を中心に、官公庁発表情報をはじめ多彩な情報を多視点から俯瞰、グラフ化、さらには複数要件を組み合わせ・照らし合わせ、社会の鼓動を聴ける解説を行っています。過去の経歴を元に、軍事や歴史、携帯電話を中心としたデジタル系にも領域を広げることもあります。

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